影勇者は依頼内容を聞く
「くぅ、全身が痛い………」
「あまりにも酷い仕打ちです………」
気絶した二人をそれぞれの部屋のベッドまで運んで寝かせた後、仕方ないので執事服を着て使用人として働いている。エリナとレイティアはメイド服だ。結構似合っているとは思う。多分。で、今は二人の夕食の時間だ。使用人である俺達は後ろで控えて二人の愚痴を聞き流している。
「ノイル坊っちゃん、ノーラお嬢様。明日からは筆記の方も教えますので、お覚悟をお願いします」
無表情に言っておいた。すると二人の表情が余計に曇った。
「坊っちゃん、お嬢様、旦那様がお帰りになられました。ご一緒にお食べになりますか?」
急に音もなくアルトさんが出現した。さっきまでどこかへ行っていたのに。
「別にいいよ」
「お兄様がそう言うなら」
「作用でございますか。良かったですね旦那様」
そう言って扉からノイル坊っちゃんとノーラお嬢様の父親。俺の依頼人が現れた。
「余計なことを言うなアルト。って影勇者!? なぜお前が……いいや、そんなことどうでもいい。ここで会ったが百年目だ。今日こそお前に傷の1つでもつけてやるわ!」
そして、俺の存在に気付くなり腰の剣を抜き斬りかかってきた。その男の名はディアベル・カートランド。王国で元帥という役職、軍のリーダーをしている。俺と一度手合わせして負けて以来会えばこうなる。
「ノイル・カートランド………元帥のお子さんでしたか。お久し振りですね。後、勝手に影勇者影勇者言わないでください。自分の素性を明かすのは三流のすることですよ。勝手に素性をばらさないでください」
反撃せず、全ての剣撃をかわしながら言う。
「ぬぬ、その使用人風な話し方は気に入らん。蒼鬼」
使用人ですから。という前に斬りかかってきた。魔剣・蒼鬼は氷の魔剣だ。普通の剣で打ち合ったら剣が凍らされる。
「坊っちゃんといい、元帥といい、戦うのが好きですね。ノイル坊っちゃんとノーラお嬢様が御食事中なので、手早く終わらせましょう」
ギロリと元帥を睨み、少し怯んだところで魔力強化を多少使い、一瞬で元帥の頭上へ跳ぶ。それに気付いたのか元帥が剣を振る。
「甘いですよ」
上空で体を捻って避け、元帥の見学を斬る。まだ頭上にいる俺は足を思いきり首筋へ叩き込む。
「ぐふぅ」
元帥が昏倒してしまった。その様子を見ていたノイル坊っちゃんとノーラお嬢様がパチパチと手を叩いている。
「エリナ、俺は元帥を部屋に入れてくる。いない間に粗相をするなよ。無論レイティアもだ。いや一番レイティアが心配だ」
元帥を片手で持ち上げ、連れていく。拗ねた顔でレイティアが見てきたがもちろん安定の無視。
「さて、気絶した振りをやめて依頼の説明をしてくれるのですよね?」
廊下に出て一度曲がったところで元帥を放り投げた。
「おっと」
そう言って着地する。そして痛そうに首を押さえて口を開く。
「痛い」
「だろうな。咄嗟に首筋だけに魔力強化を施したみたいだが普通だと首が飛んでいく威力で蹴ったし」
「間に合わなかったらどうするのだ」
「葬式をする」
「おい!」
「冗談はさておいて、なぜ元帥の子供の護衛なんだ? 二人と戦って分かったがBランクの魔導師に匹敵する実力だぞ。ユニゾンも使えているし、後は固有魔法が使えるなら言うことなしだ」
「《ヴァジュラ》、《シルヴィード》」
「なんだ? それがどうした」
「それがノイル、ノーラの固有魔法だ」
「!?
なるほど、初めての発動はいつだ?」
今、とてもひきつった顔で言っているだろう。それほどの固有魔法だ。
「一ヶ月前だ」
「まさか二人が神話級の………しかもかなり有名な神話固有魔法………それは、護衛が必要だな。少なくともAランク以上の実力になるまで。元帥、それをBランクの魔導師に頼むのは間違っている。SランクかSSランクに依頼した方がいい」
「実力ではそれらを凌ぐ影勇者が釣れたんだ。問題ないだろ?」
こいつ………初めから俺を釣る気で……エリナを食らいつかせるための餌も付けて依頼したのか………やっぱりこいつは有能すぎる。
「さすが………だからあんたが苦手だよ」
「そういえば、固有魔法で聞きたいのだが、影勇者の固有魔法は何だ?」
「!?」
こいつ、俺の隠している。トップシークレットを教えろだと? そんなの教えるわけがない。
「それは僕も聞きたいな。1週間の間僕の師匠のようなものなんだから知っておきたい」
「あの血の檻のやつではないのですかお兄様」
「あれはレイティアとかいう精霊の固有魔法だ。精霊と契約するとその精霊の固有魔法を扱えると本で読んだ」
二人が現れた。しかも興味津々って感じだ。
「それはエリナも気になってた。結構仕事してきたのにいまだに固有魔法を使ってないんだもん」
ち、エリナも来やがった。仕方ない。魔装の能力を見せて治癒とでも言っておくか。
「いいだろう。見せてやる」
そういった俺は剣を抜き、自分の腕を深く切る。その様子に一同は驚いている。
(《永遠に訪れぬ終わり)
心の中で唱えた瞬間。切り傷が治っていく。否、戻っていく。そして傷は完全に元に戻る。
「俺の固有魔法は治癒。そう受け取ってくれ」
目の前で傷を癒したのだ。誰も疑いもせず納得した。特にエリナは俺が依頼で一度も傷を負っていないことを知っている。だからより納得している。
「そうだったのか。納得だね。だからあの時も固有魔法を使わなかったのか」
ノイル坊っちゃんが納得のいった表情で俺を見るその様子を見たノーラお嬢様もだ。
「それでは明日から二人を頼んだぞ。あと、ノーラに手を出したら殺す」
本気の殺気を出しながら俺に言う。その殺気は俺と同等。そんな殺気を受けた俺は冷や汗を流した。それと同時に手を出すわけないだろと言ったら、魅力がないと言いたいのか的なことを言われるのだろうなと思った。
「ノイル坊っちゃん、ノーラお嬢様。行ってらっしゃいませ。お帰りになられたらまた修練でございます」
執事服を着た俺が頭を下げ、どっかの学校の制服を着た二人に言う。今の俺は使用人だ。アルトさんに言われた通り門まで二人を送った。そこから先は車で行くことになる。で、俺たち護衛組はその車を追いかけなくてはならない。ばれずにだ。
「行くぞ二人とも」
俺の声に二人は頷き、尾行を開始した。
車といっても大したものではない。ただ魔力を流して走るものだ。しかもそこまで強度はなさそうだから限界は時速100kmぐらいだと思う。
「おいエリナ、気配消せ。ノイル坊っちゃんとノーラお嬢様は気付くぞ。ストレスを与えるような行為は許されない。特にノーラお嬢様の扱いには気を付けろ。元帥のやつ、溺愛してやがる。ノイル坊っちゃんのことはあまり気にしていないみたいだけどな」
「ノイル坊っちゃん………哀れな人……」
「言ってやるな。坊っちゃんは坊っちゃんで人生を楽しんでんだから」
「でも分かった。気配を消せばいいんだよね」
そう言ってエリナが気配を消す。流石に上手い。
「にしても二人の固有魔法なんて誰にも話してないし、見せてもいないなら襲われる心配ないんだがな」
「もしもの時のためでしょ」
「だろうな。ま、1週間だけだし何もないことを祈るか」
「何もなければいいね」
「ところで、レイティアはどうした?」
「うーん……学校っていうのに着いたら召喚してって言ってたよ」
頭が痛くなる。なんでそんな軽々しく召喚させるんだあいつは。自分は精霊ですとばらして回りたいのか………。
「ま、いいか。どうでもいいことだ。レイティアがいてもいなくても何も起きないだろうし、第一うるさそうだ。二人もうるさいのがいたらだるいしな」
「わ、今遠回しに私のことだるいって言ったね! 本当にショック! 初めて会ったときのシュウヤは優しかったのに………」
「もう分かった。ほら撫でてやるから機嫌直せ」
「残念だけど私はそんな軽い女じゃ………はふぅ」
無視して撫でると効果は抜群だったようだ。気持ち良さそうに撫でられている。にしても俺にこんな才能があったとは…………驚きだ。
「あ………しまった。見失った………」
「大丈夫だよ! 私はちゃんと見ていたから。ほらあっち」
と、指を指したのは明らかに金持ちが通うような学校らしき建物だ。
「それ言われなくても分かってたぞ。明らかに学校だろうしな。さて遠くから監視しておくか」
車から降り、門に入っていく二人を見ながら言う。今気付いたことだが、二人ともかなり人気あるみたいだ。周りから羨望の眼差しで見られたりキャーキャー言われているように見える。まるで颯天の登校時みたいだ。いや、颯天はもっとすごかったな………。今も昔もどうでもいいが。
「シュウヤ、校内で気配消して監視しようよ。遠くて見えにくい」
「二人が中に入ったらそうするつもりだ」
話してる間に建物の中に入った。それを見た俺とエリナは行動を開始する。
色々あって更新がかなり遅れましたすいません。
久し振りに後書き書いた気がするw
まあ書くことないんですよ。強いて書くなら更新は不定期です。不定期になっちゃいました。当初の設定から見直している間に色々変えてしまったせいで、かなり狂ったんです。当初は今書いているものなんてない予定でした。いきなり武技大会にしようと思いましたがギルドの仕事してないことに気付き、急遽この章『神話魔術の覚醒(仮)』を無理矢理投入しました。なのでプロットが無意味になり、書き直し。で作れたので更新しました。
以上が言い訳で、本当の理由は別のものを書いていました。すいません




