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影勇者の魔王殺し  作者: 勇者
長いプロローグ
16/25

影勇者は連行される

 カインが剣を向けている。もしかしたらバレたかもしれない。何にせよとてもマズイ……


「なぜ王城に?」


 できるだけ焦っていないように見せて返す。内心ではかなり焦っている。確かに他国の魔法を使った。それだけでバレたのだったらこの国、かなりガードが高い。


「そう警戒するな。悪いようにはしない」


 これは……バレたのか、バレていないのかどっちだ? どちらにせよ連行されるのか。一応グレイにアイコンタクトを……


「それはワシも行っていいのか?」


「どうぞ。ご老体もかなりの実力者。我は魔法には疎いがあの魔法はかなり高位であるのは分かる」


「なら今すぐ行こうか」


 グレイの決断は吉と出るか凶と出るか、どちらにせよ俺はグレイに従う。


「カイン、剣を下ろせ。付いていく」


「ではこちらだ」


 剣を下ろして歩いていく。それに付いていくグレイに俺は付いていく。


 俺もグレイもあんなことが起きるとは全く思わなかった。まさかこの国がこんなに弱っていたなんて思いもしなかった。





…………………………………………





「探せ! 見つけ出して殺せ! 王殺しの大罪人だ!」


 複数人の足音を聞きながら、警戒を続ける。いつ襲われるか分からないからだ。


「行ったようですね。私の探知に引っ掛かっていませんよ。行きましょう秋夜さん!」


 見た目通り中学生の少女。グロウヴィル帝国の勇者である荻村心が俺に言う。さっきまで余裕がなかったから容姿を見ていなかったが、よく見ると可愛いかもしれない。というか俺には判断できない。セミロングのブロンド。全体的に小さい体。やはり童顔。深海色の眼。髪は染めているようではないのできっとハーフだ。


「そうだな。心はさっきまでと同じで俺の後に付いて来い」


「で、俺はどうすればいいんだ?」


 アッシュグレイの髪の結構イケメンな青年ゾーラが言ってくる。


「間抜けな機皇帝(笑)は適当に付いてこい」


「(笑)が気になるがいいだろう。お前に助けられたのは確かだ。にしても自分が王様をしてる国の兵士に王殺しの罪をつけられるとはな。笑えるぞ。てかまだ殺してもないのにな」


 さて、なぜこのようなことになったか、それはほんの少し前だ。




……………………………………


「王様。失礼します」


 気がつくと大きな扉の前にいた。知覚魔法というわけでもない。ただ単に無心で歩いているとこうなった。

 大きな扉が開くと一人の何かがいた。


「ご苦労。戻ってよい」


 レイティアとの契約で強化された第六感がこいつは危険だといっている。


「わかりました」


 カインが俺とグレイを置いて出ていく。これを機に剣を抜こうとしたが抜けない。抜こうとしてもそのような行為に及べない。


「どうもこんにちは。まず始めに、この部屋での人間は魔法は愚か、武器を抜くことはできないルールを作っている。さて君たちの名前は?」


「フォール・ナイト」


「ロイド・カルテーン」


 俺もグレイも偽名を名乗る。


「偽名だねそれ。本名は? 僕の能力はこの用紙に名前を書いた人間を操り人形にする能力なんだ。もうそこの若い人間は気付いてるみたいだけど、僕は魔族だ。しかも魔王様の三柱の一人」


 色々とカミングアウトした目の前の魔族から殺気が放たれる。もう我慢ができない。


「………え…………………」


 がまんできなくなった俺の行動は早かった。武器を抜くことができない俺は、素手で目の前の魔王の一柱の腹部を貫いた。


「魔王の三柱の一人なのなら殺すしかないだろ」


 手を引き抜く。それと同時に大量の血が吹き出る。その血にかからないようにすぐに後ろに下がる。


「嘘だろ……この僕が、人間ごときに……お前は人間じゃないな」


「勇者のおまけの影勇者だ。死ね。雑魚」


「油断していたとはいえ………人間ごときに傷をつけられるとは……」


 苦しそうな顔で俺が空けた風穴を押さえている。まだ死なない。死にそうにない。どうやら生命力が高いようだ。


「しぶといな……グレイ、とりあえずこの部屋から……」


「シューヤ避けよ!」


 言葉の途中にグレイが叫んだ。その叫びを聞いた直後に俺の危機管理能力も働き、反射で横に飛び退いた。


魔術兵装(アーク・ドライブ)


 敵が唱えた。それと同時に俺のいた場所は床が潰れた。


「なんだこれは……」


「シューヤ、これはマズイ。逃げるのだ」


 逃げるしかないのは分かっている。だが逃げて対策を練って来てもあの嘘のような必殺技の正体が分からないといけない。逃げるのはあの必殺技を見極めてからだ。


「グレイ、先に行ってくれ。とりあえずこいつを食い止める。護衛対象のグレイは守らないとな」


「バカなことを………」


「いいやバカなことではないね。グレイは逃げれる。だが俺は逃がしてくれないだろう。だから行け」


「その通りだね。僕に傷を負わしたからには殺してやる。老人は逃がしてやるよ」


「だそうだ。行け」


「シューヤ、死ぬんじゃないぞ」


「おいおい、誰に言ってんだ。俺は一応勇者だ」


 俺の言葉を聞いてグレイは少しニヤッとし、扉から出ていった。


「やっと邪魔がいなくなった。さて、シューヤという名前だったね。君は今日死ぬけど、遺言とかは承るよ。僕は慈悲深いんだ」


「死ね」


 ダッシュで扉から出ていく。あの部屋では魔法は愚か、武器を抜くこともできないなんてルールを作られている。それは圧倒的に不利だ。

 『ルールを作る』これがやつの固有魔法。それは間違いない。だがあのよくわからない必殺技。あれは何か分からない。


「待て!」


 やつが付いてくる。どこか広い場所で戦いたい。


「《フレイム・ランス》」


 ついてきているやつに炎の槍が飛んでいった。どうやらここでは魔法が使えるようだ。


「そこで走っているやつを捕らえよ!」


 やつが叫ぶと兵が沸いてきた。その出てくる雑魚兵を切り捨てながら駆けていく。


「契約を基に召喚する。捧げるは我が魔力。求めるは精霊の召喚。ーーーレイティアーーー」


 召喚の呪文を魔法陣を描きながら詠唱する。すると走っている俺の目の前にレイティアが現れ、ぶつかりそうだったので、レイティアを抱えて走る。


「レイティア、魔装だ」


「ちょっと待って、状況の説明が欲しいのだけど…」


「グロウヴィル帝国の王様が魔王の三柱の一人に取られた。それを知らず王城へ。魔族と対面、貫く。効かない。逃げる。今に至る」


「全く分からないわ………でも魔族が相手なら本気でいくわ」


 そういうと同時に俺の服の上から漆黒のコートが羽織られ、手に一つの銃が握られる。片手の剣を収めるとその手にも銃が握られた。


『今どこに向かってるの?』


「牢屋だ。多分本当の王がそこにいる。そいつを助け出す」


『そう、私は魔力を練り上げておくから』


「すまない助かる」


 話している間も兵は沸いてくる。両手が銃で埋まっているので蹴り飛ばしている。

 しばらくそうしているといつの間にか、魔族Aを撒くことができていた。しかも運のいいことに地下牢にこれている。


「ま、いつの間にか着いたが、もう死んでたりするかもな。一応勇者やっている俺が助けに来たのに死んでたらなあ。生きていて戦う気あるなら何か言え機皇帝ゾーラ」


 少し俺の声が響いた。それと同時に声が聞こえてくる。


「ようやく、この時が来た。ほら、オレの言った通り待つとチャンスが転がり込んできた。おいここだ。この鉄格子を破壊してくれ」


 奥から男の声が聞こえてきた。奥の方の牢を見ると人影が二つ視認できている。


「生きていたか。それはよかった」


 言葉と同時に鉄格子に銃弾を放つ。それが当り、見事なまでに破壊した。


「スゴいな。これ、ナギの超破壊魔術を防ぐほどの超強化魔金を使った鉄格子だぞ。魔力を吸収されても壊すとか……なかなかいい感じだ」


 青年が喋りながらこちらへ歩いてきた。


「5日も何も食べさせられなかったからお腹が減りました。あと、ナギさんの超破壊魔術って大規模に発生させるやつじゃないですか。あれが一点に狙えれば簡単にできますよ」


 女の子も来た。秘書にしては幼い気がする。まあどうでもいいかもしれない


「勇者とか言っていたな。お前どこの勇者だ?」


「正確には勇者のオマケをしている影勇者だ。まあ今は勇者として行動しているがな。ミームング魔術王国のだがな」


「ああ、隣国のか……まあ礼を言う。あんたはこれからどうするんだ?」


「あの魔王の三柱の一人とか言ってるゴミを駆除する。そのためにあいつの情報。特に魔術兵装(アーク・ドライブ)ってやつについてだ」


「…………いいだろう。お前は命の恩人だし教えてやる。魔術兵装(アーク・ドライブ)というのはオレやナギや科学者達……の中でもトップレベルの数人が開発した魔術と科学の合体技みたいなものだ」


 少し言いにくそうな顔をしているということは、国家機密なのだろう。隣の女の子はとても驚いた顔をしている。


「どういうものなんだそれは?」


「精霊魔装って知ってるよな。精霊が武器になるやつだ。あれが精霊ではなく自分の魂を武器にしている。そういうものだ。精霊魔装は破壊されても精霊の魔力が減るだけだが、魔術兵装は破壊されるとなぜか光に粒子になって消える。まあ契約した精霊が死んだら契約者が死ぬのと同じようなものだ」


 ちょっと待て、さらりとすごいことを言わなかったか? 破壊されると消える……精霊魔装と同じ……つまりあいつは何らかの武器を手にしたはずだ。だが変化はなかった。どういうことだ。


「少し、話が反れてるかもな。あのゴミ野郎の魔術兵装は、目が良すぎるとどんなにしても視認できない糸。まあ普通の視力でも見えないも同然だがな」


「そうか。情報の提供を感謝する。あんたらはどうするんだ?」


「私は勇者さんに付いていってサポートしようと思います! この国の勇者として救います!」


 ……………この国の勇者として? ああ、そういうことか。この子、勇者だったのか。可哀想な気もするな。まだ中学生ぐらいなのにこんなよくわからない場所に呼ばれたりして。


「ならオレもそうしよう。なんせこの国の王だしな」


「………そうか。俺は六連秋夜だ」


「やっぱり日本人でしたか! 私は荻村心です。よろしくお願いします。秋夜さん」


「オレはゾーラだ。下の名はないぞ。スラム出身だしな」


「ああ。じゃあいくぞ。邪魔だけはしないでくれよ。後、自分の身は自分で守れ」


「「了解」」


 確認をとるとすぐに牢屋から出た。そして……現在に至る………




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