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第17話「ゴミ拾い、失敗を背負う」


 セラは俯き気味だが、はっきりとした口調で話し始めた。


「最初はみんなからすごいって言われていました。魔術の属性は普通は1つか2つで、3つでもかなり珍しいので」


 地面を見ている目は、落ち着かないように揺れている。


「でも、実際に撃つといつも暴発して……味方まで危険に晒してしまって……。結局、すぐパーティから外されました。そうやって何度も、何度も⋯⋯」


 最後の方はほとんど息みたいな声になっていた。


「⋯⋯たとえ才能があるって言われても、使えないのなら⋯⋯意味がないです」


 俺は毎日拾っているゴミや焦げ跡から拾った残式を思い出す。


 使えないもの。

 壊れたもの。

 失敗して捨てられたもの。

 だが、俺の目にはしっかりと残った作用が見えている。

 

 才能があっても使えないと、パーティから捨てられたセラも同じなのかもしれない。


「セラ。今すぐ直せるとは言えない」


「……はい」


「だが、失敗した後に何が残ったかなら、俺にはそれが少し見える。次も同じように暴発したら、それをすぐ調べたらもう少し詳しく分かるかもしれない」


 セラは顔を上げた。


「失敗した後なら……分かるんですか?」


「ああ。俺はゴミ拾いだからな。成功した魔術はわからないが、失敗してそこに残ったものなら見つけて拾える」


 自分で言って変な説明だと思った。

 だが、セラは笑わなかった。

 杖を抱える指に力を込め、真剣な顔でこちらを見る。


「それなら……やってみてもいいですか? もう一度」


 そう言うと、セラの表情がほんの少しだけ変わったように見えた。

 失敗することを怖がっていた目の奥に、かすかな熱が戻っていた。


 俺は訓練場の石床の焦げ跡を見る。


 さっき回収できた火、水、風、土、雷の誤式(エラー)が、《廃品収納(ストックヤード)》の中で別々にリストに浮き出ている。


 暴発の直後にその跡を見れば、セラの魔術がどこで崩れるのかがより詳しく分かるかもしれない。


 セラは杖を胸の前で抱えたまま、申し訳なさそうに前を向く。


「いつも、あの石の的を狙っているんですが、気づいた時には膨らんでいて……抑えようとすると、もっと変な方向へ弾けてしまって……」


 その言い方で分かった。

 セラは失敗するのが怖いだけじゃない。

 失敗した後に、また誰かを巻き込むことを怖がっている。


 だから余計に撃つ前から体に力が入っているし、その緊張がより魔術を乱している部分もあるのかもしれない。


「なら、次は狙わなくていい」


「え……?」


 セラが顔を上げた。


「何も考えず、的も狙おうとせずにやってみてくれ」


「でも、それだとまた失敗して⋯⋯しまいます……」


「それでいい。その失敗は次の成功につなげるためのものだ。俺がその跡から原因を見る。それなら、意味がある失敗にならないか?」


 セラは俯いていた顔を上げて俺を見てくる。


「それに俺がその跡を見てもわからなかったら⋯⋯それはセラだけじゃない、俺の失敗でもある」


 セラはそこで言葉を失った。


 訓練場の奥では木剣と訓練用の剣がぶつかる音が続いている。

 石の的に魔術が当たり、ぱん、と乾いた音が鳴った。


 その中でセラだけが杖を抱えたままその場で動かないでいた。


「……ルーカさんまで巻き込みたくない、です。でも、諦めたく⋯⋯ないです」


「あぁ、それならいつも通り、思い切りいこう」


 俺は割れた的の破片をもう少し脇へ寄せ、セラの杖先と石の的の間に誰もいないことを確かめた。


「い、いきます⋯⋯」


 セラの唇が小さく震えた。


 昨日、俺は彼女をダンジョンから何とか救い出すことができた。

 あれが命を拾ったことになったのなら、今ここで拾うのは別のものだ。


 誰にも理解してもらえなかった失敗。

 何度も踏みつけられて、本人まで価値がないと思い始めている才能。


「大丈夫だ。自分がやりやすいように撃てばいい」


 俺が後ろからそっと言うと、セラは小さく息を吸った。


 まだ怖さは残っている。

 それでも、さっきまでの諦めた顔ではなくなっていた。


「ルーカさん……ありがとうございます。――いきます!」


 セラは杖を石の的へ向けた。


 杖先に赤が灯る。

 赤い光が丸く集まり、支給品の杖の先で震えながら膨らんでいく。


「《炎弾(フレアショット)》――!」



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