49 骨霊将、獣人の王に会う
ガオランの告白を受けて、
焚き火の周りにしばし沈黙が落ちた。
その沈黙を破ったのは、
リリの小さな声だった。
〈リリ〉
「……レイセル様。
フォレストリア王国に密接に関わるドラガン商会を相手にするのに私たち三人だけでは、やっぱり厳しいと思います」
レイセルは静かに彼女を見る。
〈リリ〉
「魔王軍は……今、人手不足です。
セレナ様も言っていました。
支援は出せない、と」
焚き火の火が、リリの瞳に揺れる。
〈リリ〉
「だから……仲間は、多い方がいい。
ガオランさんの言う“白虎の牙”
私は、必要だと思います」
ガオランは驚いたようにリリを見た。
だが、すぐに視線を落とし、
ゆっくりと口を開く。
〈ガオラン〉
「……俺たちの目的は、少しずつ違う」
焚き火がぱち、と音を立てる。
〈ガオラン〉
「俺は……ラナを助けたい。
それだけだ。
それ以外のことなんて、どうでもいい」
その声は震えていた。
〈ガオラン〉
「レイセル、お前はドラガン商会を止めたい。
あいつらのやり方を終わらせたいんだろ」
レイセルは黙って頷く。
〈ガオラン〉
「白虎の牙は……国を取り戻したい。
獣人が獣人として生きられる国を、もう一度作りたい」
ガオランは拳を握りしめた。
〈ガオラン〉
「目的は違う。
でも……全部、繋がってるんじゃねぇか」
焚き火の光が、
三人の影をゆらりと揺らす。
〈ガオラン〉
「頼むレイセル。
白虎の牙の話を、聞いてくれ」
レイセルはしばらく黙っていた。
ガオランの魂の痛み。
そして、揺るぎない願い。
それらが、
焚き火の熱よりも強く胸に伝わってくる。
レイセルは、
静かに頷いた。
〈レイセル〉
「分かった。
話を聞こう」
ガオランの肩が、
わずかに震えた。
ガオランの言葉を受け、
レイセルが静かに頷いたその時だった。
森の奥から、
風を裂くような気配が走った。
森の闇がわずかに沈み、
夜の空気がひと呼吸だけ止まる。
獣の“王”が近づくときの圧が、静かに満ちていく。
リリが肩を震わせる。
〈リリ〉
「誰か来ます!」
ガオランはすぐに立ち上がり、
焚き火の前に立つ。
〈ガオラン〉
「何でここに……!」
木々の間から、
白い影が飛び出した。
月光を浴びたその姿は、
まるで白い刃のようだった。
白虎の毛並み。
鋭い眼光。
そして、獣人とは思えないほどの速度。
影は一瞬で三人の前に降り立つ。
〈???〉
「……ガオラン。
見知らぬ者を連れて来るとは……
どういうつもりだ?」
低く、よく通る声。
だがその奥には、抑えきれない怒気が滲んでいた。
ガオランは頭を下げる。
〈ガオラン〉
「シグ様!
すみません、でも……どうしても会わせたかったんです!」
白虎の男──シグ・ラグナは、
レイセルを鋭く睨みつけた。
その眼光は、ただの警戒ではない。
群れを守る者が、外の者を測る時の重さ。
レイセルの骨の身体に、冷たい圧が静かに降りかかる。
獣人の本能と王族の威厳が混ざり合ったような重さを持っていた。




