46 骨霊将、魂に触れる
セリシアが焚き火の前で姿勢を正し、
静かに口を開いた。
〈セリシア〉
「ではレイセル様。
この家にいる魂で魂交話を試してみましょう」
レイセルは頷き、意識を澄ませる。
ずっと視界の端で、捉えていた淡い光がそっと揺れた。
廃村の家の隅。
崩れた壁の前に、ひっそりと立つ小さな光。
リリは光そのものは見えない。
だが、空気の変化に小さく身を震わせた。
〈リリ〉
「……なんか寒気が……
レイセル様、あっちに何かいます……?」
レイセルは静かに頷く。
〈レイセル〉
「ああ。
ずっと見えていた魂だ」
セリシアが前へ出る。
〈セリシア〉
「では、感じたままに意識を向けてください。
魂は、呼ばれれば応えます」
レイセルは光へ意識を伸ばした。
──その瞬間。
『……だれ……?』
かすれた声が、
耳の奥に触れた。
リリは声は聞こえない。
ただ、レイセルの反応に息を呑む。
〈レイセル〉
「聞こえる。
この家に住んでいた人の声だ」
光は揺れ、
ゆっくりと形を帯びていく。
小さな影。
子どものような輪郭。
『……さむい……
おかあさん……どこ……?』
レイセルの胸が締め付けられた。
〈レイセル〉
「……子どもだ。
この家で……死んだのか」
セリシアが静かに言う。
〈セリシア〉
「魂は、死んだ場所に縛られることがあります。
未練が強いほど、そこから動けないのです」
レイセルは魂に向けて、
そっと声をかけた。
〈レイセル〉
「……大丈夫だ。
俺はレイセル。
お前を……一人にしない」
魂がかすかに揺れた。
『……こわい……
さむい……
おかあさん……』
レイセルは拳を握る。
〈レイセル〉
「救うにはどうすればいい?」
セリシアが手をかざす。
〈セリシア〉
「レイセル様。
魂を救うには“浄化”が必要です。
まずは私がやってみせます」
淡い光がセリシアの手に集まり、
優しい波紋となって魂へ広がる。
〈セリシア〉
「……大丈夫。
もう寒くありません。
あなたは眠っていいのです」
魂の光が震え、
ゆっくりとほどけていく。
『……おかあ……さん……』
最後の声が消え、
光は静かに空へ昇っていった。
セリシアはレイセルへ向き直る。
〈セリシア〉
「今のが“魂の浄化”。
魂を苦しみから解放し、安らぎへ導く事です」
レイセルは真剣な眼差しで聞いていた。
〈レイセル〉
「俺にもできるのか?」
セリシアは静かに頷く。
〈セリシア〉
「ええ。
リッチジェネラルであるあなたなら、
必ずできます」
彼女はレイセルの手を取り、
その骨の指先に淡い光を宿らせた。
〈セリシア〉
「まずは“魂の痛み”を感じ取ること。
そして……
その痛みを、あなたの意志で包み込むのです」
レイセルは目を閉じ、
残った微かな魂の痕跡へ意識を向けた。
廃村の静けさの中で、
レイセルは“魂を救う力”に触れた。




