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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
vs.回復師ティフォン

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3

 ティフォンが額に滲んだ汗を拭う。


「温度と湿度が異常に高い……火山地帯かなにかなのかしらね」


 周囲を見渡し観察するティフォンの足下が波打ったかと思うと、地面から無数の手が飛び出してくる。


 その手はどれも白い骨であり、地面から這い出てくる者がスケルトンであることをすぐに知らしめてくれる。


 数十体ものスケルトンが一斉に這い出て、各々が持っている武器を振るう。だがそれらがティフォンに当たるわけもなく、錫杖の一振りによって数体が粉微塵に粉砕されてしまう。


 砕け舞う骨が空気中で揺れたかと思うと、壁から巨大な人型の生物が現れ大きな手で、ティフォンを蚊でも叩くかのように潰しにかかる。


「ゴーレムまで迎えてくれるなんて、とんでもないダンジョンね。これもモモちゃんの力かしら」


 ふっと笑いながら錫杖を真横にし両手を止めたティフォンが上から落ちてくる小石に気づき、上を向くと天井の一部が変形し落ちてきた巨大なゴーレムの足を受け止める。


 そのときだった、ティフォンの背中に鋭い光が走り、背中から赤い血が僅かだが散る。


 キラキラと光り輝く目を見開き驚きながら、受け止めたゴーレムを投げ。間髪入れずに襲いかかってきた2体のスケルトンの顔面を鷲掴みにしそのまま砕いてしまう。


 その瞬間、ティフォンの頬から血が垂れる。


「なに……さっきからわたくしを傷つけるこれは?」


 頬をピクッと引きつらせ自分の手についた赤い血を見ながら、スケルトンの首を握り潰し宙に浮いた頭を握ってゴーレム目がけ投げつける。


 スケルトンの頭が弾ける程の勢いでぶつけられたゴーレムは、バランスを崩し地響きを立てながら倒れてしまう。


「っ!?」


 ティフォンが身をかわし避けると、地面に火花が散り銀色のナイフが2本左右に当たるのを目で捉える。


 もちろんそれは高速で飛んできており、常人の目で捉えられるスピードではない。

 火花を散らし地面に当たったナイフは角度をつけ宙に向かって飛ぶと、なにかに引っ張られるように向きを変えティフォンの背中目がけ飛んでくる。


 ティフォンはその場で回転しながら2本のナイフを両手の指で挟んで受け止める。


「糸? 面白いことをするのね……!?」


 ティフォンがナイフの持ち手に繋がる銀色の細い糸に気づき笑みを浮かべた瞬間、糸が赤く熱を持ち持っていたナイフが爆発する。


 爆発の黒い煙から飛び出してきたティフォンを挟み込む起動で飛んできた4本のナイフに目をやったとき、倒れていたゴーレムの体が砕け吹き飛ぶ。

 土煙と石が降り注ぐことに気を取られる間もなく、巨大な石でできたドラゴンが姿を現し、そのまま突っ込んでくる。


「ストーンドラゴンとは、派手な歓迎ですこと!!」


 大きな口を開けティフォンを丸呑みしようとするストーンドラゴンの口を両手で押さえ、挟まれるのを阻止する。


「っ……先ほどから微妙に魔力が抜けてきている。たいした量ではないとはいえ、このダンジョンに長いすることは得策ではなさそうね」


 ストーンドラゴンが顎の付け根から石粒をこぼしながら、ギリギリと音をたてティフォンを噛み砕こうとするが、ティフォンは両手で受け止めるどころか押し返し始める。


 石でできた目玉をギョロギョロと動かし、焦りの色を見せるストーンドラゴンが巨大な石でできた体で無理矢理押し込み、ティフォンに対抗する。


 拮抗する両者の足下に線が入る。その意味に気づいたティフォンが足を下げ、ストーンドラゴンを投げてかわそうとするが、ナイフが足めがけ飛んでくる。それらを片足で蹴って薙ぎ払うことで逃げるタイミングを失い、先に地面が下に向かって折りたたまれ大きな穴が開く。


「っ!?」


 突如抜けた地面にストーンドラゴンごとティフォンは落ちていく。


「マグマとは、面倒なことをっ!!」


 背中に感じる熱に、自分の背後にあるものがなにかを察したティフォンの叫ぶ声と共に、地面の下から現れた煮えたぎるマグマに向かって両者は落ちていく。


 ***


 煙を上げたマグマがトプンと大きく波打ちすぐに元の姿へと戻る。


「ストーンドラゴン消失」


 モニターを真剣な表情で見つめるローリエに報告の声が飛ぶ。


「ストーンドラゴンの再充填にまでかかる時間はどれくらいですか?」


「最短で15分です。ただしレベルが先ほどよりも30ダウンします」


「足止めにでもなればいいくらいですか」


 モニターを向いたままやり取りをするローリエが、フツフツと煮えたぎるマグマを睨みながら唇を噛む。


「これで終わってくれればいいんですが、そうもいかなさそうですね……」


 モニターに表示されている『回復師の魔力感知』のトレンドグラフの波形が波打っているのを見たローリエは、目つきを鋭くしモニターを睨む。


「アンカーを対象に打ち込みます。準備をお願いします!」


 ローリエの言葉にスタッフたちが慌ただしく動き始める。


「それと、現場のお二人一気に攻めます。アンカーが打ち込めるかが勝敗を分けますので、よろしくお願いします」


 インカムに向かって話しかけたローリエがオレガノを見る。


「オレガノ様、万が一のときは出陣をお願いするかもしれません」


「余に任せるがいいのじゃ」


 腕を組みふふんと笑みを浮かべるオレガノだが、足は小刻みに震えている。


 オレガノの頭に手を置いたアンジェリカが、そのまま頭を撫でる。目を細め撫でられるオレガノを見てローリエは微笑む。


「そのときは私も行くわ。推しを守るのは義務だから」


 オレガノの頭に手を置いたままアンジェリカはモニターに目をやる。


「ここが正念場ね。くるわよ!」


 その言葉と同時にマグマが吹き上がると炎に包まれた人型の物体が飛び出してくる。滴り落ちるマグマで地面を溶かし立つ人型から光が溢れると、マグマが弾け飛びティフォンが姿を現す。


 およそマグマに落ちたとは思えない、姿をしているティフォンだが、服は所々破れ、息が荒いことからダメージがあったことが窺い知れる。


 ギリッと音がするほど歯ぎしりをしたティフォン目がけ4本のナイフが飛んでくる。


 それを手で払おうとするが、ナイフは先端を一点に重ね円錐(えんすい)の型をとり、後方に繋がる四本の糸が交差する点を中心に回転を始める。


 回転しながら真っ赤な炎に包まれたナイフは、ドリルのごとくティフォンを貫こうと高速回転し始める。


「ぐっ」


 高速回転するドリルを受け止めるためかざした両手の掌から火花が散り、ティフォンの顔を照らす。


「こそこそ隠れて攻撃とは、随分となめた真似をしてくれる‼ いい加減にしなさいよ!!」


 苛立ちを顔に出し両手でドリルを押したとき、背後から高速で飛んできた槍の先端を持ったミサイルがティフォンの背中に突き刺さる。


 突然の衝撃に目を見開き、前のめりになるティフォンの背中に刺さったミサイルは、外皮を展開すると裏面にある無数の針を背中に突き立てはがれないように吸い付く。


 外皮が展開したことで露わになった中身にある鉄の骨の四面に、青い光が背中側から外へ向かって流れるように点滅している。

 煙を吹き出し、青い点滅が赤く色を変えたとき、展開してできた穴からオーロラにも似た光を空気中に放出し始める。


 放出された光は霧散していく。


「アンカーショット打ち込み完了! 対象からの魔力の放出確認! 成功です!」


 モニターに映るティフォンの背中に刺さったミサイル、アンカーを見てスタジオにいる皆が歓声を上げる。


「ようやく一段階……ここから倒し切れるかが勝負」


 一瞬微笑んだローリエだがすぐに顔を引き締め、背中にアンカーが刺さったままでも高速回転するドリルを受け止めるティフォンを見て自分に言い聞かせるように呟く。

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