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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
vs.回復師ティフォン

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 魔王ウェスティーがもたらした功績は大きい。


 勇者たちに宣戦布告をし引きつけてくれたことで、ダンジョンをはじめとした対勇者対策を準備する時間を得ることができたこと。


 魔王の真核と共にやってきたグラスには魔力を通しにくい加工がされており、その技術を応用して内部からの転移魔法の制限を実現。


 そして勇者の仲間の一人である格闘家を縛る鎖の欠片が持つ魔力を押える力、正確には縛った者の魔力を吸って鎖の中へ溜め、余剰分を外へ排出する力を利用したアンカーの作成。


 これらに元々準備していた、アンカーの先端にある針を構成する金属に希少金属、ヒヒイロカネを用いることで硬い防御を突き破り、体内で根を張り魔力を吸う植物を各針に仕込むことでアンカーを外れなくする。


 さらに海外から取り寄せた照射することで対象者の魔力を乱す装置と、アンカーの融合により、膨大な魔力を持つ勇者一行への対策を講じることができた。


 そしてなによりも、魔力の揺らぎの一瞬をつく技の解説と実際勇者たちにも通用することを証明した映像記録の提供。


 攻撃を受ける箇所に魔力が集まる、そのとき本人も無意識のうちに体のどこかに魔力が薄くなる場所が現れる。そこを攻撃すればダメージが入る。原理は分かるけども、これを1人で行えるウェンスティーの実力には驚くばかりね━━


「解説ご苦労なのじゃ。で、このままいけそうかえ?」


「そうね……無理っぽいわね」


 オレガノとアンジェリカが言葉を交わし終えたとき、ティフォンが高速で回転するドリルに指を突っ込み強引に回転を止める。

 ナイフに斬られ血が吹き出すのも構わずナイフを握り、そのまま引っ張る。


 だが使い手が糸を持つ手を離したことで、糸がついたナイフは使い手を表に出すことなく地面に転がるだけとなる。


 ティフォンの両手から煙が上がると、傷は嘘のように消えていく。その手を広げ自分に向かって振るわれた拳を受け止める。


「超回復、面倒な能力ですね」


 自分の拳を受け止めるティフォンを睨むジンジャーが口角を上げると、体から黒い光が放たれジンジャーは異形の者へと姿を変える。


「アークデーモン……このダンジョンは色々な魔物たちが出てくるのね」


 一回り大きくなった体で振るうジンジャーの腕には、鋭いトゲが生えており腕を振るうと打撃と同時に斬撃も相手に与える。


 背中から生えた膜が張った羽、腰から伸びる尻尾に長く鋭い両手両足の爪。耳まで裂ける口には鋭い牙が並び、頭の左右からはねじれた角が前に向かって伸びている。


 そんなアークデーモンの姿になったジンジャーの鋭く重い攻撃をものともせずに、受け止めていくティフォンは左右から飛んできた数本のナイフを素手で払いのけると、1本を手で握りしめる。


 ナイフを握りしめ、手から血が吹くのも構わず引っ張ると糸が腕に絡まったクミン引きずり出される。


「魔力を流してうちの糸を逆に操るとか、化物め!」


「どんな獲物が釣れるかと思えば、なかなかに可愛い子じゃないっ!」


 舌なめずりをするティフォンは、そのまま糸を引きクミンを地面に叩きつける。

 追撃をさせまいと両手で連打を浴びせるジンジャーの攻撃を片手で払っていく。


「ねえあなた、名前はなんていうのかしら?」


 別のナイフで自分に絡んでいた糸を切って逃げるクミンが投げたナイフを、指で挟んで受け止めながらティフォンは尋ねる。


「わたくしの名前はティフォン。あなたになら名前を呼ばれてもいいわ」


 クスクス笑いながら指に挟んでいたナイフを、手首を振って投げ返す。


 短刀でナイフを弾いたクミンが地面を蹴ると同時に、ジンジャーがタイミングを合わせ蹴りを放つ。左右同時に攻撃される形になったティフォンだが両手でそれぞれの攻撃を受け止めるとクミンを短剣ごと投げ、ジンジャーの足を掴み真上に振り上げ地面に叩きつけ壁に向かって投げ飛ばす。


 先に壁に叩きつけられたクミンに追いついたティフォンが、クミンの顎を持ち空いている手で頬を撫でる。


「わたくし、美人な子も大好きなの。この綺麗な肌を切ったらどんな顔をして、どんな中身をさらけ出してくれるのかしら? って考えたらぞくぞくするもの」


「あいにく、うちに変な趣味はないんで」


 クミンがキッと睨みつけると、壁から巨大な腕が生えティフォンを殴る。手で受け止めるが、勢いで押し切られ飛ばされたティフォンが地面に足をつけ、すぐにその場から大きく飛びのく。


 自分を追って地面から次々と飛び出す巨大な針を避けていくティフォンの背後からゴーレムが現れ、体当たりを繰り出す。それと同時に高く飛んだジンジャーの踵落としがティフォンの頭に落ちる。


「くっ、魔力が落ちているとはいえ、男がわたくしに触れるなんて、許されるわけがないのよ。汚らわしいっ!!」


 叫ぶティフォンの拳がジンジャーを吹き飛ばし、そのまま体を回転させゴーレムを蹴って腹部を破壊する。


 砕けて崩れ落ちるゴーレムの欠片を足場にしながら掛け下りてきたクミンの短剣が振り下ろされる。


 短剣を腕で受け止めたティフォンとクミンの視線がぶつかり合う。


「そろそろ名前教えてくれないかしら? 名前を呼べないと悲しいじゃない?」


「気持ち悪い視線を……」


 短剣を押すクミンだが、短剣にヒビが入る。


 舌打ちをして短剣を捨て後ろに下がったクミンが、腰の後ろにぼんやりと現れた2本の鞘から短刀を抜く。


「うちの名は魔王オレガノ軍、四天王『暗殺メイド』のクミン」


 名乗ると同時にクミンに狐の耳と尻尾が生える。


「あらあら、狐の子なのね。可愛いわぁ~。きめた! クミンもオレガノちゃんと一緒に可愛がってあげる」


「丁寧にお断りさせてもらいます」


 唇に指を当て舌なめずりをして熱い視線を送るティフォンに対し、本来の姿に戻ったクミンが鋭い視線を向ける。

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