6
腕を組んで胸を張るオレガノをクミンが冷たいジト目で見る。
「四天王って突然ですね」
「ふふーん、そうじゃろ、そうじゃろ。なにせ余も今思いついたから、突然なのは当然なのじゃ。余もビックリしておるからの」
自分でビックリするって、それはどうなんだ? そんなことを突っ込む間もなくオレガノは握った拳を前に出すと、目をカッと開いて口を大きく開く。
「余じゃろ、クミンじゃろ。ローリエにサフランで4! これで四天王の完成じゃ! 今日から四天王じゃ!」
オレガノが名前を呼ぶ度に指を立て、最後に指が4本立った手を掲げ声を張る。
四天王がどのような感じで決まるものなのか、オレガノ以外知らないがこんな適当に決まるものではない気がしたクミンが文句を言う前に、ローリエが先に手を挙げる。
「なんじゃ?」
「はい、オレガノ様を含めて四天王なんですか? 前の魔王軍のときはオレガノ様の下に四天王がいたじゃないですか」
「たっ、たしかにそうじゃ⁉ さすがローリエなのじゃ」
「えへへへ」
オレガノに褒められ嬉しそうに頬を指で掻いて照れるローリエに「ツッコむところそこ?」とクミンが口にする前にオレガノが小さな人さし指をモニター向けピッと伸ばす。
「じゃあ、じゃあ。アンジェリカ! 四天王なのじゃ」
「「あらあらあらぁ~私がオレガノの四天王に入れるのね。う~んどうしようかしらぁ。嬉しいんだけども……あぁ~でもこんな機会逃したら二度とないでしょ。あ〜ホント悩むわぁ」」
そこにはいつものアンジェリカはおらず、桜色に染まった両頬を押さえて体をくねくねしながら悩む乙女なアンジェリカがいた。
「「あ~ん、中途半端にやったら迷惑掛けちゃう。けどやりたいしぃー。んーそうだ! 四天王は引き受けるけど仕事はダンジョンの業務メインで、日頃はジンジャーを代役として置いておくってのはダメかしら?」」
「オッケーなのじゃ!」
いいこと思い付いたと両手をパンと合わせて発言するアンジェリカに対して、親指を立てウインクして即答するオレガノの頭をクミンの手が掴む。
「いやいや、代役とかそんな四天王いないでしょ! しかもジンジャーさんここにいないのに勝手に決めていいんですか!」
アンジェリカとオレガノのやり取りにクミンが強めにツッコむ。
「「大丈夫よ。あとで辞令だしておくから」」
「なのじゃ!」
「いや、そういう問題ではないでしょ……」
ウインクをする二人にクミンは頭を抱えて大きなため息をついて、これ以上ツッコムことを諦める。
「それじゃあ、次は二つ名を決めるのじゃ! 四天王クラスには二つ名があるものじゃ。名乗るとき二つ名があるとカッコイイのじゃぞ!」
「二つ名……またどうでもいいことを。段々と勇者討伐から離れていっている気がするんですけど」
額を押させ首を横に振って至極真っ当な発言をするクミンの肩にローリエが手を置く。
「まあまあ、ここはオレガノ様の好きなようにやらせてあげましょう」
そう言って微笑むローリエを見てクミンも笑みを浮かべつつもため息をつく。
「二つ名とは自分で決めるものじゃないのだぞ。自然と人から呼ばれるようになるものじゃ。だけども時間がないから、今回は他のメンバーが決めてそれを発表するのじゃ。というわけで、まず余の二つ名を決めてほしいのじゃ! カッコイイのを頼むのじゃぞ」
オレガノが皆から一歩離れて、話し合うように催促するとクミンたちは集まって話し始める。自分で離れておきながら気になるようで、チラチラ見るオレガノの視線を受けながらクミンたちは二つ名を決めていくことになる。
そのままの流れで、各メンバーの二つ名を決めるため話し合いが行われていく。アンジェリカを投影しているせいで離れられないサフランはアンジェリカ不在で決められ、ついでに本人不在のままジンジャーの二つ名が決められる。
「では、発表なのじゃ! さーこいなのじゃ」
オレガノの第一声で始まる二つ名お披露目会。クミンたちは目を合わせ、小さな声で「せーの」と言いながら声を合わせる。
『愛くるしい魔王・オレガノ』
「なっ、カ、カッコイイのがいいといったのにぃぃ」
いやいやと首を振るオレガノを無視して、今度はクミンが離れて皆が集まり息を合わせる。いつになく緊張した表情のクミンに二つ名が告げられる。
『暗殺メイド・クミン』
「いや、そもそもうちはメイドではないんですが……しかも四天王っぽいですかそれ?」
メイド姿で否定するクミンだが、そんなことはどうでもいいと今度はローリエの二つ名を発表するため皆が集まる。胸を押さえ深呼吸するローリエに向けられた名は、
『会計士・ローリエ』
「え、えぇ……それって二つ名なんですか。なんだか職業のような……」
職業の名がそのまま二つ名になったことに不満を口にするローリエの隣にいるサフランが、目を光らせたまま翼を折って腰に当て自分の二つ名が呼ばれるのを待っている。
『借金鳥・サフラン』
「おいまて! すげぇー雑だな。しかも借金鳥ってなんだよ、鳥って! シャレかよ!」
シャレでつけられた二つ名にツッコムが、その光る目が投影し空中に映るTシャツ姿のアンジェリカが腕を組んで、自身の二つ名を待つ姿勢を見せる。
『経営から金貸しまで・アンジェリカ』
「「ん? んん? なんだか私だけコンセプト違うくないかしら?」」
不満そうに文句を言うアンジェリカは無視され、もう一人の名が呼ばれる。
『ジェントルマンな四天王代理・ジンジャー』
全員の二つ名が呼ばれたところで、オレガノが手をパンと叩く。
「これで余と幹部の名乗りも決まったのじゃ」
「いや、ちょっと待ってください」
しめようとしたオレガノにクミンが待ったをかける。
「ちょっと言いづらいんですが、この四天王って戦闘力異常に低くないですか? なんというか、戦闘系じゃなくて事務系よりと言いますか……簡単に言えば弱い気がします」
「ふむ、じゃあ事務系四天王ってことにするのじゃ」
「いや、そういうことじゃなくて!」
「では皆の者! 事務系四天王と代理の誕生をここに宣言し、愛くるしい魔王オレガノはここに魔王軍設立を宣言するのじゃ‼」
クミンのツッコミも適当に取り入れられ、ここに適当極まりない、愛くるしい魔王と事務色の濃い四天王率いる新たな魔王軍が小さく爆誕するのだった。




