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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
甘い誘惑は罠でしかない

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5

 コーアを指さすオレガノは、いつものほわほわした感じがなく幼女と思えない貫禄を感じさせる。


「お前、ここの(かしら)なら欲しいものは自ら取りに行くのじゃ。とくにほしい人材だけは他の者に任せてはいかんのじゃ。一番トップに立つ者が熱意を持って説得するべきじゃ! 分かったならちゃんとローリエに熱意を見せるのじゃ」


 ドヤ顔で言うオレガノの頭をクミンがむんずと掴む。


「すごくいいことを言っているのは認めますが、なんとなく話の流れが間違っている気がするんですよね。この男は人材としてローリエが欲しいと言ってるわけじゃないと思うんですけど」


「なんと⁉ じゃあなんなのじゃ?」


「はいはい、お子ちゃまは下がっててください」


 驚くオレガノに先ほどの威厳はなく、頭にクエスチョンを浮かべながらクミンに押されローリエに寄りかかる。


「ローリエはなんのことか分かるかえ?」


「えっ? あ、いえ……そ、それよりもクミンさんが」


 頬を赤らめつつ目を丸くして慌てふためくローリエが、クミンの方を見るとオレガノはニンマリと笑みを浮かべる。


「クミンはとても強いのじゃ。余の最後にして最初の仲間なのじゃから問題はないのじゃ」


 オレガノの自信たっぷりな言葉を背に受けるクミンが呆れた顔で笑う。


「意味の分からない言葉を良い感じに並べて、もっともらしいことを言いますよね。まあ、慣れてきましたけど」


 フッと笑ったクミンが目の前にいる男たちを睨む。


「無駄なことはやめた方がいいと、忠告しておきます」


 クミンの一言にカッとなった一人の男が殴り掛かる。だが拳は空を切り、勢い余った男がバランスを崩し前のめりに傾き頭が下がってしまう。その顔をクミンの手が掴む。


 男の顔の大きさに比べ小さく細いクミンの手では、男の顔面を覆うことはできず口元を押える程度。攻撃を避けらたことよりも、冷めた表情で自分の口を塞ぐクミンに怒り心頭になった男は血走った目で見下ろす。


 だが次の瞬間クミンが男の顔を掴んだまま手首を引き、顔を軽く引っ張ると男は白目を向いて力なく崩れ床に転がる。


 ゴツッと鈍い音をたて倒れた男に周囲の人たちがどよめき立つ。


「な、お前らその女を押えろ!」


 コーアが慌てて指示を出すと、残った男たちの一人が動こうとするが、突然膝裏を蹴られ両膝を床に叩きつけられてしまう。

 その瞬間に空中にいたクミンが男の首を掴んでそのまま脇で抱えると捻りながら床に叩きつける。


 床で沈黙する男の傍らに既にクミンの姿はなく、別の男が足を払われ両足が空中に浮く。驚く男の喉元にクミンの手がかかると、そのまま床に叩きつけられ男は動かなくなる。


「ちぃ!」


 最後の男がナイフを取り出すが、手元に違和感を感じて視線を向けると今あったはずのナイフがなくなっていた。


「せっかく体を鍛えたのに、この小さなナイフは少し似合わない気がします。まぁ、意外性を突く……という意味ではありかもしれませんが」


 声がした方を慌てて振り返った男の視線の先には、自分のナイフをくるくると回すクミンの姿があった。


「お返しします」


 そう言って投げたナイフは男の右足に履いている靴の内側に刺さる。それは男の足と靴の間にあった僅かな隙間を通り抜け、床に刺さっていた。

 肝が冷える感覚に青ざめる男の目の前にクミンが立つ。


「ちなみにですけど、うちは腕力でも勝つ自信あります」


 ニンマリと笑みを浮かべたクミンが、男の鍛えらえた腹筋に向かって拳を放つ。細い腕からは想像もできないほどの衝撃は、男の体では受け止めきれずに衝撃波が抜け男の背後の空気が弾ける。


 普通のメイドが屈強な男四人を一瞬で屈服させてことに、周りの人たちは腰を抜かしたり驚きで動けない人たちであふれていた。


 その中で腰を抜かして座り込んでいたラッハにクミンが歩み寄ると、ラッハは逃げようと必死に後ずさりをするが逃げれるわけもなく、クミンに見下ろされる。


「うちはよーく分からないんですけど、ラッハさんが説明してくれた愛のギフトであるカードに力を感じないと(あるじ)がいうのですが、どういうことでしょうか?」


「あはっ! えへっ、あいいや、えっとコーア様の特殊能力で、そう! 『祝福』のスキルが付与されててね。ほら、スキルの使用した感覚ってスキル保有者か、魔族くらいしか分からないでしょ?」


 その言葉を聞いて、クミンがローリエに背中から抱きしめられているオレガノに視線を向けると、オレガノは首をブンブンと横に振る。


「残念ですが、うちの主はスキル使用した痕跡が分かるので、それは嘘ですね」


「はわっ、いや、えっとコ、コーア様! あ、ちょっと」


 ラッハの視線の先には一人逃げようと、部屋の後方にあるドアに向かっていたコーアの姿があった。


「あ、ご心配なく」


 冷静に言い放ったクミンが右手の人さし指をくいっと引くと、コーアが派手にこけ顔面から床に倒れる。そのまま、細くて常人には見えにくい糸を引っ張りコーアをずりずりと引き寄せるクミンの姿を見たラッハは、恐怖で首を横に振っていやいやして気絶する。


「ここにいる皆さん全員に糸が繋がってますから、逃げようだなんで無謀なことはしないでくださいね」


 そう言い放った瞬間に、数人のメイドや執事が派手にすっころぶ。


「無駄だと言いましたよね」


 クミンの言葉に隙を窺って逃げようと模索していた者たちは諦めペタンと座り込んでしまう。


「さて、責任者としてご説明願ってもいいですか? このカードはちゃんとご利益があるのか、それともないのか」


 クミンに凄まれ、コーアが怯え歯をガチガチ鳴らす。


「な、何者なんだお前たちは! あれか? 最近私の周辺を嗅ぎ回っている国の差し金か?」


「国? いえ、うちらはただお金儲けをしたい者です。このカードに意味があるのか、ないのか。それをハッキリと聞きたいんです。それとも」


 クミンが右手をクイッと下に引くと、コーアが足から引っ張られ宙吊りになってしまう。


 頭を下にしてもがくコーアの首をクミンがそっと握る。


「話す口を持ち合わせていないというのなら仕方ありません。二度と口が聞けなくしましょうか? どうせなったところで、今と変わりないということでしょうから」


「うひぃ〜! 言う、言います、言わせてください! カードになんの意味もありません! 会員を募ってお金を支払わせ一部の人間だけが儲かる仕組みです。はい、詐欺です、ごめんなさいぃ〜」


 泣き出すコーアを見てポカンと呆れた顔をしていたクミンだが、すぐに目を鋭くし警戒した表情になる。


「複数の武装している者に周囲を囲まれています。このままここにいれば争いに巻き込まれるやもしれません」


 糸を外し雑にコーアを地面に落とすと、オレガノに伸ばしたクミンの手が止まる。


 オレガノを抱きしめたまま不安気な表情で見つめるローリエと目が合ったクミンは、伸ばした手でローリエごとオレガノを抱える。


「ふえ?」


 突然クミンに抱えられ、ローリエは驚きの声を出してしまう。


「ここで会ったのもなにかの縁です。ついでに逃げますよ。オレガノ様をしっかり持っててください」


 オレガノを抱えるローリエを抱えたクミンが素早く部屋を走り抜け、コーアたちが出てきたドアをぶち破り逃げる。


 それと同時にクミンたちが入ってきた通路から大量のフルアーマーの兵たちがなだれ込んでくる。


「全員動くな! 我らイーグル騎士団! 詐欺グループ愛のギフト! 大人しく裁きを……ってなんだこれは」


 騎士団の隊長と思わしき男性が、会場で倒れている詐欺グループのメンバーと思われる者たちと、床に座り込んで怯えている数人の男女を見て呟く。


「これは一体……我らよりも先に愛のギフトを無力化させた者がいるというのか。何者なんだ……」


 騎士団の隊長は、自分たちが突入する前に詐欺集団を鎮圧した存在を感じながら指示を出すのだった。

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