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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
甘い誘惑は罠でしかない

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「三人とも来てくれて大変嬉しいよ」


 大袈裟に両手を広げてクミンたち三人を歓迎するラッハはウインクをすると、早速といった感じでメイドが持ってきた紙と長方形の紙が束ねられたものをテーブルの上に置く。


「それじゃあ早速説明するね。君たちにはこのコーア様のありがたいお力がこもったカードを配って欲しいんだ」


 そう言って束ねていた長方形の紙を三つの束に分けクミンたち三人に配る。

 不思議そうに配られたカードを見つめるオレガノを横目にラッハは説明を続ける。


「このカードを持っているとコーア様の力が呼び寄せてくれる清い力が溜まって、持っている人に幸運をもたらしてくれるんだ。しかも持っている限り何回でも!」


 ラッハが興奮気味のに言葉を続けるせいで、クミンたちは口を挟めず、一方的に聞くだけになってしまう。


「本当はそのありがたいカードは10万エンするんだけど、説明会に来てくれた君たちには特別タダでお渡しするよ」


「ほえータダじゃとはすごいのじゃ!」


 カードを手に持って驚くオレガノを見てラッハが嬉しそうに笑みを浮かべると、クミンとローリエを見る。


「それで残りのカードについてなんだけど、たくさんの人に10万エンで配ってほしいんだ。それで、そのうち一万エンを君たちに慰労金として支払うから、残りの九万エンをコーア様に渡してくれればいいんだ。つまり君たちは人びとを幸せにしつつ、お金を稼げるってこと! なんとも素敵なことだと思わないかい?」


「おぉ~」っと口を半開きにして目を輝かせるオレガノと、何やら考えるクミンの隣ではローリエが首を傾げる。


「それに君たちだけに特別にカードをたくさん発行するから、どんどん配ってくれて欲しいんだ。でも一人でだと限界があるだろ? そういうときにもっと効率よく配る方法があるんだ」


 そう言ってラッハがニンマリと笑みを浮かべる。


「それはね、配った人たちに、別の人に配れば五千エンを慰労金として渡すよ、と言えばいいんだ。よく考えてごらんよ、10人に配ったら10万エン。さらにその10人が10人に配れば五万エン。つまりは15万エンが手に入るってこと!」


「配るだけで15万も手に入るなんてすごいのじゃ! 100人に配れば100万なのじゃぞクミン!」


「確かに配るだけなら制約もありませんし、力も使わない……うまくいけば自然にお金が集まってくる」


 唇に拳を当て考えるクミンと、ぴょこぴょこと興奮した様子で上下に体を揺らすオレガノを見て微笑むラッハが、言葉を続ける。


「さらにさらに配った人が次の人に配って、その人がまた別の人に配るときに慰労金を2,000エンほど渡すようにアドバイスすれば、次に配った人たちも必死になってくれるはずだから、皆がお金もじゃんじゃん増えて、人々に愛を届けられる! あぁ〜なんて素敵な活動なのだろう!」


 ラッハは自分に酔っているのか、大袈裟に手を広げ説明すると、クミンとオレガノが「おぉ〜」っと同時に声を上げる。


「あ、あのぉ……」


 キラキラした浮ついたような空気の中、ローリエが恐る恐る小さく手を挙げる。


「なにかご質問かな? いいよなんでも聞いて」


 爽やかな笑顔を向けるラッハに、ローリエが遠慮がちに小さく口を開く。


「あ、えっと…どんどん配っていったらいずれ頭打ちになってお金をもらえず、払うだけの人が出てくるんじゃ……」


 小さな声で言うローリエに、一瞬だけ笑顔を引きつらせるラッハだが、すぐに元の柔らかい笑顔になると優しく語りかける。


「えーっと、ローリエさん。君は賢いね。確かに金銭面で言えばいずれそうなるんだけど、これは元々愛のギフト。つまりは皆に幸せになってもらうための布教。慰労金はあくまでもオマケなんだよ。頑張りに支払われるだけで本来の目的は幸せを配ることだから」


「も、もしカードをもらった相手が幸せになれなかった場合とかの保証って、その……あるんですか?」


 質問を続けるローリエにラッハが渋い顔をしたあと、呆れたような表情で大袈裟にため息をつく。


「ローリエさん、君はもっと賢い人だと思って紹介したのになぁ。コーア様が布教するカードをもらって幸せにならないことはないんだよ。もしもなれないことがあったとすれば、それはもらった本人に罪深き理由があるからに他ならないね」


 さきほどまではニコニコ笑っていたラッハが鋭い目つきでローリエを睨む。


「そう、コーア様の力をはなっから疑って、周囲の人に嘘を吐き不安を煽る君のような存在が罪だね。ただね、コーア様は罪深き人でも見捨てはしないんだよ」


 再びニコニコと気持ち悪いくらいの笑顔を見せるラッハが指をパチンと鳴らすと、いつの間にきたのか屈強な対角の四人の男がラッハの後ろに並ぶ。


「おやおや、どうしました? 穏やかではありませんね」


 どこかねちっこさを感じる猫なで声を発しながらやって来たコーアに、ラッハが深々と頭を下げる。


「申し訳ございませんコーア様、こちらのローリエさんが愛のギフトについて不安があるようで教育を実行しようかと思いまして」


「おやおやそれは困りましたね。ほう……」


 コーアはローリエをジロジロ見たあと、ほんの僅かだが口角を上げニンマリと笑みを浮かべる。


「いいでしょ。私自ら教育を施してあげましょう」


「おおっ! なんとコーア様自ら!! ローリエさん良かったね、すごく光栄なことだよ。さっ早く行くといいよ」


 屈強な男たちがラッハとコーアの前に出るとじりじりとローリエへ近づく。その圧に怯え動けないローリエが涙目でゆっくり首を振る。


 ローリエを男たちの影が覆ったとき、小さな影が前に立つ。


「お前たち、ちょっと乱暴なのじゃぞ。強引な勧誘は嫌われると経験者が教えてやるのじゃ」


 ローリエよりも小さな体のオレガノが屈強な男たちの前にたち塞がり、その後ろにいるコーアをビシッと指さす。

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