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アンジェリカの案内で別の部屋に連れて来られたクミンとオレガノの二人は、壁に埋め込まれているモニターを見て口をポカンと半開きで開けていた。
「ダンジョンを生成するにあたって、重要なのはバランス。敵が多すぎても、罠だらけでもダメ。程よく設置して、攻略方法をチラつかせ、ギリギリで突破できるのがベスト。ただ、始めっからそんなんだと、初心者はすぐに断念するから一階はあえて優しくして、安いアイテムを掴ませて自信をつけさせるのがいいかもしれないわね」
モニターをレーザーポインターでさしながら説明するアンジェリカは、言葉を切ると二人を見て小さくため息をつく。
「習うより慣れろよね。いいわ、じゃあこれを見て」
モニターに映る映像が切り替わり、アイコンの隣に書かれた名称の一覧と、それを説明する文章が現れる。
「例えばこのペンデュラム3✕3は縦に3メートル、横に3メートル振れるペンデュラムが設置できるということ。ただし一回の仕様で振れるのはどちらか一方。ダンジョンのどこに設置するかで使い方を考えないと、全然振れずに止まってしまうから注意が必要ね。そうそう、ダンジョンの種類があるんだけども、最初は洞窟系がオススメで……って大丈夫かしら?」
プスプスと頭から煙を出すオレガノと、口を開けたままポカンとするクミンを、アンジェリカは不安そうに見る。
「そ、そのペンデュラムとやらは、ダンジョンにきた者を驚かせることが、できるのかえ?」
「う〜ん、そうねぇ。どちらかといえば、驚くよりも先にあの世へ行ってしまうかもしれないわね」
「さっきエンターテイメントがどうこうって説明した内容と、全然違うじゃないですか!」
唇を人差し指で押さえ答えるアンジェリカに、クミンが鋭くツッコむ。
「あんまり単純な罠だと、冒険心をくすぐれないのよねぇ。最近の冒険者って、結構刺激に飢えているところもあるみたいなアンケート結果もあるし」
「色々とツッコミたいところですが、ダンジョン内の魔物ってどうやって配置するんですか? 自分たちで捕まえて、リリースとかして結構手間がかかったりするんですか?」
「そうじゃ! 前から気になっておったんじゃが、ダンジョン内の魔物はよくお金を落とすが、あれは魔物が自分で冒険者から奪うのかえ?」
クミンとオレガノの質問に、アンジェリカはフフンと笑うと、リモコンを押し画面を切り替える。
「ダンジョン内の魔物はこのリスポーンブロックから出現するの。この右下に書いてある数字がリスポーン上限数。そしてお金の話しだけども、ドロップ率と量が設定ができるのよ」
そう言って再び変わった画面をレーザーポインターが走り、数字の部分をさす。
「リスポーンブロックの上に書いてある数字がレベル。これが生み出すことのできる魔物の強さの指数。これが倒されたとき、レベルを消費して金品を生み出す。魔物本体の強さで上下はするけど、基本はレベル1消費で、平均3000エンね」
クミンが手を挙げると、アンジェリカはどうぞと掌をひろげる。
「レベルを消費した魔物はどうなるんですか?」
「よ、余もそれ聞きたかったのじゃ」
クミンに続くオレガノ、二人の質問を受けてアンジェリカは嬉しそうに微笑む。
「いい質問ね。レベルを消費して倒れた魔物はレベルが一つ減った状態でリスポーンされるわ。例を上げると、設定で7体/10体のドロップ確率20パーセントで、落とし物レベル2設定にしたら、10体中7体だけが討伐されたとき20パーセントの確立でレベル2の落とし物をする、つまり6000エン分の金品を落とすということになるわね。これを繰り返すと最終的に頭打ちであるレベル1の魔物が7体と、レベル10の魔物3体がうろつき、しかもなにも落とさないダンジョンができあがるわ」
再びクミンが手を挙げる。
「はいはい、減ったレベルはずっとそのままなんですか?」
「よ、余もそれが知りたいのじゃ!」
再びオレガノも続く。
「レベルはね、私たちダンジョンコンサルタントに依頼してくれれば金額に応じてリセットをかけるわ」
アンジェリカの答えにクミンが渋い顔をする。
「つまりはレベルを維持するにもお金がかかると……ちなみにですが、ダンジョンを作るのにどれくらいのお金がかかるのでしょうか?」
「そ、そうじゃお金はいくらなのじゃ?」
お前知らなかったのかよ、とクミンが呆れつつオレガノを鋭く睨む。
「そうね、ダンジョンの一区画が月15万。リスポーンブロックが……一番安いスケルトンで40万、高いドラゴン系で1000万。罠はペンデュラムが10万、爆破系は地形リカバーがセットだから50万━━」
「ちょ、ちょっと待ってください。普通にダンジョンを作ろうとしたら平均どれくらいお金がいるんでしょうか?」
「平均? そうね……初心者向けで簡単な罠や魔物設置して、地形を安い洞窟系に設定するとして2800万あればそれっぽい一階層ができるんじゃないかしら?」
「にっ2800万⁉ しかも一階のみ!?」
「なんじゃとぉ⁉」
これでもかと目を丸くして驚くクミンとオレガノの二人を見て、アンジェリカは思い出したかのようにポンと手を叩く。
「そう言えば予算を聞いてなかったわね。予算はいくら?」
クミンとオレガノが目を合わせて、同時に口を開く。
「6000エンです」
「なのじゃ」
二人の口から出た予算の金額を聞いて、今度はアンジェリカが目を丸くする。




