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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
ダンジョン経営してみます

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2

 ハヌマーンの兵の案内で、山肌に現れた洞窟の奥へと進むクミンとオレガノは、洞窟内に走る配管や、沢山あるドアなどに目をやる。


「天井とか壁にある管とかってなんなのですか?」


「知らんのじゃ」


「えぇ……前に来たことあるんですよね」


「余はダンジョンの視察に来ただけじゃからの。難しい話は聞いておらんのじゃ。だって面白くないのじゃ」


 案内するハヌマーンについていきながら言葉を交わす二人は、洞窟の奥にある扉の前に案内される。クミンたちが近づいただけで「「入って」」と声がして勝手に扉が左右に開く。


 部屋の中に入ると、机の上に色とりどりの液体が入った試験管や、ビーカー、よく分からない装置が所狭しと並んでいた。


 奥の机に座る白衣を着たハヌマーンが振り返ると、茶色の長い髪をかき分け、鼻にかけてある小さな丸眼鏡を通し細長くキレのある目でクミンとオレガノを観察する。

 研究色の強い白衣とは対照的に、胸を強調する服と短いスカートを穿くハヌマーンの女性は、鼻の眼鏡をくいっと押すと立ち上がりオレガノに近づく。


「あなた。オレガノ……と名乗ったわよね。魔王オレガノと同じ名前だけども、関係者かなにかしら?」


「関係者もなにも本人なのじゃ!」


 オレガノの角に触れながらハヌマーンの女性が尋ねると、オレガノのは自信満々に答える。その背後ではクミンが殺気だってオレガノを睨んでいる。


「ふ~ん」


 ハヌマーンの女性は、屈んでオレガノを見つめると両頬を摘まんで引っ張る。


「痛いのじゃ! なにするのじゃ」


 怒るオレガノの額を指で押したハヌマーンの女性は、よろけるオレガノを見て可笑しそうに笑いながら椅子に座ると足を組む。


「あなた本当に南の魔王、オレガノなの? 魔力はほぼ感じられないし、そもそも『魔王の真核』はどうなってるのかしら?」


 ハヌマーンの女性の言葉に、ハッとした表情をしたオレガノは自分の胸に手を当てる。


「き、聞こえぬのじゃ。余の『魔王の真核』が動いてないのじゃ」


 あわわわと口を手で押さえ慌て始めるオレガノにクミンが不思議そうに尋ねる。


「さっきから言っている『魔王の真核』ってなんなんですか?」


「『魔王の真核』とは魔王と名乗れる証。第二の心臓と呼ばれ、体内に形成された高濃度の魔力の結晶が心臓と同じように鼓動を始め、全身に魔力を供給する、魔王の素質を持った者しか現れない核のことよ」


「そうなのじゃー」


 クミンの質問にハヌマーンの女性が、丁寧に説明してくれる。それにオレガノが乗っかり、これくらい常識だぞと言わんばかりのドヤ顔をクミンに向ける。


「それなら別に問題ないんじゃないですか? どうせ元魔王なわけで、現在はただのオレガノ様なわけですから」


「それもそうじゃの」


 軽い二人の会話に、ハヌマーンの女性がズッコケ、ズレたメガネをかけ直す。


「本当にそんなんでいいわけ?」


「勇者にボコボコにされてこうなってしまったからには、仕方ないのじゃ」


 あっけらかんと言うオレガノを、まばたきをしながら見ていたハヌマーンの女性が、口角を上げてふと笑う。


「本当にあなたがオレガノとして話を進めるけど、ダンジョン経営をなんで始めようとしているの? 魔王軍の再結成への資金集め? それとも勇者への復讐するため力を蓄えるため? そしてどんなダンジョンを作ろうとしているのかしら?」


「理由は今日のご飯と、寝る場所を確保するためなのじゃ! そのためにダンジョンに来た者たちをビックリさせて、驚いた勢いで武器とかお金になりそうなものを落として逃げていくようなダンジョンを作るのじゃ!」


 ハヌマーンの女性の質問に、オレガノは胸を張って答える。しばらくの沈黙が流れたあと、ハヌマーンの女性が笑いだす。


「いやはや、面白いことを言うわね。ダンジョンの経営権利を得た者は、主に人間を出汁にして稼ぎ、富による権力を盤石なものにできる。ダンジョンの生成と維持は、我らハヌマーンの中でも極秘中の極秘……それを今日の飯の種にしようとは。しかもビックリさせるダンジョンですって?」


 くっくっくっと笑いだす姿を見たクミンは、交渉決裂だと悟り次の仕事をどうしようか考え始める。


「採用よ!」


「え?」

「やったのじゃー!」


 驚くクミンと、手を上げて喜ぶオレガノが同時にハヌマーンの女性を見る。


「元来ダンジョンとは、相手を驚かせ楽しませつつ、怖いけどまた行きたいと思わせる空間。製作者も相手をどう驚かせて楽しませてやろうかと考えるもの。ダンジョンで相手を楽しませつつ、落としたものを拝借して更にダンジョンを大きくする。これが本来あるべき姿なのよ」


 一旦息を吐き間を置いたハヌマーンの女性が、ニンマリと笑みを浮かべオレガノを見つめる。


「相手を苦しめ金品を奪うことしか考えていない連中が多い中で、魔王オレガノが経営するダンジョンは仕掛けにこだわり、怖いけどまた来たくなる。そんなエンターテイナーに溢れたものだったわ。今の言葉にその片鱗を感じたから採用ってわけ。お嬢ちゃん納得できたかしら?」


 ハヌマーンの女性に話を振られ、クミンは頷く。それを見てふと笑ったハヌマーンの女性は、足を組み直すと、二人をじっと見つめる。


「じゃあ、改めて。私の名はアンジェリカ。よろしくね」


 アンジェリカの自己紹介を受けて、クミンは名乗りながら頭を下げ、オレガノは「よろしくなのじゃ」と胸を張る。

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