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ごくあく魔王 と あんさつメイド の た・て・な・お・し?  作者: 功野 涼し
ダンジョン経営してみます

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1.地頭って大切よね

 オレガノの案内で険しい山道を歩くクミンは、藪から出てきたゴブリン三匹を瞬殺する。


「……金目のものは持ってませんね」


 ゴブリンの遺体を確認し、呟くクミンの隣でオレガノがその様子を観察している。


「野良のゴブリンが金目のものを持っていることなんてあるのかえ?」


「人間をよく襲うゴブリンであれば、戦利品として人間の持っていた金品を所持していることがあります。けど、ここはあまり人が通らないので、それも期待できなさそうですね」


「ふむぅ、人里に近いゴブリンは金品を持ってる可能性が高いが、人間に討伐され奪われる可能性も高くなると……ダンジョン内の魔物がやけに金品を落とすのは、そういう理由なのじゃろうか」


 首を捻るオレガノをクミンはまじまじと見る。


「ダンジョン経営という、ちょろい商売があるって言ってましたけど、まさか詳しく知らないとか言わないでくださいよ」


「余の部下たちに経営は任せておったから、詳しく知るわけないのじゃ。その担当する奴らがこぞってダンジョン経営が楽でいいですって言っての、部署の配置転換で希望する奴が多かったのでよく覚えておるのじゃ」


 オレガノの言葉を聞いてクミンは額を押さえる。


「そうか……そうでしたね。オレガノ様はただ暴れるだけの、脳筋ボッチ魔王でした」


「トゲのある言い方じゃの。トップに立つというのはじゃな、なによりも魅力に溢れてないといけないのじゃ。足りないものは部下たちが補ってくれるから、皆を引き付ける求心力があればオッケーなのじゃ」


「そんなものなんですか?」


「そんなものじゃ」


 ふんぞり返るオレガノにクミンは小さなため息をつく。


「じゃあ、なんで関わっていなかったのにダンジョン経営に詳しい魔族がここにいるって知っているんですか?」


「皆ちょろいとか、面白いとか言うんで一緒にダンジョンコンサルタントと呼ばれる秘密組織に遊びに行ったことがあるからじゃ」


「秘密組織に遊びに行くって……凄いんだか、凄くないんだかよく分からない状況ですね。それに名称が秘密組織らしからぬ、しっかりした感じなのもなんともコメントしづらいです」


 クミンの言葉を聞いて、どこが気に入ったかは分からないが、オレガノは満足気に頷きながら胸を張る。


「ところで、そのダンジョンコンサルタントへ突然訪問して、うちらは相手してもらえるのですか?」


「大丈夫じゃろ! 前に余が行ったときは大歓迎じゃったし、いいヤツらだったじゃからの」


「いや、それはオレガノ様が魔王だったからであって、今のちんちくりんな姿で同じように歓迎されるとは、到底思えないのですが」


 クミンの一言にオレガノは目を泳がせ、口をパクパクさせ、あわあわ言い始める。


「まさか、本当にいい奴らだからどうにかなると思っていたのですか……」


 大きなため息をついたクミンは、呆れながらもあわあわするオレガノの背中をそっと押す。


「どうせここまで来たんです。訪ねるだけ訪ねてみましょう」


 背中を押されたオレガノは、クミンを見上げ首を何度も縦に振る。


 ***


 獣道を抜け、うっそうとした森を歩く二人はやがて、むき出しになっている山肌の前に立つ。

 ゴツゴツとした岩に生えたコケが目立つ山肌を、オレガノがふんふんと鼻息荒くして手でペタペタと触っている。


「なにかを探しているんですか?」


「入口を開く仕掛けがこの辺にあったはずなのじゃ」


 横に移動しながら山肌を触っていたオレガノが、目を大きくしたあと、笑みを浮かべる。


「あったのじゃ!」


 山肌から顔をのぞかせている岩の一部に手で触れ上に向け押さえると、不自然に動き元の位置に戻る。


「このレバーをガコンっと上げると、扉が開くのじゃ」


 自慢気に言うオレガノと感心するクミン、二人の前に槍を持った二人組が現れる。


「貴様ら何者だ?」


 二人組を見たクミンが呟く。


「ハヌマーン……」


 槍を構える猿系の魔族、ハヌマーンを前にクミンが短剣を構え臨戦態勢を取る。


「おおっ! ここを守るハヌマーンの一味かえ! 余じゃ、余じゃ! 魔王オレガノなのじゃ!」


 緊張した空気など読まず、さらに自分の正体を不用心にさらけ出すオレガノの頭をクミンが思わず叩いてしまう。


「あいたぁ⁉ な、なにするのじゃ!」


「あ、いや……つい……イラっとして」


 小さな女の子が飛び出て来たかと思うと、それを仲間と思われる女性が叩くという状況に戸惑うハヌマーンの二人は顔を見合わせる。


 動きが止まったのを見たクミンが短剣を収め、指をパチンと鳴らす。その行為に警戒するハヌマーンたちが、クミンの頭の耳とふさふさの尻尾、オレガノの角と尻尾を見て魔族だと分かり若干だが警戒を緩める。


「うちらは、ダンジョン経営に興味があって訪ねたんです。案内をお願いしたいのですが」


「今日ダンジョンに関する訪問の予定はない。それにどこの魔族か分からない者を簡単に案内するわけにはいかないな」


 再び槍を構えるハヌマーンに、これ以上の話し合いは無理かと思ったクミンだが不意に声が響く。


「「私のところにその二人を連れて来てくれる?」」


「あ、姐さん⁉ ですが」


「「私がいいって言ってるの」」


 突然響く女性の一声で槍を下ろしたハヌマーンに、クミンとオレガノは案内されることとなる。

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