[EPISODE1]CHAPTER5-INTERVENTION
〔THE CITY|中央島|中央区|ウィラド一丁目|都市警察中央島本部五階|AM 11:31|キョウユウ〕
捜査資料を読みながらアルフィンは美咲に尋ねる。
「今更だけど上の許可取ってるの?」
「ええ、もちろんです。アルフィン先輩の在籍時の功労と捜査能力は今でも頼りにしたい程ですし、ボスもアルフィン先輩なら捜査支援を頼んでもいいと」
美咲の返答に対しアルフィンは照れる。
「相変わらず甘いわねボスは……」
◇
「一応捜査資料に全て記載していますが口頭でも改めて事件の概要を説明します。管内捜査事件番号M87号、事件名称は中央島娼婦連続殺人事件。事件の発生は二十日前、中央島南区の娼婦街にて路地裏から暴行を受けた後が残された娼婦の死体が発見されました」
プロジェクターからスクリーンに殺害された娼婦の写真が投影される。
その写真を見て二階堂とアルフィンは眉を顰める。
「ひどいわ……」
アルフィンの嘆きをよそに美咲は説明を続ける。
「遺体周辺の防犯カメラを二十四時間分確認しましたが何も出てきませんでした」
「となると……犯人はカメラの位置を把握している都市関係者、あるいは……」
二階堂は頭を抑えながら一つの結論にたどり着く。
「【裏輸送者】……【輸送者組合】の連中、特にお姉様が黙っちゃいられないな」
◇
輸送者組合、THE CITYで最大規模を誇る中立組織。
文字通りあらゆる物を運び届ける者をまとめ上げた組織であり、お姉様は輸送者組合の組合長である。
輸送者組合の掟があり、その掟に従わない者もいる。それが裏輸送者。
「これは一度、お姉様に確認を取る必要があるな……アル、ここの本部長に掛け合って都市防犯システムへの一時アクセス権限を申請してくれ。俺はメイベルんとこへ向かう」
「了解、お姉様への連絡はそっちでお願い」
二階堂は腕輪型スマートフォン、通称【リングフォン】の電源を立ち上げ、空間投影された画面を操作する。
『ニカイドー、どうしたの?』
「メイベル、今からそっちへ向かう。追ってアルから連絡があるかもしれないが仕事を頼みたい」
『了解。珍しいね、そっちから頼むなんて』
「俺やアルじゃできないことなんでな」
◇
〔THE CITY|中央島|中央区|シークル二丁目|メゾンメゾフォルテ地下一階|AM 11:47|エイゾウカイセキ〕
トーカイビルの三軒隣に位置するメゾンメゾフォルテ。その地下一階にメイベルの仕事場はある。
二階堂はドアを三回ノックする。
『個人認証確認。パスワードをどうぞ』
自動音声が無機質に問う。
「明日は野外プレイでクリームパイ」
『パスワードを確認。どうぞお入りください』
どういうパスワードだと思いながらも二階堂は開かれたドアを通り抜ける。中にはメイベルが無数のモニターの前でパイプ椅子に座りながらキーを操作していた。
「ニカイドー、アルフィンちゃんから聞いたわよ。ついでにお姉様にも連絡はしたわ」
「で、返答は?」
「一言だけね……『問答無用』と」
やっぱりと思いながらも二階堂はメイベルの肩に手を置く。
「やってくれ、輸送者組合のブラックリストと照合……ヒットした者のGPS履歴を」
「收到」
次で一気に進めたらいいな。