第6話 仲間ができた
さて、次はどうしようか?
当初の目的、人間を殺して食べることが思いの外に早く達成してしまった。サバイバルを生き抜く為に強くなることを目指すのは変わらないが、それはそれとして何か別の目的は欲しい。
うーん…………特に思いつかない。
当面は強くなることに注力して、何か起こった際に対処できるよう周辺の探索と情報収集……ぐらいか。
とりあえず体を洗って血を落としつつ――むっ、何か来る。
急いで物陰に隠れて警戒すれば、村で見たトロールだろう巨人の魔物が飛び出すように川辺にやって来た。
走って来たのか少し息を切らしており、川に近づくと膝を着いて手を洗い、次に血まみれの顔をすすぎ、体を洗い始めた。
妙に人間臭い動きだな。
プレイヤーか?
だとするなら対話する価値はあるか。
でも姿を見せるのは得策ではない。とするなら……あそこが良さそう。
近くに藪があったので移動し、その中から声を掛けた。
「やぁこんにちは、巨人さん」
「誰だ!」
トロールらしき魔物は俺の方に振り向き、素早く石を砂のように鷲掴みにすると、投げる姿勢で止めた。
おーこわっ。
「あー落ち着いて。そんなもの構えられてちゃあ、びびって話もできない」
「……姿を見せないと、これをぶん投げるぞ」
……仕方ない。
俺は藪から出て姿を見せた。
「改めてこんにちは。念の為聞くけど、プレイヤーだよね?」
「ああ。それを聞くってことは、お前もだな?」
「うん。種族キャット、ネコの魔物。名前はまだない」
「そうかい。俺は種族トロール。同じく名前はない」
名乗ったトロールは石を投げ捨てた。
ほっ。
よかった。対話に応じてくれるみたいだ。
では早速、質問といこう。
「それじゃあ単刀直入に聞くけど、どうして村を襲った? やるにしても早過ぎない?」
「リスクは承知の上だ。こんな図体じゃあ、コソコソ隠れて強くなることは難しい。だから一気にレベルを上げる目的で襲った。お前が人語を話せているということは、俺の襲撃に便乗したんだろう?」
「うん。お陰で一人食べれた。ありがとう」
「いいさ。丁度、話し相手と共生ができそうな相手を探していたからな。どうだ、取引をしないか?」
「取引?」
「俺がお前を守ってやる。だからお前は周辺の探索や情報収集をして、危険な相手が来たら知らせてほしい」
「ふむ。悪くない」
「だろう? 取引成立でいいか?」
「うん、よろしく」
「こちらこそ、よろしく」
手の平を上にし、俺の目線に合わせて差し出して来たので、近づいて指先にネコの前足をポンと置いて握手とした。
テレレレーン♪
トロールが、仲間になったぞ!
なんちゃって。
「それで、これからどうする? 数日もすれば強い人間が討伐に来そうだけど」
「森の奥に避難する。川を伝って上流に移動し、そこで暫く暮らせる拠点を構えようかと。どう思う?」
「いいと思う。けど森の奥は強い魔物がいそうだけど大丈夫?」
「もしダメそうならこの森から離れるつもりだ」
「それならいいか」
「行こう」
「うん」
俺たちは川を伝って移動を始めた。
トロールがドスドス歩くからその音で他の魔物は寄り付かず、俺はトロールの肩に乗ることで楽ができた。
辺りが暗くなったところで、丁度休むのに良さそうな広場がある川辺でトロールが立ち止まった。
「今日はここで休もう」
「わかった。一応聞くけど、もう少し進まなくていいの? 魔物は暗視持ちのはずだけど」
「ああ。この先は何が起こるからわからないから、万全の状態で行きたい」
「なるほど」
確かに歩き疲れた状態で強い奴と戦うのは避けたい。焦らず地道に行くのが得策か。
トロールが岩を椅子代わりにして座り込んだので、俺はその対面に着地して座る。
焚火があれば温まれたが、トロールは今からする気はなさそうだ。
あっ、そうだ。
これ聞いておこう。
「一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「メニューが開けなくなる前、メールが届いてたけど、文字化けして読めなかった。トロールは読めた?」
「ああ、読めたぞ。“ゲームに異常が発生してログアウトできないから暫しお待ちください”って運営からのお知らせだった。だが、一時間ごとにメールが届いても事態は改善されず、遂には文字化けしてメールが届かなくなった」
で、メニューすら開けなくなったと。
「原因はわかる?」
「ハハ、いちプレイヤーにわかる訳ないだろう。まぁこんな状況で死んだらどうなるかわからない以上、生存第一に行動するしかない」
「それには同意する。あっ、ちょっと食べて寝るんで、あとはお願い」
「わかった」
俺は近くに生えている黄色いキウイの場所まで移動し、一応ぐるりと回って何もないことを確認してから食べた。
んまー。
そしてフワ~。
やめられない止まらない、パクパク食べて幸せ酔いよい。
満足したのでトロールのところまで戻る。
「ただいまー」
「……お前、酔ってるのか?」
「酔ってるよー。あのキウイっぽいの、マタタビ成分入ってるからだろうね~」
「そ、そうか。今日は見ていてやるが、あんまり警戒心が薄れると俺が困るから程々にな?」
「はいはいー。おやすみー」
「……おやすみ」




