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魔物RPG  作者: 覇気草
32話~

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第34話 不思議の国?



 襲撃していたワームを全て倒すと、船から勝ちどきの声が上がる。その声を聞いた女たちが船内から姿を見せ、俺たち魔王三人が甲板に降り立つと全員がビシッと姿勢を正し、将軍のヴァンが代表して出迎えてくれる。


「ネコ神様、それとご友人方。助太刀感謝します」


「ん。それよりもさっきの魔物はなんなの?」


「アレはサンドワームという魔物で、砂漠の広範囲に生息しています。生息域を避けて作られている街道に沿って進めば遭遇することはまずないのですが……我々は群れの中に突っ込んでしまったようです」


「そっか。死者や負傷者は?」


「いません。助けが早かったお陰です」


「それはよかった」


 死人が出たら心情が悪くなるしな。


「ところでネコ神様、皆様がいう楽園とはこの方角にあるのですか?」


「ボタン、ワイバーンいなくなったけど、方角とか場所わかる?」


「わかりますぅ。進路このままで大丈夫ですぅ」


「だそうだよ」


「わかりました」


「コンゴウは何か言うことある?」


「いや、ない。見張りでもしておく」


 そういってコンゴウは船首の方に移動していった。


 俺も見張りするか。


 ちょっと飛んで船を上から見下ろしながら付いて行った。






「…………暇だ」


 そういえば空を飛んで来たから、楽園までかなりの距離があるのを忘れてた。平和なのはいいことだけれど、手持ち無沙汰で仕方ない。


 何かやることは……ああ、あったわ。女神ルシエールに魔王になったことを報告して、ついでに聞きたいことを聞く。


 誰かにちょっと出掛けることを伝えておこうと、日も暮れてささやかな宴会が開かれている甲板に降り立つ。すると俺を神様扱いしている人間たちが、俺の登場で静かになった。

 気にせず、干し肉をリスみたい頬張ほおばってるボタンに声を掛ける。


「ボタン、ちょっと遠くに出掛けるからあと任せるね」


「ひってはっひゃーいぃ」


 ちゃんと飲み込んでから言おうな。


 とにかく、ボタンには動向を伝えたし、人間たちもやり取りを見ているので心配されることはないだろう。


「じゃあ行って来まーす」


 不思議の国への扉を召喚して入った。

 日暮れの砂漠から日中の森の中に入ったことで、肌に感じる温度や湿度がガラリと変わり、草木の濃い香りが鼻をくすぐる。

 今日の道はぐねぐね左右に曲がっていて、口が生えた木々が愉快な歌を歌いながら一定のリズムでくねくねとダンスしている。

 近くにはミイラ男が経営するこんにゃく屋の屋台が停まっていたので、とりあえず席に着く。


「こんにちはー」


「やぁやぁネコさんネコさんこんにちは。今日はおめでたいね」


「おめでたい?」


「ほらほら見て見て。木が歌って踊って、ネコさんを祝ってる」


 これ祝ってたんだ。


「そんなことされるわれはないんだけど」


「ネコさんになくても、私たちにはあるということです。これ、お祝いのこんにゃく」


 コト、っと目の前に小さな皿が置かれる。白い丸こんにゃくの中に金箔が入っている。


「まぁ、いただきます」


 出されたからにはもらっておく。

 手を合わせてから、お箸で掴んで――ぱくり。


 ……普通に美味しい。日本酒が欲しくなるな。


「ごちそうさま」


「お粗末様でした」


 よし、女神ルシエールに会いに行こう。


「ああ、ネコさんネコさん、ちょっと待ってちょっと待って」


「ん?」


 屋台の椅子から立ち上がって歩き出そうとすると、ミイラ男に呼び止められて振り返る。


「ゲームか異世界か、どちらにするか結論はでたかい?」


 その問い掛け、女神ルシエールに会った直後の紙の内容!


「……なんで知ってるの?」


 聞けば、ミイラ男は笑みを浮かべた。


「私はこれでも情報通だからね。ゲームか異世界、異世界かゲーム、どちらを選択する?」


「……」


 それ、選択しないとダメなのだろうか?


「ま、それはこれからお会いする女神様と話をしてからでも、遅くはない。ほらほら、来たよ」


 ミイラ男の視線が俺とは反対の道へ向けられる。

 釣られて俺も振り向けば、人間の手足を生やした等身大のサバが走ってきた。


 うわぁ。


 前回とは違い、走るサバの体はカビが生え、一部の肉が落ちて骨が見えて完全に腐っていた。通り過ぎる時には自分のニヤニヤ笑顔をしかめてしまうほどの悪臭がした。


「なんか腐ってたんだけど――あれ?」


 振り返ったらミイラ男の姿が消えていた。屋台も最初からそこになかったかのように消えている。ただ、男が立っていた場所には包帯の切れ端が落ちていた。


「……まぁ、いいか」


 幻覚が効かなくなった影響か、自分が発狂してしまったせいか、どちらにせよ進むしかないので俺は腐ったサバを追うべく走った。




 ある程度の距離まで近づくとサバには追いつけなくなり、高速で道を駆け抜けて街に入る。


 おぉう、なんだこれ……?


 以前と違って建物が全て巨大なキノコになっていて、胞子ほうしが霧のように充満している。甘ったるいハチミツとリンゴのような香りがして悪くない。

 てくてくと二足歩行で歩くキノコ人間もいる。


 こいつら、食べたら美味しいのかな?

 黄泉戸喫よもつえぐいになるかもしれないけど、魔王にまでなったら今更だし、食べてみたいな。女神ルシエールに聞いてみよう。


 サバを追い続けて小さな城に到着。

 以前と比べるとこえが生えたり亀裂きれつが入ったりして、随分と古ぼけている。

 気にせず中に入り、床が抜け落ちそうなボロボロの廊下を渡って食堂のドアを開けた。

 中には以前と同様の、誕生日パーティーでもしそうな飾りと料理が並べられていて、古代ローマ風の服を着た女神ルシエールが座って優雅にティーカップを口に付けていた。


「来たよ、女神ルシエール」


「はい、お待ちしてましたよ。チエ様」




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