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魔物RPG  作者: 覇気草
16話~31話

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第21話 またまた進化する

 


 民族衣装を着た男を追うことになり、俺が先頭で湿原の中を進む。

 逃げる男は時折こちらに振り返っては変な動きを見せるので、どうにも罠の予感しかしない。


 ――ピキーン――!


 アビリティ【野生の勘】が発動し、俺の体は勝手に動いて足を止めた。地面を見れば、トゲトゲした硬そうな木の実がばらかれていた。


 マキビシか!


「二人とも、足元に気を付けて」


 そう言いつつ、俺は軽やかな足取りでマキビシの間を歩いて通過する。ネコだからこそできる芸当だ。

 振り返れば二人と三体は無茶せずに迂回していた。

 前を向けば、男が足を止めてこっちを向いていて、挑発するかのようにうすら笑いを浮かべていた。目が合うとまた逃げ出した。


 これは相当準備されてるな……覚悟しないと。


 再び追い掛け始める。


 ――ピキーン――!


 またすぐにアビリティ【野生の勘】が発動し、今度は濁った水溜まりを飛び越えた。一瞬だけだが、水の中に木の棘が敷き詰められているのが見えた。


 殺意高いなぁ。


 後続が迂回して進むのを確認し、男を追う。

 幾つかの罠に出くわし、不意打ち判定としてアビリティ【野生の勘】が発動して回避する。

 そのどれもが殺意マシマシで、マッドがただ集落を襲っただけとはとても思えなくなった。




 湿原を抜け、地面がぬかるむ森に入った。ここでも多くの罠に誘導されるがことごとくを回避する。流石の男も顔が険しくなり、逃げるのに必死になった。

 土地勘がある男の動きは森の中では湿原以上に俊敏しゅんびんで、俺以外は次第に距離が開いて見えなくなる。

 まだまだある罠を突破し、開けた場所に出て村に到着。三メートルほどの丸太の壁とトゲトゲの木の棒に囲まれていて、門が閉じられている。

 その門の上から弓を持った男が二人、見張っていた。


 ここまで来れば充分。

 仲間もいないし、使うなら今しかない。

 【狂気の瞳】!


 弓を持った二人が俺に弓矢を構えたが、スキルの効果によって目が合った瞬間に狂気に陥り、絶叫しながら羽虫を振り払うように慌てふためき、裏側に落ちたのか姿を消した。

 追っていた男が振り返ってくれたので効果が発動し、ハッとして立ち止まった。


「……俺のせいだ。俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ俺のせいだ」


 と言い続けながら、腰のポーチからナイフを取り出して自分の腹をザクザク刺し始めた。


 よし、これで不意を突ける。

 このまま堀を越え壁を――登る!


 ネコの身体能力を信じ、ダッシュして大きく跳躍ちょうやく。堀とトゲトゲの木の棒を越えて壁に到達すれば、爪を立てて素早くよじ登る。思ったよりも楽に登りきり、壁裏の足場に着地。

 百人以上が住んでいそうな広い村の中は木と藁とロープで作られた家が並んでいた。民族衣装を着た住人たちは俺を見て目が合い、次々と発狂し悲鳴の合唱が始まった。


 さーてと、変に恨まれでもされると面倒だから、皆殺しと行きますか。


 まだ正常な住人に襲うつもりで集落の中を駆け回れば、目が合って次々と発狂していく。


 ――ピキーン――!


 アビリティ【野生の勘】が発動して回避行動を取れば、手斧が二本、クルクルと高速回転しながら飛来して元いた場所を通り過ぎた。

 だがそれで終わりではなく、手斧は落ちずにブーメランのようにカーブして飛来した方へ戻った。その先には家があり、玄関の前に立っていた男の手の中にピタリと収まった。

 鍛え抜かれた屈強な肉体で体中に古傷がある、髭を生やした中年の男だ。


 こいつは強そうだな……あのエルフと同等だったら逃げよう。


 目を合わせているのに男は発狂すらせず、睨みつけてくる。ゆっくりとした足取りで無造作に歩いて来るが、いつでも動けるような雰囲気がして隙がない。

 そんな彼が口を開いた。


「見たこともないキャットだ。精神攻撃系の能力を持っているようだが、俺には効かんぞ」


「じゃあこんなのはどう?」


 【ドランクブレス】!


 酒気を帯びた煙を吐き出し、男に浴びせる。近くにいた発狂中の住人が巻き込まれてすぐに眠ったが、男は平然と立っていて酔う様子すらない。


「酒気のブレスか……面妖な奴め」


 よし逃げよう!


「……じゃあ、帰るね」


 回れ右して何事もなかったかのように歩いて逃げようとしたら、手斧が俺の頭を掠めて目の前の地面に刺さった。


 おーこわっ。

 当てる気がなかったから、スキルが発動しなかったのか。


 内心ビビりつつもゆっくり振り返ると、男はいつの間にか黄土色のオーラを纏っていた。


 あぁ、エルフと同じじゃん。

 逃げよう。

 いや無理かも。

 ――なら、他の住人を食って食って食いまくって、今からレベルを上げて倒すしかない。


 覚悟を決めるが、まだ平和的解決の道筋がクモの糸くらいには残っているので、ダメ元で言ってみる。


「何か用?」


「お前は危険すぎる。この村はもう終わりだが、生きては帰さん」


 だよねー。

 わかってたよちくしょう!


 俺は男から逃げるべく、最初から全力で横に向かって走った。


 ――ピキーン――!


 またスキルが発動して体が勝手に動き、ジャンプして回避。二本の手斧が左右から飛来して足元を通過したが、少し先で折り返し、こっちに向かってくる。その攻撃もスキルの効果の範疇なのか、空中で体を捻ってギリギリで回避した。


「今のを避けるかっ!」


 驚きたいのはこっちだよ。

 死ぬかと思った!


 脱兎の如く逃げて、もう一度飛来した手斧を回避する。一度見て動きがわかってしまえば、大した脅威ではない。

 そこからは鬼ごっこだ。男はエルフと違って足は遅く、逃げる俺に追いつけない。だから飛来する手斧を避けつつ発狂した住人を通りすがりに噛みついて殺すことで、経験値を取得していく。

 ピコン、ピコン、ピコン――と頭の中でレベルが上がった報告が何度も流れる。


 プランとマッド……遅いな。まさか森の中で迷子になったのか?

 ――あっ、しまった。門が閉じていたから中に入る手段がない!


 ピコン。


 〈レベルが上がりました〉


 〈規定レベル以上にて、進化条件を満たしたのを確認しました〉


 〈進化を開始します〉


 キタッ!

 進化キターッ!!



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