episode5
家政婦を雇ったり、掃除代行を雇ったりするのはお金持ちのやる事だ。
ずっとそう思っていた。
でも、貧乏にも関わらず、それをやっている組織がある。
この国のことだ。
この国の経済状況は悪い、前の総理が言っていた。
でも、積極的に、補助金まで出して、外国人労働者を受け入れようとしている。
安い労働力を受け入れて利益を出すというのは、経営者の理屈だ。
仕事を受けた労働者は、やがて国に帰る時に蓄えたお金を外貨に変えて持ち帰る。
彼らは年金を払っていない。いつか祖国に帰らなきゃならない。
未来のために蓄えた貯金はその時に変換される。
この国の通貨が売られることになる。
この国民はその分外貨を稼ぐか、または、節約する必要がある。
国民の節約、つまり、増税がまた始まるに違いない……。
大丈夫だろうか、この国は……。
安い労働力が無いと立ち行かないという業種は確かに存在する。
残念ながら、その業種はもともと無理だった。
増税のタイミングであきらめるべきだった。
全体に公平に平等に税負担を強いるということは、利益率の低い業種に対する足切りだ。
消費に限界のあるこの国では、食料を生産したり、物を製造したりする業種には成長にも限界がある。
そのような業種を救いたいのであれば、安い労働力に頼るのではなく、税制を見直すべきだ。
この国では、外貨を稼ぐことこそが、優先順位の高い命題なのだから。
もし、外貨を稼ぐ職種ランキングというものがあったら……。
上位は海外展開する大企業が占める中、最下位は政治家だろうな。
国民からお金を巻き上げ生産力――国力を下げて、海外にばらまいてばっかりだ。
木曜日となり、多くのプレイヤーが「南の大聖堂」の攻略に乗り出した。
青と赤の背景をバックに矢印が交互に二つ並ぶ旗がなびく聖堂だ。
大聖堂の名の通り、デフォルトサーバーの南の聖堂よりもずっと大きな迷宮が控えている。
3倍は大きくしただろうか。
この迷宮は多数の分岐があり、道を間違えると当然時間をロストする。
このゲームには60分という制限時間がある。
たくさんの分岐が待っているのにもかかわらず、間違った道を選ぶことは許されない。
この大聖堂は、分岐で正しい選択を常に求められるという強運が要求される。
そう簡単に攻略はできないだろう。
そう思っていたが……、案外あっさり攻略された。
新聞で攻略情報を確認してみた。
どうやら青と赤の旗が攻略のヒントになっているらしく、分岐で間違える事は無いらしい。
以前はこんな攻略、無かったと思ったけれど……。
もしかして、アップデートで追加されたのか?
この国は、いつもそうだ。
知らないと損をする。
知っている者だけが得をする。
そして、得をした者は決まって言うのだ。
知らないから悪い、と。
そして、俺は思う。
国の制度なんて、今のこの国でしか通用しない制度だ。
そんなものを強要させるな。
この世界にはもっと未知の分野が山ほどある。
その中には宝の山だってあるかもしれない。
今だけの一時的な制度なんかに目を向けさせるな。
年々ややこしくなる上に、抜け道が用意されている制度に辟易してくる。
そもそも消費税は、導入当初、税制がわかりやすくなるという話だった気がする。
多くの税率が統一簡素化することで、税制が単純化するもんだと思っていた。
それに、税率の変更が容易で景気の調整がしやすいという意味もあったはずだ。
30年経った今、年々新しい税金が作られ、景気の良しあしに関係なく増税が進んでいる。
今日も、カジノに「ごーや」はやってきた。
同じ同盟の「KOJI」というプレイヤーと一緒のようだ。
「今日の大聖堂、ぎりぎりだったな」
「ああ、青と赤のガイコツを交互に、とか知らなかったら攻略できなかったな」
「そう考えると初見で気づいたTAKASHIなかなかやるな」
「うん」
会話を聞いていると、南の大聖堂の攻略に成功していたようだ。
俺は苛立った感情を少し沈めた。
彼らは悪くない。
この世界はゲームなのだ。
未知のものがあれば、それを知識に変えて、攻略に役立てる。そんなゲームなのだ。
そしてゲームの製作者だって、プレイヤーの知らない未知の領域をたくさん用意する。
この世界は、未知の世界を旅して、様々な発見をするゲームの世界なのだから。
二人に増えたけれど、今日もカジノのパズルの攻略はできなかったみたいだ。
少し、難しくしすぎたかもしれない。




