第六十四話 最終日
ピピッ。ピピピピッ ピピピピピッ。
高い電子音が聞こえ、目が覚める。
昔はこの音が日常だった。懐かしい音だ。
おお。○○しゃ よむよみよ。
〇んでしまうとは なさけない。
○○しゃにはもちろん、さくしゃが入る。当然、私の事である。
私は〇んでしまったらしい。小説を書いていただけなのに。
えっと……、昨日……何があったんだっけ……。
ああ、思い出してきた。
古の呪文や古代魔法の危険性は知っていた。
多くの小説や漫画では禁忌とされているから。
でも、まさか、それを身をもって体験することになるなんて……。
コ〇ミコマンド、おそるべし……。
小並だなんてとんでもない。
社名に騙されてはいけない。
私の時代ではいつだって大物だ。
まるでこの小説のために用意されたかのようなトラップ。
見事に引っ掛かってしまった。
大企業様への敬意を忘れずに表明したところで、私は小説の続きを書くことにした。
第五章には雑なところがあったのは間違いない。今度はしっかり書こう。
ポチッ。ウィィィィーン。システムが起動する音がする。
ただ……、〇んでいてよかった。
自爆は恐ろしい。とてもじゃないけれど文字には起こせない。
皆も古の呪文や古代魔術には気を付けた方がいい。
◇ ◇ ◇
「さて、はじめますか」KOJIの少し寂しそうな声が聞こえてきた。
「どうする?開発サーバーだから、すぐに初日に戻れるけど…」
「いや、バッドエンディングも見ておこうよ」TAKASHIの声にごーやが答えた。
今日は最終日。残念だけれどバッドエンディングを鑑賞する日になりそうだ。
コアタイムが近づき、全体チャットが盛り上がり始める。
私たち以外の参加者はいない。AIが搭載されたNPCがコメントしてくれている。
「なんだか胸騒ぎがする5秒前」「4」「3」「2」「1」
AIはカウントダウンの盛り上がりまで学習しているようだ。
画面が切り替わりムービーが始まる。
急に天候が悪くなり、太陽に照らされていた平原が闇に染まる。
黒いオーラを身にまとった魔王がゆっくりと現れた。
そのオーラはオープニングの時より強力だ。
周囲の空気を震わせ不気味な音を発生させていた。
「さて、十二分に回復したようだ。それでは続きを始めよう」
私たちは、その魔王に立ちはだかる。
全ての塔こそクリアは出来なかったが3つは攻略した。
私たちだって少しは強くなっている。
「おっと。そういえば、お前らもいたな。
まずはお前らから血祭りにあげてやろう!」
戦闘が始まった。
BGMが切り替わる。壮大な音楽に気分が高揚していく。
「頑張って!」小人や街の人達の応援が聞こえてきた。
私たちの攻撃力、防御力、魔法力が大幅に増大する演出が入る。
魔王は左手を振り上げた。魔王の魔法攻撃だ。
このタイミングで画面が切り替わり、右側から鎧取得のカットイン。
魔王の魔法攻撃は無効化された。
「なに、こしゃくな。ならこの攻撃はどうだ」
魔王は右手で空気をはじいた。
左側から盾取得のカットイン。
魔王の空気弾を、盾で弾き飛ばす。
「次は我々の攻撃だ!」ごーやの機械音声が聞こえる。
下から呪文取得のカットイン。
「メテオ!」
隕石が魔王に命中する。魔王は大ダメージでしばらく動けないようだ。
「よし、とどめだ!」KOJIの機械音声に皆が反応する。
上から剣取得のカットイン……は現れない。
残念だけれど北の塔の攻略はできていない。
画面は全て埋まらなかった……。
皆で攻撃するも、ダメージは通らない。
魔法のダメージが少しずつ抜けてきたようだ。魔王が起き上がる。
「……。思い出した。古からの力だな。卑怯なり」
魔王は辺りを見回した。
「あれか」魔王は渾身の魔法で北の塔を吹き飛ばす。
「ふっ。ふふっ。ふふふっ。ふはははははは!」
「これで、この世界は我のものぞ!」
「さて、お前らはかわいがってやろう」
「すぐに〇ねると思うなよ。ふふっ。ふははははははは!」
画面が、血で深紅に染まる。
「GAMEOVER」




