第六十三話 六日目
今日は六日目。
ちなみに昨日は、塔を一つ攻略した。
いや、二つの塔の攻略には失敗したというべきか。
また20分レベル上げをして、西の塔を攻略し、南の塔の攻略を目指した。
西の塔の大半は四日目に見ている。既知の塔の攻略だ。
少し早く攻略できるはず。そう思っていたがやはりだめだった。
敵シンボルが多いというシンプルな構造の塔の攻略に対しては、塔の状況を知っているかどうかなんて全く関係なかった。
西の塔の攻略完了は40分。南の塔への移動で10分。
同じように南の塔の最上階で時間切れになった。
ちなみに西の塔では、精霊のような人から、
「塔の守護神を倒した者よ。我が英知の一つ、盾を授けましょう」と、英知の盾を受け取った。
今日は実質、最終日。今日二つの塔の攻略が出来なければ攻略失敗となる。
「よし!今日こそ同時攻略だ!」KOJIの声に皆、気合が入ったようだ。
20分間、北の平原のカオナシお化けを倒しレベル上げした後、南の塔へ向かう。
塔の中は昨日見ているけれど、やはり敵シンボルが多くて、手間がかかる。
35分に最上階にたどり着く。時間は残念ながら今まで通りだ。
なかなか時間を短縮できず、やきもきする。
最上階の黒光りする丸い塊に触れ、別次元に存在する守護神のドラゴンを倒す。
ただ、ここから少し普段のサーバーと様子が違っていた。
「塔の守護神を倒した者よ。我が英知の一つ、技、術、呪文を授けましょう」
多くのサーバーでは、技は最後に与えられていた。
このサーバーでは、3番目、つまり鎧、盾の次として呪文を覚えたという事だ。
私はすぐにステータスを確認した。
ベホマラーやピオリムにバギマ。
呪文の欄を見ると、今までに見覚えのなかった呪文がたくさん存在した。
どうやら、この職業で獲得するはずの呪文を全て覚えたみたいだ。
「最期の塔、北の塔へ急ぐぞ」KOJIは技の確認をすぐに終え、皆を急がせる。
急いで平原を駆け抜けたけれど、北の塔への到着は50分。
急げ、もっと急げと焦るほど敵シンボルの回避に失敗し、敵とエンカウントしてしまう。
……。
相変わらずごーやののんきな詠唱が聞こえてくる。
「1足す2は?」
北の塔は、最後の塔だけあって、今までの敵よりだいぶ強い。
サンダーでは火力が足りないよ、何しているのごーやさん……。
と思っていたけれど、ちゃんと軍師様はわかっていたようだ。
「んっ?サンだが?」サンダーより遥かに強力な雷の呪文が敵を瞬殺する。
右手の親指と人差し指を口元にあてるポーズまで決めたごーやの渾身のどや顔に、私は思わず笑ってしまう。
我らが軍師様は火力の事までちゃんと考えている。
それに、新しく覚えたばかりの呪文を使って塔の攻略を急いでいる。
少しピリピリとしていたチームの雰囲気を明るく変えた。
MP回復薬はまだ潤沢にある。私も新しく覚えた呪文を駆使して急がなきゃ。
そうりょの数少ない攻撃呪文「バギマ」を連発して先へ急ぐ。
「バイオ!」「クエイク!」「フレア!」
詠唱と共に一風変わった効果音が鳴り響く。
我らが軍師様は、新しく覚えた呪文を連発できて、とても楽しそうだ。
この一分一秒を争う局面だというのに笑いの心は忘れない、優秀な軍師様だ。
もうほとんど時間が無い、最上階にたどり着くとすぐに丸い塊に触れた。
BGMが変わり、最後の守護神らしい雰囲気が漂ってくる……。
最後の守護神であるドラゴンは3体の槍兵を従えていた。
「もう時間が無いぞ、急げ」KOJIの声が聞こえた。
みんな急いで攻撃している。
そんな中、やっぱり軍師様の頼もしい詠唱が聞こえた。
「トード!」
えっ?……。……。それって、敵を一体カエルにする呪文よね……。
ラストダンジョンであるここで、最終戦とでもいうべき戦闘で、通用するわけがない……。
せっかく優秀な軍師様だって思っていたのに……。
私が、私こそが、カエル化しちゃうわ……。
「げこっ?げこげこ!」カエルの声が聞こえる。
強そうな槍兵が一体カエルになった。
――ま、まさか!!効いてるの?!!!!
この瞬間、画面が白くなり街に戻された。コアタイムが終わったようだ。
トードが効くとわかっただけでも儲けものかもしれない。
それぐらい敵は強そうだった。
軍師様はいつでも流石だ。
◇ ◇ ◇
製作者さん、製作者さん、一日お間違えではないですか?
もう、仕方ないなぁ。ちゃんとテストプレイしておいてよー。
まあでも、私だってレベル上がってますからね。
仕方ないですね。一回だけですよ!
「ダブル土曜日!!」私は古の呪文を唱えた。
ふっ。これで完璧……。
――開発中のサーバーには曜日の概念はありません。呪文は無効化されました。
( ゜д゜)えっ!?
そ、そうだった。このサーバー、そんな設定だったこと、忘れてた……。
このままでは、もう一週続いてしまう!
すぐに終わらせて、ムフフな展開を書くつもりだったのに、このままでは書けないじゃん!
いやいや、待て待て。あせることはない。
今までだってこんな危機を乗り越えて、10万文字を超える作品になったのだから。
落ち着いて第五章をもう一度読んでみよう……。
この状況を何とかするヒントが何かあるはずだ。
……。あれやっぱり第五章は曜日が書かれていない……。
これでは古の呪文は使えない……。
それに、第五章になってからどことなく雑な印象を受ける……。
打開できそうな何かはどこにも書いてない……。
ま、まずい。
第四章までは、もう少し細かく書いていたはずだ。
曜日にしても、長浜城にしても、魔王の手を振り上げるポーズにしても……。
わざわざ意味深に細かく書いていたはずだ。
それがなぜか後々、伏線として回収されて、それっぽい作品になってきたのに……。
ピレなんちゃらという名前の由来だって、もちろん後付けだ。
残る謎は、AYATOが何の科目の先生か?ぐらいのはずだった。
それが、この章になって雑になっていた……。
小人の様子だって街の様子だって、普段ならもっと書いていたのに!
これは、完全に私の落ち度だ。いや、花粉のせいだ!
えっ、花粉はそろそろ違うだろって?そ、そうかも。
今から私ができることはあるか…?
ど、どうしよう……。仕方がない……。
私は、何が起こるかわからない古のコマンドを思い出した。
こういう時にぴったりのコマンドだと思った。
私は、STARTボタンでシステムを停止し、コマンドをつぶやきながら入力し始めた。
「うえうえしたした……」
「↑↑↓↓←→←→BA」と入力した時に、画面に異変が起こる……。
あれ?……。もしかして、これ……、じばくコマンド……。
◇
おお。○○しゃよむよみよ。
〇んでしまうとは なさけない。




