第六十話 オープニング
今日は二日目。
私たちのコアタイムが近づくと、いつも通り仲間が集まってくる。
ゲームの時間だ。
「うす!」
「やっほー」
「こんにちは!」
「こんばんは!」
軽い挨拶の後、皆でログインした。
画面が突然暗くなる。
ムービーが始まった。
「オープニングかな?」
「みたいだね」
静かな音楽が流れ、街の子供たちが遊んでいる。
とても豊かでのどかな街のようだ。
突然、音楽が止まったかと思うと、「ゴォォォォオ」という地響きが聞こえてくる。
画面は子供の不安そうな顔から離れ、そのまま振り返り音の方へ向かっていく。
音の発信源の元へ鋭い速さで向かっているようだ。
小道を曲がり大通りへと抜けるとどんどん加速していく。
人通りが多い。なめらかに高度を少し上げて、先へと急ぐ。
違和感のある空間を映し出すと、画面は少し引いて平原の様子を映し出した。
動物は異常を感じ取り、一目散に逃げ出している。
画面中央に映し出されている空間は、怪しげな黒いオーラを放っていた。
「ピキッ、ピキッ」放電音を響かせ、何も無い空間が扉のようにゆっくりと開いていく。
扉の奥の漆黒の暗闇から巨大な手が現れ、そして、姿を現した。
「魔王だ」私は思わずつぶやいた。
整った顔立ちに二本の角、体は黒いマントで覆っているようだ。
「ほう。悪くはなさそうな場所ではないか」
魔王は辺りを見回すと、そうつぶやいた。
「まずは、じゃまなあれをつぶそう」
マントから手を出し、指を鳴らした。街の一角に炎が上がる。
「何事だ!」
ギルドにいた私たちは街を飛び出し、魔王に対峙した。
「ほう。我の邪魔をしようとするか。
ならばまずはそなたからつぶしてくれようぞ」
突然、戦闘が始まった。
初日にレベル上げをしていたとはいえ、今日の準備は全く整っていない。
ゲームの冒険ごとにレベルが下がる仕様もあり、魔王の強さに歯が立たない。
私たちはあっさり敗れた……。
「ふふふ。我にかなうわけなかろう。
ふむ。気に入ったぞ、この時代。
我はこの時代の覇者となろう」魔王は高らかに宣言した。
「ただ、少し魔力を使いすぎたようだ。
これが時空酔いというやつか。
ふむ。落ち着くまでしばらく見て回ることとしよう」
魔王はそう言い放つとどこかへ行ってしまった。
「ゲームはまだ、続いているみたいだな……」
「ああ、負けイベントってことだな」
「ええ、流石に強すぎるわ……」
負け戦のあと、私たちは街の様子を確認した。
もしかしたら、何かイベントが進行するかもしれないと思っての事だ。
ただ、街の人たちは「大変だ。大変だ」と慌てているだけで、何も起きなかった。
一応東の塔に向かったのだが、やっぱり門番に阻まれて入れなかった。
いつも通り、レベル上げを20分だけして、二日目を終えた。
通常は、日曜日は結果発表みたいなお祭りだから、6日間の行動で結果が決まる。
昨日、四つの塔があったことを確認した。
きっと一日一つ、塔を攻略するのだろう。
この時の私たちにはまだゆとりがあった。




