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第6話 原作主人公


 平民出身のクラスメイト、リオン。

 ちなみに平民だから苗字はない。

 

 イケメンの外見なんてクソほどどうでもいいけど、さすがにこのリオン少年については、今後、俺と関わる機会もそれなりあると思われるので、最低限の外見的特徴を覚えておくことにしよう。席も後ろなことだしな。


 髪は青色で、すこし癖毛ぎみ。

 身長は俺より頭半分くらい低いか?


 顔立ちは当然のようにイケメンなのだが、ややショタっぽい印象なのに加えて、全体的に薄味というか、クセのない淡白な印象を受ける。

 そして純朴というか、人を疑うことを知らないと言うか、もっと言うなら、ちょっとこう、田舎くさいというか。

 

 この感じ、犬だな。

 そう、動物で例えるならポメラニアンだ。

 全体的にリオンは犬っぽい。


 とにかく、このリオン少年こそが、このゲーム世界の主人公である。

 つまり、本来の俺の役割は、ゲーム序盤にリオンに因縁つけて突っかかって、ボコボコに叩き潰されることだ。


 そんなのまっぴらごめんだ!

 原作知識を活かして、逆に主人公を叩き潰して、ヒロインを根こそぎかっさらってハーレムウハウハひゃっほーい!


 ……なんていう、日本男児が寝る前に見る、清く正しい妄想が、本来の悪役転生ジャンルというものなのだが、何度も繰り返すとおり、この世界はBLゲー世界である。

 

 かっさらうべきヒロインが、いない(慟哭)。


 唯一の例外は男装ヒロインであるアシュレイなのだが、原作ゲームでは、アシュレイは二周目に登場する隠しキャラだ。

 だからリオンが並み居るメインキャラをかきわけて、わざわざアシュレイルートを選択するとは、ちょっと考えにくい。

 

 というわけで、リオンとは必要以上に敵対する必要はない。

 むしろ敵対するだけ、原作ルートという名の、神の見えざる手で、俺の破滅が近づくだけだ。

 

 コイツとは、ほどほど仲良くやっていくことにしよう。


「――よし、これで自己紹介は全員終わったな。それじゃ次は寮についてだ」


 なんて、リオンのことをあれこれ考えていたら、いつの間にか話が進んでいたらしい。気づけばリド先生が寮についての説明を始めていた。


「知ってのとおり、本校は全寮制だ。お前らが所属するのはクラス名と同じくマギナ寮。部屋は二人一組で生活してもらうことになる。いまからその振り分けを発表していくぞ」


 教室内がざわつく中、リド先生が、ペアとなったクラスメイトの名前を順番に呼んでいく。

 その間俺にできることといえば、アシュレイと同じ部屋にしてくださいと、ただ女神ユースティティアに祈りを捧げることだけだった。


 そして――


「次、グレイ・ブラッドレイと――」


 きた!

 俺の名前!


「リオンだ」

「…………」


 祈り届かず。

 残念ながらアシュレイとは別室になってしまった。

 

 まあ、残念だけど仕方ない。

 もしアシュレイと同室になってたら、本当は女の子の彼と、壁一つ隔てるものない中で二人っきりになっていたわけで。


 そんなの理性が持つわけないだろ、いい加減にしろ!


 というわけで俺の同室相手は、リオンに決まった。

 よくよく考えてみれば、この振り分けは、案外悪くないかもしれない。

 

 なんたって彼はこの世界の主人公。


 つまり、これからメインキャラのイケメンどもは、彼をめぐって、バーリトゥード(なんでもあり)の恋愛イカゲームを繰り広げることになる。

 そうして生き残った、ただ一人のイケメンを、リオンくんは選び取るわけだ。


 そう、リオンは選ぶ側。

 

 その点、俺はこの世界においては取るに足らないモブキャラなわけだから、リオンくんがそんなメインキャラ共を差し置いて、俺を狙いにくる確率はゼロに等しい。


 つまり彼と同じ部屋になったことで、同室のイケメンに迫られるという、貞操の危機は脱したことになるのだ。


 うん、悪くないんじゃないかな。


「……というわけで、同じ部屋ってことで、これからよろしくな」

 

 俺はリオンの席の方に振り返って、小声で挨拶する。

 リオンはちょっとだけ驚いたような表情で、俺の顔を見返した。


「よ、よろしく……グレイ、さん」

 

 リオンは俺に対して、おっかなびっくりな感じだ。

 まあ、俺の悪評は平民出身のリオンの耳にも届いていることだろうから無理もない。


 ただ、同じ部屋のルームメイトにいつまでも恐縮されっぱなしっていうのも、やりにくいから、ちょっとずつでも打ち解けていきたいところだ。

 

 安心してくれ、リオン。

 原作と違って、俺は悪い悪役貴族じゃないよ。


 


 

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