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南藤に春がきた。
「で、なんやねん」
僕と翔子と雅は、放課後に、南藤の家に集まっていた。
家というより、館。
館というより、豪邸だった。
美夏の時と同じくらいの。
どうしてこう僕の周りにはお金持ちが多いかな。
類は友を呼ぶというけど(っていうか友なのか?)
僕の家はお金持ちなんかじゃないのに。
「皆の衆!きいて驚け!ついに!僕たんに春がきた!」
「――てことは」
翔子が目を見開く。
「そうさ!僕たんに彼女ができたのさ!」
マジでか。
南藤好男に先を越された・・・。
かなりショック・・・。
「で、今日集まったのは、皆の衆にいちはやく彼女を見てもらいたいからさ!」
南藤がコホンとわざとらしく軽く咳払いし、扉に目を遣った。
「では、登場なのさ!」
――なんか、テレビ番組みたいだな。
扉がゆっくり開く。
黒髪と少し紅色に染まった色白の肌が遠慮がちにのぞく。
控え目にそこに佇んでいるのは、
紛れもないディスプレイにうつっていた大和撫子だった。
「早川小毬です」
早川さんがにこりと可愛らしく笑った。