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離れていく美夏。
「私、アメリカ行くの」
突然見夏の口から出た言葉に、僕は「へ?」としかいうことができなかった。
「えっ、ちょ。旅行、だよね?」
静かに首を振る美夏。
「むこうの学校に留学すんの」
「うそ・・・」
一瞬、目の前が真っ白になった。
「こないだそれを言おうと思ったんだけど」
「・・・んで」
「え?」
「なんでそんなところに行くんだよ」
美夏が離れていく―――。
手の届かないところに。
「・・・翻訳家になりたいのよ」
「外国に行かなくたって、勉強はできるだろ・・・?」
「怖くなったの」
「え?」
「変わらない気がしたの、このままじゃ。悪い方へも良い方へにも」