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南藤の恋患い。
「おい、カズ!南藤、なんかおかしいねん!」
僕に教室に入った僕に、北山が汗を垂れ流して慌てた風に南藤を指さした。
「へ?いつものことじゃない?」
「いつもより、や!!」
確かに。
顔は紅潮し、いかにもぼーっとしている。
僕は南藤に歩み寄って、声をかけた。
「お~い?大丈夫」
「どしたの?」
いつの間にか翔子が背後にいた。
いつものように抱きつかず、ただ僕の肩越しに南藤を見ているだけだが。
「なんか、南藤が変でさ」
「いつもじゃない?」
言う事同じだっ!
******
「たしかにねぇ」
翔子が、南藤の顔を覗き込んでも、そのままニヤけている。
いつもの南藤にそんな事をしたなら、なんらかのリアクションをとるはずだ。
翔子が南藤の肩をゆらした。
「はっ!」
あ、気付いた。
「しょ、翔子様ぁああ?!」
驚きすぎだろ。
南藤は目を見開いて、そしてばつのわるそうに少しうつむいた。
子どもが親に嘘を付いたときのように。
「な、なに?」
「す、すみませんん!翔子様を一生愛すと誓ったのに・・・のに、他の娘を想っているなんてぇえ!」
まさか南藤に限ってそれはないと思うが・・・
こ、恋患い?