早退と慶太郎。
「美・・・じゃなくて軽山田さんいないすか?」
それから放課後に、僕は3-5の教室を覗いて、一番扉に近い奴に話しかけた。
「午後から熱で早退してたけど・・・」
「まじで?!」
またかよ、大丈夫か・・・?
「ありがとう!」
僕はそう言い残して、走って学校を出た。
行く先は、勘の良い人じゃなくてもわかるとおもう・・・たぶん。
――美夏ん家だ。
息が切れて、足が鉛のように重くなった頃、美夏の家の前についていた。
緊張と疲労で震える指でチャイムを押す。
三十秒くらいして、二十代後半の女の人が出た。
多分お手伝いさんじゃないだろうか。
「どちら様でしょうか?」
「えっと、西山といいます。み、美夏さんのお見舞いに来たんですけど・・・」
「お嬢様なら、お友達と部屋におられますよ」
友達―?
誰だろう?
門を開けて、美夏の部屋まで来た。
そういえば初めてか・・・。
あ~・・・ドキドキしてきた!
ドアから話し声が聞こえる。
ここからだと、『声』ではなく『音』としか聞き取れない。
「お、おじゃましまーす」
扉を開けると美夏と向かいあわせで座っていたのは――
「慶太郎?!」
慶太郎がこっちを振り向いて、目を見開く。
そして顔が『驚き』から『怒り』に変わった。
「何、お前は人の彼女の見舞いに来てんだよっ!」
僕の胸ぐらを掴む慶太郎。
その手は怒りで、わなわな震えている。
美夏は冷えピタを貼った額に汗を浮かばせながら、心配そうに僕と慶太郎を交互に見る。
「別に見舞いくらい、いいだろっ!」
僕も負けじと言い返した。