第一週:時間旅行とオリンピック(月曜日)
キム=アイスオブシディアンは、その祖先は韓の国の人である。曾々々祖父のキム=オブシビダンは、地球五カ国共同連合の事業計画・予算評価部の部長にまで上りつめた人で、例の『えっ!そんな簡単なことで良かったの?タイムトラベル問題』においては、星間連合派遣団の副団長を務めた人でもあった。
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一応、ここで、ご存知ない読者の方のためにも『えっ!そんな簡単なことで良かったの?タイムトラベル問題』について、少しばかりの補足をしておこう。
難しい話は端折るが、現在と云うか遠い未来においても、時間旅行には多大な予算とエネルギーが掛かるのが相場とされていた。
それと云うのも、銀河中の知的生命体という知的生命体はどいつもこいつも『時間旅行をするためには光の速さに近付かなければならない。または超えなくてはならない』と云う固定観念をこの三十二億年ほど捨てられていなかったからである。――まあ、例外としては、オオツタハコバツバメバチのメスが速度とはまったく関係のないタイムトラベルを行っていたのだが、このことを銀河の知的生命体達が知るのは宇宙の終わり(*ずっと後に後述)が直前に迫ってからのことだったりする。閑話休題。
で、まあ、その三十二億年の固定観念を覆したのが、当時星間連合に登録したばかりの発展途上惑星・地球であったと云うのだから、星間連合と云うか銀河と云うか宇宙中が上へ下への大騒ぎ――になるはずだった。
と云うのも、この地球と云う惑星は、星間連合登録当時においても、星内の統一すら出来ていないと云う野蛮極まりない惑星であり、「ちょっと過去まで飛んで銀河の歴史無茶苦茶にしてくるわ」と言い出すバカが出て来てもおかしくない――と、星間連合本部は考えていたからである。
(続く)