四章 第五話 シーン3〜4
3
ツリーランドの新たな王城は前王城と離れた場所にある。元々の王城は聖樹により、破壊され修復出来ないからだ。
その新たな王城の前方に、旧式の鉄機兵が立っていた。しかも数はたったの三機である。これが『ゼイガスの後継者』──彼等の持てる全戦力だった。
一方ツリーランドの鉄機兵。及び、守護機兵がそれを囲む。当然こちらは数十機。戦力比は比べるまでもない。
だがにらみ合いになったのは、ヘイザーが捕らえられて居るからだ。しかし騎士団は敵には下らず、かと言って攻撃もしていない。殲滅するのは容易だが、それでは──ヘイザーは死ぬだろう。
と、言うワケで一日経った朝。ガルグは城の前を訪れた。しかもランクルにトランクスと言う、超絶なる軽装備状態で。夏でなければ風邪をひくところだ。
「つーわけで、まあ行ってくる」
「ご武運を祈ります。レグス王」
ガルグは騎士から見送られ、王城に向けて歩き出す。
「待て。まず私が確認する」
すると一人の男がやって来て、ガルグの無手を触って確かめた。
「お前らの言った通り、こんなんだ」
「貴様は暗殺者だと聞いている」
「元だ。今は狩人になりたい、しがないレグスの王様だ」
ガルグは一応皮肉を言ったが、相手は乗るつもりも無いらしい。
無言でガルグの後ろから、ガルグが歩くように促した。
「えーと、確かお前がススケルか?」
「そう。私がススケル・マスダンだ」
そしてガルグは遂に対峙した。この騒動を引き起こした男。フレイドの孫のススケルに。
彼はレイランドの大臣だった、フレイドの家の人間だ。おそらく部下も貴族崩れだろう。
「なるほどな。で、ヘイザーは?」
「知っているだろう。手の平の中だ」
ススケルは親指でそこを指した。
封印を解かれたヘイザー王だ。彼は機兵の右手に握られて、いつでも潰せるようになっていた。
「人質が板に付いてるな!」
「お前も皮肉が衰え知らずだ!」
ちょっと遠いので二人共、皮肉を大きな声で言い合った。とは言えこれだけ声を出せるなら、少なくとも無事だと言う事だ。
「どうせ二人共殺すつもりだろ? だったら少し話していかないか」
そこで、ガルグはススケルに聞いた。
「引き延ばしか?」
「いや本心だ。どうするかはお前に任すけどな」
ガルグ的には情けをかけている。無論、相手が乗ってくればだが。
「良いだろう。話すだけ話してみろ」
幸い、ススケルは乗ってきた。
「なんでこんなことしやがった。仮に俺らをぶっ殺したとして、その直後に制圧されるだろ」
「しかし我らの意思は届くはずだ。民衆に。そして我らが子らに」
「死ねば終わりだと思うがな」
「ハーフのお前には解らんだろう。そうやって人は意思を繋ぐのだ」
ススケルはガルグに対して言った。
ガルグには理解不能だが、そう言う考え方もあるだろう。
「そうか。じゃあ目標達成だ」
「ああ。目的は果たされた。後は貴様らを殺るだけだ」
ススケルが殺害を指示するため、右手を上へと挙げかける。
しかしガルグにも策はある。そして彼等と違い、死ぬ気も無い。
刹那、黒い影が横切って──機兵の腕部をもぎ取った。巨大な獣。それはルルである。猫型魔獣であるルルは、巨大な姿になれるのだ。
さらに同時に空から稲妻が、降り注ぎ機兵達をなぎ倒す。これは白竜レイレリアであった。こちらも小さくなれるので、隠れておくのにワケは無い。
最後にガルグ近くの敵兵は──
「よっと」
魔力を纏い体術で、ガルグは彼等を蹴散らした。無論リーダーのススケルも。
「触媒無しで……いったいどうやって?」
「触媒ならあるぞ。この通り」
ガルグが口を開けるとその中に、小さくて丸い玉がある。それこそ魔法の触媒だ。
「次に暗殺者を調べるときは、ケツの穴までしっかり調べとけ」
「だが……」
「目的は達成だろう? それでも俺は差別を止めさせる」
「何故だ?」
「理由は二つある。一つは単に死にたくないからで、もう一つはなりたくないからだ。お前らみたいなゲス野郎にはな」
ガルグは言うとススケルを蹴り上げ、その首を風の刀で斬った。
こうして後継者の騒乱は、たったの二日で制圧された。
4
取り返したばかりの王城は、現在罠が無いか調査中。
と、言う訳でガルグとヘイザーはその近くにある会議室に居た。
「まさか私を助けに来るとはな」
「当たり前だろ。今死なれちゃ困る」
ガルグはヘイザーに返事を返す。
とは言え被害が無いワケではない。
「しかし部下を何人か失った。特に忠誠心の高い者を」
「なら次からはもっと上手くやれ。俺も努力する。一応な」
それでもガルグは悔やまない。悔やんでもどうにもならないからだ。長生きしていれば自然と悟る。無論反省はするのだが。
そもそもこんなことになったのは、ヘイザーの手落ちとも言い難い。
「まあ聞けよ。ヘイザー。来る途中、アズマ達の方に動きが有った」
「帝国が糸を引いていたんだな?」
「それもあるが、情報が得られてな。落ち込んで泣く前に聞いておけ」
ガルグは解説し始めた。
この一日でアズマ達の方に、何が起こって何を知ったのか。
第五話終。
感想評価お待ちしております。




