四章 第五話 シーン1〜2
1
長い時を経てしこりがほぐれ、和解に至ることもあるだろう。しかし逆に新たな憎しみや、恨みが生まれることもある。
講習会から一夜明けた朝。ツリーランド王城の一室で、男は腕を組んで立っていた。皮鎧を着込んだ人間の、整った顔立ちをした男。その目の前には金属の──塊が無音で佇んでいる。
「ふ。これが国王の末路とは。いや、封印は慣れているのかな」
男はその塊に問いかけた。しかし答が返るはずも無い。
と、そこに彼の部下が現れて男に向かって報告を上げる。部下も男で皮の鎧を着た、まだ若い兵士風の人間だ。
「ススケル。王城は占拠した」
「だろうな。頭を失ったのだ。抵抗しない者は……」
「わかってる。俺達は暴徒とは違うからな」
「そうだ。我々には理想がある」
ススケルと呼ばれた男は言った。
すると部下はススケルに問いかける。
「ところでヘイザーはそれで良いのか。封印魔法で固めてあるが……」
「この男は腐っても人間だ。それを捕まえて殺したところで、我らの理念は広まらん」
ススケルは鉄の塊を睨み、その上で部下の問いに返事した。
「なるほど。流石ススケルだ」
「この男はクサビだ。変わり行く、この世界を繋ぎ止めるためのな」
ススケルは腕を組んで呟いた。
2
その日の夜。レグスの会議室。
石で作られたその部屋に、ガルグはリリエとアズマを呼んだ。もっともまだ彼等は森の中。ムース・コロニーに留まっている。よって通信魔法を利用した、半透明体での参加である。
ガルグはその二人に現在の、ヘイザーの状況を説明した。
「と言うワケで、ヘイザーが捕まった。ツリーランド王城は占拠され、騎士団は城を包囲して待機。絶賛にらみ合いの最中だ」
そのまとめがこの発言であった。
「ふん。奴も存外に情けない」
「おいアズマ。そいつは酷いだろ。ヘイザーだって努力はしてるんだ」
ガルグはアズマの文句に言った。
大体ガルグ達が妖怪で、ヘイザーは十分に秀才だ。とは言え捕らえられてしまっては、言い訳にもならない気もするが。
それにもう一つの要因もある。
「ですがガルグ様。何故ですか? ガルグ様なら傀儡を利用して、計画を察知していたのでは?」
「傀儡も無限じゃねーんだよ。最近帝国側に出し過ぎて、領地側が手薄になったんだ。それでも俺が気づけなかったのは、手落ちとしか言いようがないけどな」
「えと、つまり……」
「半分俺のせい」
ガルグはキッパリ言い切った。しかしくよくよと悔やんではいない。
それよりやるべき事をやる。それが生き残るためのポイントだ。
「つーわけで奴を取り戻す。『ゼイガスの後継者』によるとだな、交換の条件はこの俺だ」
「行く気だな?」
「正解。流石アズマ」
ガルグはアズマを素直に褒めた。あっちは苦々しい表情だが、ガルグとしては知ったことではない。
「無論、作戦はちゃんとある。お前らはそのままで待機しろ。帝国がこれに噛んでいるのなら、おそらく動きが有るはずだ」
ガルグは二人に本題を告げた。
つまりヘイザーを助けるために、ガルグがレグスに向かって動く。するとその穴を埋めるため、リリエとアズマがレグスに向かう。ムース・コロニーに穴が開くわけだ。
それを防ぐのがガルグの狙い。つまりこの会議の本題である。
「心配するな。死ぬ気はねーからな」
ガルグは言って部屋を出た。
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最近寝坊気味ですみません。




