リディはメリルに懐かれたい
「あれ? 今日は大勢で来たねぇ?どうしたの?」
「デズロさんに聞きたい事があって・・・あ、アースポント?」
「そ、あとはテストしてみて、問題無ければ完成だよ?で? 話って何かな? 」
早い。もうあの、アースポントが出来上がるなんて。
確かに言われた材料を調達するのは早かったが、こんな簡単にこんな物作ってしまうんだな、この方は。
「デズロさんって、お姉ちゃんの本当の父親なの?」
「そうだよ? メリルとティファは知らされてなかったもんね? 誰から聞いたの? リディ?」
「ナシェスです。今、宮廷に来ているそうですよ?」
「え? そうなの? おかしいなぁ。僕会いに行くって伝えたつもりだったんだけどぉ〜?んー?」
やはりな。
ナシェスを勝手に連れ出した者がいる。
全く、勝手な事をしてくれる。
「なんでそんな事に?なんで お姉ちゃんも連れて行かなかったの?」
「私が置いていけと言った。デズロとティファを引き裂いたのは私だ」
私は、デズロ様がここからエルハド様に連れ去られたとしか聞いていない。だが、多分それは真実とは少し違うのではと思っている。デズロ様がここからいなくなったのは、私の祖父ベルシャナ・ディムレムが殺されてすぐだった。
「・・・・貴方が、殺したのですね? ベルシャナ様を」
「そうだ。あの男を殺しデズロを連れ去った。そして、デズロが逃げられないよう、我が国に閉じ込めた」
「何故、そこまで? そもそも、なんでデズロさんを?」
「・・・我が国に聳え立つ大きな大樹を知っているか?」
知っている。
何千年も前からサウジスカルにある大きな巨木。
あれは精霊が宿っているのだと各国で囁かれている。
「実は、ここだけの話あの大樹が原因で我が国は大きな損害を受け続けて来た。恐らくあの木には、精霊が宿っている。だが、何故か昔から私達皇族はあの木に嫌われていてな」
「精霊に嫌われる? 精霊が人を嫌うなど、聞いたこともありませんが? 一体どうしてそう思うのです?」
「何故か昔から我等レインハートがあの木に触れるとおかしくなる。聖人君主の様な人格者が突然人を傷つけ悪政をしいたり、自分の欲望のみを優先し、動き出したり、つまり誰かに乗っ取られた状態に陥るのだ」
な、なんだそれは。
それではまるで、私の祖父の様な人間が突然現れるという事か?あり得ない。
「問題はそれだけではない。あの大樹は定期的にあの国から魔力を大量に吸い上げる。それをされてしまえば国民の大半の生活が立ち行かなくなる。その度に我々はその対策に追われていた。ここはうちの国よりも状態が悪化しているから、理解できるだろう?私はそれをなんとかする為に幼い頃からデズロを探しに、この国に度々足を運んでいた。大樹が、デズロを求めたからだ。私は、そう思っている」
「大樹が求めた? なんッスか?それ」
「エルハドの前の皇帝がねぇ? 会った事もない僕の名を毎晩呼んだんだってさ。僕を連れて来い、大樹が僕を求めてるって」
そんな事が本当に起こり得るのか? いや、では?
「お二人は、ここで出会ったのですか? この宮廷で」
違う。それにしては、この二人の距離は近すぎる。
「いや、私達はここで引き合わされる前から知り合いだった。お互い身分は隠していたがな。ここでデズロを紹介された時は、正直悪夢かと思ったぞ。なんとかあちらに連れて行こうと長年苦労していた相手が、既にカスバールの皇帝の手に落ちていたのだからな」
「落ちてないけど? 僕はその時メリルの母親から親友を助けて欲しいと頼まれてここに潜入してたんだよ? だけど、僕の考え、かなり甘かったんだよねぇ」
それはそうだろう。
よく、そんな危険な事を。
ベルシャナは想像を絶する狂人だったと聞いている。
「・・・・それで、お姉ちゃんのお母さんは結局どうなったの?」
メリル。
それを尋ねるのだな? 答えがわかっていて、なお。
「殺されたよ。僕の所為で。そして、僕は死に損なった」
「・・・・そうなんだ。思ったより重い内容だったわ」
メリル、お前大丈夫なのか? こんな話を聞いて。
お前は辛くないのか?
ん? テット?
お前、さり気なくずっとメリルの手を握ってるな?
お前達いつの間にそんなに仲良くなった?
ラフィネラが驚愕の顔でその手をガン見しているな。
話に夢中で気がつかなかったぞ。
「そっか。確かに皇帝を殺して追っ手から逃げるのに赤ん坊は連れて行かないよね。そもそも、面倒が見れないもんね」
「ああ。それに、お前の集落にはティファの母親の父親、ティファの祖父も居た。無理に連れて行くよりもその方がティファの為になると思った。勿論彼の為にも」
「・・・・・祖父?」
「そうか、メリルは知らなかったのか。お前の集落にはデガルドという男がいただろう? あれが、ティファの祖父だ」
おい! メリル? 何故突然震えだす。
「・・・・・あっ・・・・・・」
「メリル? どうした? 大丈夫か?」
「どうしたのメリル? 何か、気になる事でも・・・」
「うっ・・・・ううううっ」
何故泣き出すんだ? 泣く程メリルにとって辛い内容だったのか? 今のはティファの話では?
「うわーーーーーーーーん!!」
「メリル!」
何故号泣? お、おいテット? お前なんで抱きつかれてるんだ? なんかモヤモヤするぞ。
「うえーーーんえーん」
「メリル。すまない、何か、泣き出す程辛い内容だったか? デガルドが、どうかしたのか?」
あ、そうか。デガルドか。
確かにその人物の名を聞いた途端おかしくなったな?
「おね・・・ちゃん・・ひくっ・・その人に凄く・・懐いてた・・・」
「そうなんッスね? なんすか? 嫉妬で泣き出したんすか?」
お前、いくらなんでもそれはないだろう?
・・・ないよな?
「どう・・しよう。ひっく・・・わたし、おねえちゃんに・・ひどい事した。だって何も知らなかった。ひっく・・・お姉ちゃんと血が繋がってなかった事も、デガルドさんの、事も・・・。でも、お姉ちゃん気付いてたのかも」
「デガルドが、自分の祖父だと?」
「だって・・お姉ちゃん、あの人の前でしか笑わなかった。ひっく・・・それなのに、デガルドさん、お姉ちゃんの目の前で殺されちゃったの」
確かにティファは笑わない女性だった。
初めて彼女を見つけた時も、ここにいた間ずっと。
「多分それがキッカケでお姉ちゃんあそこを出たんだと思う。私が・・・私ガァ・・・ひどい事言ったからぁ・・・・びぇーーーーー!!」
メリル、本気で泣くな。
本気で子供みたいに泣く女性を私は初めて見たぞ!これは、凄い光景だな。対応に困る。
「・・・テット。僕にメリルを貸して?」
「え? 嫌ッス」
「大丈夫。何もしない。落ち着かせるだけだから。僕これでも二人の子供のお父さんなんだよ?はい、よいしょっと」
「びぇ?」
この人凄いな。
子供というには大きすぎるメリルを子供みたいに抱っこしたぞ。そしてあやしだした。
「よーしよし。大丈夫大丈夫。ティファね、別にメリルの事怒ったり恨んだりしてないよ? 二人共勘違いしてただけ」
「かん、ちがい?」
「ティファはね?ずっと自分は家族のみんなに好かれていないと思ってたんだ。何をやっても皆を喜ばせる事が出来ないって。でも、メリルに会って分かったよ」
「何が?」
そうですね。確かに大いなる勘違いだと思う。
人に関心を示さないメリルが異常なほど執着をみせているティファを愛していないはずが無い。
「何って、メリルもティファが大好きだって事だよ? 僕ホッとした。ティファはちゃんと君達に愛されていたんだね?ありがとう。僕の娘を愛してくれて」
「・・・何それ! 当たり前だし! 家族だし! 血の繋がりとかどうでもいいしぃ〜」
「あはは! うん! そうだよね? 僕もその意見には賛成だよ? メリルとは気が合いそうで良かったぁ」
大分泣き止んだのでそろそろ下ろして下さい。重いでしょう?なんなら私が引き取ります。デズロ様。
「・・・陛下、テットさん。同時に手を差し出さないで下さい。わざわざ抱っこして差し上げなくてもいいです。この人もういい歳の女性ですから。子供ではありませんからね?」
「おやおや?」
いや、そうなんだが。
なんだろうな? 変な対抗意識がメラメラと。
まさか、母性本能? 私は男なのに?
ただ一つ思ったのは、私よりテットがメリルに懐かれているのが妙に納得いかない。
お前達、最近まで険悪だったじゃないか!
二人に何があったのか、とても気になるぞ。
今度問いただしてみよう。
あくまでそれは、今後のメリル対策の為にだからな?




