ナシェスは意味が分からない
「相変わらず勝手な行動が多いなお前は。リディの許可なく此処へ来てしまうなど、あってはならないというのに」
なんだそれは。
私はデズロ様が私をお呼びだと言われたから来ただけだ。
久々にこちらに来たから、父に挨拶でもと立ち寄っただけなのに何故非難されるのか、全く理解が出来ない。
そもそも、私は何故あんな所に閉じ込められるのか。
確かに私はティファを取り返す為にサウジスカルへ戦を仕掛け自らも国境付近まで赴いた。
そして部下にティファを連れて来させた。
しかし、貴方も同じ事をしていたではないか。
デズロ様を取り返す。その為にサウジスカルと何度も戦争を起こした。
それなのに、何故私だけ悪者なのだ。
「貴方は何も聞かされてないのか? 私はこちらに呼ばれたのでは?」
「何をまた訳の分からない事を言っている。そんな筈無いだろう。一体誰がそんな事を言うというのだ」
?確かに報せが来たのだが?そして迎えも・・・。一体?
「ナシェス様。デズロ様が貴方様をお呼びです。どうぞご一緒にお越し下さい」
「ああ。今行く」
やはり呼ばれたのではないか。
全く父上も少し会わないうちに呆けられたものだ。
しかし、デズロ・マスカーシャが今更私に何の用だ?
私が前に会ったのは確かあの牢屋から出される時だった。
あの時もよく分からない質問をされて、何故かその後殺されずに此方へ返されたのだったな?
結局あの質問は何だったのだろう?
「やぁナシェス! 久しぶり〜相変わらずキラキラしてるねぇ? どう? 少しは反省した?」
これはやはりトドメを刺しに来たか。
人の国で自由だな?
まぁ、私も簡単にはやられはしないが?
「何を反省すべきなのか見当もつかないが? 私の愛がティファに届かなかった。ただ、それだけだ」
何故だろう。
ずっと皆、私の発言を肯定し続けて来た。
私の考える事、する事が全て正しいのだと。
だがある日を境に少しずつ否定されるようになっていった。いつからだろう。
「そう。まぁ、でも想定内の範疇だ。ラットとエリスは元気にしてるよ? 最近はふっくらとしてエリスがぼやいてた。あはは!」
「ラット? エリス? ・・・・誰だそれは」
なんだ? 何故笑う? 気持ちが悪い男だ、相変わらず。
「・・・君の代わりに置き去りになった君の元部下達だよ? 覚えてないの?」
「・・・ああ! あの二人か? 覚えているぞ。だが、私の手を離れた者の名を一々覚えてはいない。意味がないからな?」
コツコツコツコツ。
「おい。デズロ」
ダァアアアン!!
「ーーーーーーッ!」
なんだ? 今何が起きた? デズロ様が私の前まで歩いて来たところまでは見えていたのに・・・・。
「覚えろよ。お前の事を命をかけて守ってた子供達だよ。未だお前が迎えに来るかもと、少ない希望を糧に必死に去勢を張って生きている小さな子供だ。何故僕が君を生かして此処に返したか分からないの? あの子達の為だよ。あの子達が生きる為に必要だったからお前を此方へ返した。じゃなきゃ誰が許すか、愚か者が」
こ、いつ。まるで、人が変わったみたいに・・・この、私を足蹴にするとは・・・。
「可哀想だねナシェス。お前はベルシャナに似ている。容姿も頭脳も人より優れているのに、お前は人として重要な部分がゴッソリ抜け落ちている。自分がする事の何が悪いのか、お前には理解出来ないんだろう?」
「・・・・・な、にが、私の、何が間違って、いると」
「人の痛みを全く理解しようともしない。お前はティファの足を斬り落とそうとしたよね? それがどれだけ痛いか知ってる? 分からないなら今すぐ君で試してあげる。君がただ、ティファを自分の手元に置く為だけにしようとした事が、どれ程人に痛みを与えるのか、身をもって知ってみろ」
な、んだと! コイツまさか・・私の足を此処で斬り落とすつもりなのか? この変人め! 誰か、止め・・・・。
・・・・・なんだ?
何故、皆そんな目で私を見る?
そんな、憐れむ目で・・・・。やめろ! 不愉快だ!
だったらいっそ今直ぐ私を殺すがいい。
私はもう、此処には必要ないのだからな!!
「デズロさーん、もう一つ聞き忘れた事が・・・あれ?」
「メ、メリル様!?今入って来ては駄目です! 後にして下さい!」
メリル? ああ、あの女か。ティファとは似ても似つかないヒョロヒョロ女。お前も私を見下していたな。
「何? ナシェス説教中なの? 何か悪い事したの?」
「そうだね? ティファを攫って足を砕こうとしたよ? 阻止したけどね?」
おい。
この状態のまま放置するな。
そしてメリル貴様、覗き込んでくるな!
「へぇ? お姉ちゃんの足をねぇ? それでお姉ちゃんやり返さなかったの?」
「拘束されたまま口に食べ物を押し込まれて罵倒されたんだよね? それで新しい扉が開いたらしいよ? 良かったね?」
確かにあれは癖に・・・ではない! そんな訳あるか!
そうだ! 散々だったぞ!! と、いうかそれはもういい! サッサと終わらせろ!!
「・・・・・・へぇ。・・・ねぇ。この人殺すなら私にくれない?」
「は?」
「・・・・え? メリル? 本気で言ってるの? コレ本当に欲しい?」
「うん。私の所でこき使ってやるから、離宮には二度と返さないけど、それで良ければ。私が全ての責任を持つ。私ここでは基本なんでも我儘は通るんだよ? デズロさんはもうここの人じゃないよね? 勝手に殺さないで欲しい」
な、何を勝手な! 私は認めないぞ!!
誰がお前の小間使いなどに!!
「・・・・・へぇぇ。いいよ? メリルの言う事は尤もだね? ここはサウジスカルじゃない。リディの許可なく人は殺せないもんね?」
「有難うデズロさん! いっぱいこき使ってシゴいてやるからね! 私は人使いが荒いらしいよ? テット曰く」
だーーーかーーらーーー!!
私は納得していない! 誰か止めろ! 止めないか!!
「じゃ、取り敢えずナシェスは私の実験動物って事で! 今日から宜しくね? ウサギちゃん?」
「誰がウサギちゃんだ貴様!! 私は行かないぞ!!」
「いいね! ナシェスが初めて本気で嫌がったよ? そんなメリルに首輪を贈呈しちゃおうかな?」
「何コレ?」
「サウジスカル製強制拘束器具。ナシェスがメリルから逃げようとすると発動して体を動かせなくなる。今付けといてあげるね〜」
や、やめろ! こっちに来るな!!
「良かったねナシェス。君を拾ってくれるなんて、メリルは大物だよ? 精々頑張って生き延びてね?」
やめろぉぉぉおおおおお!!いっそ殺せぇええ!!




