「ちゃいろとしろと」チャイルドシート
「クレヨン? それとも好みの色?」
いきなり飛び出す色の名前、でも、これも幼児言葉の話題から出た言葉なのだから、おそらくこれも、物の名前とかそういうものなのだろう。
「舞ちゃんの好きな色はピンクだ。最近、某氷結女王の影響で、水色も大好きだけどな」
「氷結女王ってなんだよ……」
「まぁ、茶色と白色は、好きな色じゃないよ、クレヨンではそこそこ使ってるけどね」
舞ちゃんの絵は、未だぐちゃぐちゃなものが多く、「これは○○」と描いたものの解説をされたところで、その代物の片鱗を探すことすら大変なものばかり。
でも、色とりどりカラフルな色遣いをするので、とりあえず精神的には暗さのない、脳天気と見ていいのだろう。
「んじゃ、なんだぁ? ……茶色と白と……茶色と……」
来栖は、目についたものや耳に触れたものを話題にする癖がある。思わずヒントを求めて周囲を見回すと、目の前は子供用品コーナーらしく、目につくのは大型のベビーカーやベビーベッド、チャイルドシートといったもの。
茶色と白色の色合いのものを探しかけて、チャイルドシートのチャに引っ掛かりを覚えた。
「チャイルドシートか!」
「うん、正解」
答えが分かればなんとなく理解はできる。
チャイルドやシートなんて英語より、茶色と白の方が耳に馴染んだんだろう。
「舞ちゃんってば、シートベルトはちゃんと言えるのに、チャイルドシートはちゃいろとしろとなんだ」
「そういやぁ、舞ちゃんチャイルドシートを嫌がらないな」
「むしろ、シートベルトしないで発進すると、泣き出すぞ」
小さい子どもは、身動きできないシートベルトを嫌がるものと思っていたのだが、どうやら舞ちゃんは違うらしい。
「義兄さんが、かなりきっつく説明したらしいからなぁ~。急ブレーキでフロントガラス突き抜けて飛び出し、自分の車にひかれるだとか……子どもエアバッグにしてしまい、我が子押し潰して親だけ助かるとか……」
「ちょっとマテ、それ、子どもに聞かせる話じゃないだろ」
「まぁ、その話をどこまで理解してるかわからないけど、シートベルトは命綱だと思ってるみたいだよ」
どうやら舞ちゃんパパの教育は、半端ないらしい。
たしかにそこまで言われたら、シートベルト無しは怖くもなるだろう。
「まぁ、大げさじゃなく、そういう事例はいくらでも転がってるらしいからね、ニュースにはならないけどさ」
「そ、そっかぁ……」




