「がやがや」いらいらする
「騒がしいとかそういうこと? あ、意訳じゃダメなんだっけ」
ついつい意味がありそうな言葉だと、意訳をしたくなるけれど、幼児言葉は音が頼りの間違いなのだから、これもまた、ガタガタとかマチガイとか、そんな感じのものなんだろうか……そう思ったのだが、来栖は違うと首を振る。
「いや、おしい。これは意訳みたいなもんなんだなぁ」
思ってもみなかった言葉に、がやがやの意味を考えなおす。でも、騒がしいとか賑やかってこと以外は思い浮かばない。
「惜しいってことは、騒がしいが正解じゃないのね? んじゃ、なんだろう、意訳でがやがやで……」
「ちなみに私の場合はうじゃじゃけてただったな」
「なんだそりゃ」
ヒントのつもりなのだろう、来栖が自分の幼児言葉を持ち出してきたらしいのだが、更によくわからなくなっている。
「ライだってあるだろ? そんな感じの、自分なりのぐちゃぐちゃ時の表現」
「ああ、イライラだとかムカムカみたいなの?」
なるほどがやがやはイライラのことだったらしい。がやがやとイライラでは、一文字もかすってはいないのだけれど、まぁ、これは聞いて発した間違い言葉ではなく、舞ちゃん自身の中から出てきた言葉ということなら納得だ。
まぁ、うじゃじゃけるに比べれば、がやがやの方が幾分意味は理解しやすい。ってか、なんだホント、うじゃじゃけるって……。
「イライラって、誰が初めに言い出したんだろうね? むしろうじゃじゃけてる方が分かりやすいと思う」
「いや、まったくもってわからんわい」
自分の、小さいころのイライラ表現なんて覚えていない。ただ、母がよく「うじゃうじゃ虫取った」って、イライラの原因をなくしてくれていたから、もしかしたら「うじゃうじゃ」だったのかもしれない。
泣き虫、わがまま虫、うじゃうじゃ虫に続いて、ラブチュー虫というのもいて、それを取ってしまうとしばらくチューもラブもなくなってしまうので、母が虫を取ったと言ったら「それ、実はラブチュー虫だよ」と言うと、慌てて張り付けてくるというお遊びだ。母の手がくすぐったくって、そのうちにイライラトゲトゲとしていた気持ちがまぁるくなる。
「舞ちゃんのがやがやって言い方はかわいいんだけど、言ってるときはちょっと辛そうなんだよねぇ」
「んじゃ、そのがやがや虫は取っちゃえ」
「なんだそりゃ」




