10話 覚醒
新しく見つけた魔力の数は大きく別けると5つ。
それぞれ性能は多少違っているが、魔力と言う点では同じで身体強化も出来る。後は実際に使用しながら用途を考えてゆけばいい。原油とは抽出方法も取れる量も違うが、名前は俺が知っている燃料にちなんで名付けてみた。
先ずはハイオクと名付けた魔力。一番高い圧力を掛けなければ抽出できず。性能として身体強化した時に最も早い速度で移動が可能で力の上昇も高い。けれど取れる量が少ないので長時間の使用は難しい。
二つ目の魔力はレギュラー。ハイオクよりも一段階性能は落ちる。それでも普通に身体強化した時より数倍の能力を発揮してくれる。抽出量も比較的多いのので、使用頻度は高くなりそうだ。
三つ目はディーゼル。身体強化時、機動力の上昇よりも力の上昇が高い魔力。この魔力で身体強化した場合、普通に身体強化した時と機動力は変わらない、けれど腕力などの上昇率が高い。抽出量も多いので基本的にはレギュラーとディーゼルを使用する事になるだろう。
四つ目はヘヴィー。日本語で言う重油と言う意味だ。言葉通り、重油と同様に凄まじいパワーを生み出してくれるが、発動までに時間が掛かる。身体強化時、最初は全く身体に変化が無かったが、数分後大岩も軽々と投げ飛ばせる力を発現させた。
最後の魔力はコールタール。四つの魔力を抽出した後の残り魔力で、色々試してみると以外な用途を見つける。それは身体を魔素から守るのに使えると言うことだ。身体を守るだけなら劣化魔力でも対応が可能であった。これで普段はコールタールを身体から排出させて置けば残りの魔力を温存する事ができる。
まさか異世界の魔力が地球の燃料に近い性能を持っているとは思わなかった。
俺はこれらの魔力の実証を行う為に、カーラさんに森に入る許可を取りに行く事に決めた。
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メイドのメイさんにカーラさんの居場所を尋ねると、自室で仕事をしているとの事だ。カーラさんは国が認めた魔道士で国の依頼で様々な仕事をこなしていると教えてくれた。
俺は早速、カーラさんの部屋を訪れた。
ノックを済ませ、部屋の中に入ってみると、山の様な書籍と瓶に居れられた薬草らしき草花が所狭しと並べられていた。流石は魔法使い。そんな感心を抱きながら、デスクに座り何かを書いているカーラさんに声をかける。
「お仕事中、すみません」
「なんだ。祐介殿か。何か魔力操作で解らない事でも在ったのか?」
魔力操作の訓練は基本的には独学で、解らない事があればカーラさんにアドバイスを貰うと言うスタンスで進めている。なので彼女の問いも間違ってはいない。
「いえ、今日は森の中へ入る許可を貰おうと……。魔力操作や身体強化にも慣れたので、一度広い森の中で色々やってみたいんです」
俺の言葉にカーラさんは表情を渋めた。魔力操作の訓練を初めて今日で一ヶ月が経過している。俺的には狭い庭の中では物足りないが、彼女の表情を見るとまだ早いのかもしれない。
「ふむ、祐介殿が一人で森に入るのか?」
「もちろん、ハチにも付いて来て貰います。だから魔獣が出ても大丈夫と思います」
「銀狼殿が一緒なら、確かに安全かもしれぬが……。森の中は何が起こるか解らぬ。ならば祐介殿がどの程度、身体強化を使えるか一度見せてみてくれぬか? お主に死なれて銀狼殿の怒りを買っても、此方としても困るのじゃ」
カーラさんはやけにハチの事を気にしていた。それだけハチの力が凄いと言う事なのだろう。もし俺が死んでもハチがカーラさん達を襲うとは到底思えないのだが……? 今度ゆっくりと話し合った方が良いのかもしれない。
とにかく俺は身体強化のテストを受ける事となった。テスト内容は外に出たら教えてくれるとの事だった。
中庭に出た俺はカーラさんから一本の木刀を渡される。カーラさんを見ると彼女も木刀を持っていた。
「祐介殿が、身体強化をどれだけ扱えるか。この剣術でみてやろう。ワシは魔道士で普段は剣など振り回さぬが、魔道士のワシにやられる程度なら森に行くのは危険じゃと言う事じゃ。ここにあの馬鹿が居れば任せているんじゃがな……」
俺も剣道など殆どやった事がない。これなら条件は、ほぼ同じと言う事になるだろう。
「解りました。実力を示せばいいんですね?」
「うむ。何処からでも掛かって来るが良い」
カーラさんはそう告げると、体中から魔力を放出させた。この世界の人達は身体強化の時に魔力を大量に放出させている。俺の循環とは正反対のやり方だろう。
俺も魔力を使って身体強化を行う。使う魔力はレギュラーに決めた。身体強化を掛けると、心拍数が一気に跳ね上がる。高速で鼓動する心音はエンジン音にも似ている。一気に身体が温まり何時でも全開で動けそうだ。
「それじゃ、行きますよ?」
「掛かってくる前に確認を取る奴がいるか!? 何時でも良い掛かって来るのじゃ」
俺はその場でトントンとリズム良くジャンプを始めた。そして数回飛び跳ねた後、着地と同時に俺の姿がカーラさんの視界から消える。
「なっ!!」
カーラさんは目を見開いて、左右に首を振って俺を探した。けれど何処にも俺の姿は見えない。
「カーラさん。俺の勝ちでいいですか?」
俺は背後に回り込み、木刀をカーラさんの首元に添える。
「いつの間に……?」
冷や汗を浮かべながら、カーラさんは固まっていた。
俺はこのテストで理解した。抽出した高密度の魔力で身体強化を行った時はやはり普通の何倍もの力を発揮出来るという事を。
「これで森へ行ってもいいですか?」
「これ程の力を見せられては、止めれる筈はなかろう。しかし祐介殿。お主は一体何者なんじゃ?」
「俺は普通の人間ですよ。ただ、魔力を作れないから色々試して見つけたんです」
笑顔を見せてそう告げる。
「流石は、銀狼が共にする者と言った所か? もし良ければ仕組みを教えてはくれぬか?」
「いいですよ。カーラさんにはお世話になっているんで!!」
この後、俺が魔力の抽出方法とその性能を説明すると、歓喜に震え食い入る様に話に聴き入る。
やはり魔道士と言った所で、新しい知識は彼女に取って最高のご馳走だった。
カーラさんの許可も出た事で、俺は明日からハチと共に森で新しい実験にチャレンジしてみるつもりだ。




