8.嘘と真実〜そして来たる鬼〜 鬼とダサ男編
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今日も食堂はガヤガヤしてる。
いつも騒がしいのかな?この食堂。
「こんばんはー」
『こんばんは』
「おはよう。あ、間違えた」
「レヴェスタ、なんでこのタイミングで間違うのよ」
ぺちっ。
スレンさんがレヴェスタ・ユズフさんの頭を叩く。
「いやさー」
ユズフさんは天然って感じ。亜麻色の髪と目。
珍しく、皆、早めに揃っている。
いつもと違うのは2席、空席があること。
あれ?来るのは「大臣」さんだけじゃないのかな?
ガタガタタッ。
お、来たっ。
「お待たせー!」
ぉわあ、元気だなぁ。
黒いツヤツヤの黒髪を白いシュシュでくくっている。目の色も黒。
この女の人が大臣?
白のシャツの上に白地に金縁のブレザーのようなものを着て、裾が金で縁取られている白のスカートを履いている、この女の人。明らかに格の違う服だと思うけど。
肩からかけている、キャラメル色の革の、下向きに尖っているポーチ?ってなんだろう。かなり長いし、持ち手みたいな棒が付いているものが入っているっぽいけど。
そして、後ろにいる男の人はラフな格好。黒い目と黒髪。瑠璃色より濃い瑠璃紺色のフレームの眼鏡をかけている。両手にはバッグ。白に青いラインの入った長袖。
なんか、すっごく不満そうなんだけど。
ていうか、誰?
「ようこそー」
「久しぶりー」
「遅いよー」
「ごめんねー。ちょっと仕事が押してねー。遅くなっちゃった。それより、ナミさん。新入居人がいるんだって?」
「そうそう。ルイくんよ。あの、リクとフヌちゃんの間に座っている子」
「はじめまして!私はヴェリア・ラージュ。能力管理省の大臣よ。よろしくね。こっちが私の直属の部下のアルバレト・ルノウ。コイツとも仲良くしてやってね」
「誰がお前の直属の部下やねん」
ボコッ。
ルノウさんがラージュさんの左足を蹴る。
関西弁⁉︎
「イッタ。いいやん。ダサ男。ほぼ、本当のことやろ?」
グリッ。
ラージュさんが右足で、強めにルノウさんの右足を踏む。
ダサ男?
「イッタァ。違うわ。全然違う。しかも、ダサ男ちゃうし」
「どこが違うん?ていうか、ダサ男やろ。世界一ダサい男」
「お前の部下じゃないことぐらい、お前も分かってるやろ。……だから、ダサ男ちゃうって」
「さあねー、どうやろな。私は、ルノウはダサいと思うで」
この話し合いに割り込んでもいいのかな?
いいや。割り込んじゃえ。
「あのー、ラージュさんとルノウさんってどこ出身なんですか?」
「え?あー、サヒア地方よ」
サヒア地方。
どこかはわからないけど、遠いところらしいね。
「みっともないところを見せちゃったしなー。どうしよう。自己紹介の続きでもしよっかな」
「お願いします」
「改めまして、私はヴェリア・ラージュ。能力管理省の大臣をしてます。あとは、王子のボディーガードなんかもしてます」
ボディーガード⁉︎
「あれ?でも、学園には来てませんよね?帰る時も会ってませんが」
「ルイくんは生徒会員だったやんな。確かに思うよな。私、おらへんもんね。学園にいるときはボディーガードをする必要がないねん。『蹴撃の鬼神』と『執念の男』がいるから。ねー、鬼神さん」
蹴撃の鬼神がいるの?
ラージュさんの目線の先にいるのは……。
目を逸らしているレネアさん。
「ええええええええ⁉︎」
蹴撃の鬼神ってレネアさんのことなの⁉︎
執念の男というのは、もしかしてカルさん⁉︎
なんか、すごい⁉︎
「ラージュさんのせいですからね。『蹴撃の鬼神』って呼ばれ出したのは」
「いやいや、私は何もしてへんって。情報通の友達にレネアの蹴りがすごいねんで、って言っただけやし。そうしたら、情報通の友達が『裁きの鬼女』って呼ばれてる私が認めた男やから、『蹴撃の鬼神』ってつけちゃったんやから」
「知りませんよ。第一、蹴りがすごいって言わないでくださいよ」
なんか、すごい。「裁きの鬼女」とか「蹴撃の鬼神」とか。考えた、「情報通」さんもすごいような。
そして、訊こう。
「あの、『裁きの鬼女』って何ですか?」
「あー、私の二つ名。能力が『闇の裁き』やから、『裁きの鬼女』。でもさー、鬼神の方が強そうやん。何でよなぁ」
「確かに、鬼神の方が強そうですよね。確か、鬼女って鬼ば―」
「あー!あー!あー!」
「ダメダメ!ルイくん、ダメだよ!」
ムグッ。
口を塞がれて息ができない!
―ばの若い頃のことだったような。
「あら、ルイくん。何か、言った?」
こ、怖い!
目が笑ってない!
な、何故?若い頃だ、って言おうとしたのに!
老けてるって言ったつもりはないのに!
「鬼婆の若い頃やなんて言わんといて。あんな、怒りっぽい人と一緒にせんといてよ」
「ルイくん、ルイくん。耳貸して」
フヌさん?
耳?ああ、内緒話ですね。
「実はラージュさんの母親は『鬼婆』って裏で言われていてかなり怖いの。ラージュさんはそんな母親が苦手なの」
なるほど。
それでカチンときてたのか。
「話を戻すんやけど、王子が学園にいるときにボディーガードをしない理由はもう1つあるねん。それはな、王子がそこそこ強いからやねん」
そこそこ?
「そう。そこそこ。一応、王子は剣士なんよ。バッグには、短剣が入っているし、休日は刀を持ってる。ヤワな奴なら、王子は余裕で倒せるで」
なるほど。そこそこ強いのか。
「まあ、ボディーガードとして同じ剣士の私がついてるけど」
「ラージュさんって剣士なんですか?」
「うん。このホルダーに入っているのは剣やで」
なるほど。細長いポーチに見えたのはホルダーで、中に入っていたのは剣だったのか。
「そうや!ナミさん、着替えたいから部屋、借りていい?」
「もちろん。あ、ラージュさん、ここによく来るんだから1部屋、借りたら?」
「でもねー」
「管理はしっかりするし、お風呂付きの1番景色のいい部屋を他の部屋の家賃と同じ値段で貸すから!」
「いいん?」
「いいよ!もちろん!」
「ありがとう!じゃあ、部屋の鍵を借りるね!」
「はい。306ね」
306ってことは3階の角部屋で1番広い部屋のはず。
僕らの部屋が304だから右斜め向かいの部屋だね。
「じゃあ、ちょっと待っててねー」
「……はあっ」
ルノウさんの盛大なため息。
疲れているんだねー。精神的にも?
そういえば、ルノウさんって何の仕事をしているんだろう。
「ルノウさんの職業って何ですか?」
「俺はゲームクリエイターやで。売れるゲームには全く関わってへんけど」
なるほど。それでラフな格好?
「夢見る男なんだよな!アルバレトは!」
クドバートさんがニヤッと笑って声を発する。
「やる時はやる男、だもんねー」
ナミさんも机に料理を並べながら話す。
「ルノウさんとラージュさんってどんな関係なんですか?見たところカレカノじゃないっぽいですし」
「俺とアイツがカレカノ?やめろって。それはない。アイツが彼女やったら俺は死ぬで。しかも、アイツに俺のこと、『好きか嫌いかで言ったら嫌い』ってはっきり言われたし。第一、俺は結婚してるしな。アイツは単なる幼なじみ。サヒア地方にあるレイネス学園の姉妹校に行ってたときも、小5でクラスが一緒になって。レイネス学園に中等部から転校したときもアイツが一緒やったし、中1、中2で同じクラスになるし。ずっと一緒やねん、アイツと」
「へえー」
それにしても『好きか嫌いかで言ったら嫌い』ってキツイな。
ていうか、サヒア地方にレイネス学園の姉妹校があるんだ。
でも、何故、2人とも中等部で転校したのかな?
「つぶやきが声に出てるで、ルイ。中等部で転校したのは成績優秀者やったからや。アイツは今、大臣やろ?」
「はい」
「レイネス学園は、そういう人を育てる学園でもある。特に生徒会長や学園会長・代表になる人は将来、高い地位につく。現に、アイツも確か37代目中等部生徒会長、40代目高等部生徒会長を経験してる」
なんか、すごい。
レネアさんの先輩だ。
そして、転校してきたラージュさんが、中等部の生徒会長になれたのがすごい!
「まあ、アイツも1人、勝てへん人がおるって言ってたけど」
「勝てない人?」
「あのラージュさんが?」
フヌさんも驚いている。
「そうやで。今のレイネス学園のプログラミング同好会会長でレイン・シュキザって子がおるやろ?その子の母親のセイン・リューズってやつに勝てへんって言ってた」
「何で勝てないって言ってたんですか?」
フヌさんが興味津々だ。
「詳しくはわからへんけど、勉強やと思うけどな。リューズはテストの点数がすごい良かったから」
「なるほど。勉強かー」
思わずつぶやいてしまうのは、勉強が苦手だから?
いや、運動も出来るわけじゃないけど。
「そうや、俺のことも自己紹介しとこう。このアパートの人、俺に何も訊いてくれへんからな」
「あ、お願いします」
「はい、どーぞー」
「勝手にして下さい」
「なるべく巻きで」
「どーでもいい」
「一応、聞きます」
「進めてください」
「勝手にやれ」
「お前ら、ルイとフヌちゃん以外、俺の自己紹介をしっかり聞く気ないやろ」
「「「「「「「「「「「ない」」」」」」」」」」」
いやー、11人のハモりは素晴らしいですなー。
はー、感動で汗が止まらないー?
……いや、待て。この汗は何だ?何の汗だ?
「お前ら、いい加減にしろよ!」
「そっちこそ早く進めてよ。一応、聞いてやるって言ってんだから」
クレクトさんが、睨みつつ、ルノウさんに催促する。
「チッ。……俺はアルバレト・ルノウ。闇属性、闇分野、防音能力やで。魔力は85。趣味はドラムと歌。ダンスも割と好き。あとはホラー映画鑑賞。27歳や」
防音能力ってちょっとしょぼい?
「こらこら、ルイ。つぶやきが声に出てるで。しょぼいけど便利やで、防音。分かってへんなぁ」
はあ、そうですか。
「ついでにアイツの紹介もしておいてやるわ」
『お願いします』
あ、全員ハモった。
「なんや、お前ら。俺の自己紹介の時は話を聞く気無かったくせに、アイツの自己紹介に変わった途端に興味津々になって。何で?」
「「「「「「「「「「「だって、お前じゃないから」」」」」」」」」」」
また、僕とフヌさん以外がハモった。
……なんで、こんなに息がぴったりなんだ?
「アイツはヴェリア・ラージュ。闇属性、闇分野、能力は闇の裁き」
闇の裁き?
「父親が闇属性闇分野、母親が光属性清光能力だ」
「ルイ」
「なんだよ」
いきなり、内緒話のトーンで話しかけてきて。
「能力が『裁き』の人間の説明をしておいてやる。裁きの能力が出るのは、闇属性闇分野の人間と光属性日光・清光分野の人間の間に生まれる子だけだ。そして、その子が闇属性闇分野なら闇の裁き、光属性日光・清光分野なら、光の裁きの能力が出る」
「例えば、闇属性水分野ならどうなるんだ?」
「その場合は裁きの能力は出ない。闇属性日光・清光分野の場合もそうだ」
「なるほど、分かった」
「好きな食べ物はコーンポタージュ」
あ、自己紹介はまだ、続いてる。
「いつも持っている物は、消毒用アルコール。ってところやな」
あ、終わっちゃった。
「ヤッホー」
ラージュさんが戻ってきた。
ラージュさんの服装は白いTシャツに明るい色のジーパン。ラフだな。
「待たせちゃってごめんね。ダサ男も早く座って」
「ダサ男ちゃうし」
「ダサ男や。アルバレトは世界一ダサい男やろ?」
「はあ?」
「ナミさん、コイツはもういいから」
「分かった。じゃあ、いただきまーす」
『いただきまーす!』




