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ナツの扉 ~ザ・ドア・イントゥ・レグレスィール~  作者: みたよーき


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19/19

エピローグ

 目を覚ますとそこは、物置の中だった。

 電気の点いていない物置の中は、窓から差し込む光で、淡いオレンジに染まっている。

 身体は……長く床で眠っていたような痛みは感じない。

 そして頬には、少しだけ引き攣るような感触だけが残されていて。

 足元を見ると、履いているのはスリッパだった。

 ゆっくりと辺りを見回す。

 当たり前だけど、部屋の真ん中に扉なんて無くて。

 やっぱり私は、一人きりだった。


 日付はあの日のまま、時間だけが過ぎていた。

 物置の中を、家中を、庭中を探したけれど、ナツの姿は見つからなかった。

 そのことが、寂しいし、悲しいけれど、同時に少し、ホッとした。

 シュレーディンガーのナツじゃないけれど、この世界で私がナツを観測できないということは、ナツがあの世界で元気に暮らしている証拠、そう思えるから。

 家の中を見回せば、まるでこの家の主がナツだったんじゃないかと思うくらい、猫のための道具や設備が目に入る。

 今すぐは、無理だけど。この家で暮らしていくのなら、いつか、新しい子をここへ迎えてあげたい、と思った。

 そしてその子も、私のことを、人間のことを、大好きになってくれたら、とても嬉しい。

 それに、そうなればきっと、その子だって――。

 ふと、喉の渇きと、空腹感を覚えた。

 水を飲んで、夕食の準備を始めよう。

 自然にそう思えたことが、嬉しい。

 それは、ナツの贈り物が、確かにこの胸に有ることの証明だから。


 一つの夢は終わり、そして私は、この現実を、生きていく。

 もしかしたらまた、それこそモンスターのように恐ろしい理不尽が、この身に襲いかかってくるかも知れない。

 そして、私はその理不尽に、魔法の力も無しで立ち向かわなければならない。

 それは、とても恐ろしいと、そう思う気持ちは私の中にまだ、有り続けている。

 逃げてしまった方が楽なのではないかと、そう思う気持ちもまだ、完全に無くなったわけじゃない。

 それでも。

 あの世界で、私が強くなれたのかどうか、それは結局分からないけれど。

 だから、いつの日か、挫けてしまうかも知れないけれど。

 それでも、それが、ナツの望みなら。

 行けるところまで、ただ、精一杯、私は生きてみよう。

 それはきっと、両親やカレもまた、望んでいたことでもあるはずだから。

 その中で、カレの望んだ、私の幸せを見つけられるかどうかは、分からない。

 だけど、見つける努力はしたい。

 そうしなければ、私はカレに、胸を張れない。

 そして私は、カレに胸を張れる私でありたい。

 今は、心から、そう思える。


 道の途中、ふと見上げた空は、鮮やかに深く蒼い、夏の色だった。

 それは、私が、大好きな色。

 だから私は、その色を見てももう、悲しくなったりなんて、ちょっとだけしか、しないのだった――。





    “The Door into ‘Regretheal’ ”

                            The End.



 ご読了、お疲れ様でした。


 ところで、あなたにとってのナツは、どんな子だったでしょうか?


 ナツの容姿に関しては、読んだ方にとって一番かわいい、若しくは“うちの子”に次いでかわいいと思える猫をそれぞれに想像して欲しくて、具体的な描写は意図的に避けました。

 その結果として、ナツをよりかわいいと思って頂けたなら良いのですが。

 ナツに限らず、登場した猫ちゃん達をかわいいと思って頂けたなら、この作品にとっては最大級の褒め言葉です。

 もし、かわいいと思って頂けなかったなら、それは自分の力不足です。申し訳ありません。

 万が一、猫がかわいい、以上の評価を頂けたなら、それは望外の喜びというもので、とても幸いに思います。

 作者としては、良い部分も悪い部分も、率直な感想を伝えて頂けると有り難いのですが、評価を数字で教えて頂けるだけでも嬉しく思いますので、差し支えなければよろしくお願いいたします。


 それでは、最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。


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