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四季姫Biography~陰陽師少女転生譚~  作者: 幹谷セイ(せい。)
第一部 四季姫覚醒の巻
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七章 Interval~夏夜のキャンプ場~

 夏の、息の長い太陽もいつしか沈み。

 月と星空が綺麗な、夜が訪れていた。

 周囲ではたくさんのキャンプ客がキャンプファイアーや宴に盛り上がり、夏の夜を謳歌している最中。

 了封寺からキャンプ場へ戻ってきた榎たちは、賑やかな空気をぶち壊して、脱力していた。

 この先、前途多難になりそうな予感に押しつぶされて、とてもアウトドアを楽しむ気分にはなれなかった。

 とはいっても、テントはばっちり張ってあるし、今から市街地へ戻るバスもない。

 何時間も掛けて歩いて帰る体力もない。今日はキャンプ場で一泊するしか、手立てはなかった。

「暗い気持ちでおっても、しゃーないやろ。とりあえず、今晩は夜空の下で楽しもうな」

 重苦しい雰囲気を、何とか盛り立てようと、柊が陽気に声を張る。

 榎たちも同意し、気持ちを切り替えて、頷いた。

「だな。腹も減ったし、晩飯にするか……」

 と、思った瞬間。榎は、大変な事態に気がついた。

「しまった、材料、昼飯に全部、使っちゃった……!」

 持ってきた食材は、すべて昼のカレーそば飯に費やされてしまった。作った少量の余りしか、残っていない。

「自分、昼に食うカレーの準備しか、してこんかったんか!」

「お前だって、焼きそばしか眼中になかったんだろ!」

 二人で言い合いをするが、何の解決にもならない。計画性がないと、こういう場面で苦労する羽目になる。

「くっそー、昼に焼きそばにして、夜にカレーを作ればよかった」

 主張を欲張らずに、上手く分担できていれば。後悔先に立たずだが、悔やまずにはいられなかった。

「どないすんねん。麓のコンビニまで歩くか?」

 外灯のない暗い道を下れば、四季が丘の外れの集落に出る。何もない田舎だが、山へやってくる観光客を狙ったコンビニがあったはずだ。

 田舎のコンビニは、二十四時間営業が当たり前とは限らないが、まだ小さなスーパーでも開いている時間だ。急げば、簡単な食材の調達はできるだろう。

「二人とも、大丈夫よ! 心配しないで」

 打開策を考えていた榎たちの間に、嬉しそうに椿が割り込んできた。

「パンケーキ、まだ作っていないもの! 今から焼くから、食べましょ」

 榎たちは、微妙な顔を向き合わせた。

 甘い夕食なんて。汗も掻いたし、塩分が摂りたいなと、内心で意見が一致していた二人は、示し合わせて頷き合った。

「湯は沸かせるし、カップ麺でもうてこよか!」

「一時間くらいあれば、往復できるもんな!」

 さりげなく却下された椿は、怒りを爆発させる。

「そんなに嫌なの!? 甘いご飯! それとも、椿の料理が食べられないって、いいたいの!?」

「いや、食べるけどさ、パンケーキはおやつだって。もしくは、夜食……」

「うるさーい! キャンプに来ている間は、インスタント禁止! 椿が作ったパンケーキを食べて過ごすの!」

 最終的に、椿の強引な雷が落ちて、問答は強制的に終了した。

「パンケーキの粉かて、インスタントやがな……」

 なんて、突っ込める余裕もなかった。

 榎たちは椿がご機嫌で焼いたパンケーキを頬張りながら、夏の山の夜を満喫した。

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