第1話 はじめての事故 はじめての転生
天城理人は、そんなにレベルの高い高校生ではない。
偏差値の高い進学校に通っているわけでもない。
テストの順位はいつも真ん中より少し下。
数学は苦手。
英語はもっと苦手。
国語の長文問題は途中で眠くなる。
先生から見れば、
「もう少し勉強すれば伸びるのに」
と言われる、ごく普通の高校生だった。
ただ、一つだけ違うところがある。
理科だけは、異常だった。
暗記はできない。
教科書の文章をそのまま覚えることは苦手。
でも、
「なぜそうなるのか」
を理解した瞬間、頭の中で勝手につながっていく。
友達が公式を覚えている横で、
「この式って、こういう現象を表してるんじゃない?」
と言い出す。
先生が説明していないことまで、自分で考えてしまう。
そのせいで周りからは、
「頭いいのか悪いのかわからない奴」
と言われていた。
そんな理人が所属しているのは科学部。
部員は少ない。
活動内容も地味。
植物観察。
簡単な実験。
文化祭の展示作り。
その程度だった。
そんなある日、科学部は特別企画で研究施設の見学に行くことになった。
最先端の研究を見ることができる、貴重な機会。
周りの生徒たちは興奮していた。
「すげえ……映画みたい」
「こんなの高校じゃ見られないよな」
しかし理人は別の場所を見ていた。
巨大な装置。
透明なケースの中に置かれた、謎の鉱石。
「……なんだこれ」
近づいてはいけない場所。
もちろん説明も受けている。
研究員が言った。
「この装置は現在、エネルギー反応の解析中です。絶対に触らないでください」
理人は頷いた。
「分かりました」
数秒後。
理人は装置を見ていた。
「……」
友達が気づく。
「おい理人」
「なに?」
「お前、今絶対触ろうとしてるだろ」
「いや、触らない」
「じゃあなんで手を伸ばしてる」
「確認したいだけ」
「それを触るって言うんだよ!」
理人が触る前に、異変が起きた。
装置から警告音。
研究員の顔色が変わる。
「まずい……反応値が急上昇している!」
理人は画面を見る。
理解できない。
でも、何かがおかしい。
「……この数値、変だ」
「何が?」
「エネルギーが増えてる」
「そんなのありえるの?」
理人は答えられなかった。
なぜなら、この現象は理人が知る科学では説明できなかったから。
次の瞬間。
巨大な光が研究室を包んだ。
そして理人の意識は途切れた。
目を覚ますと、そこは知らない森だった。
服はそのまま。
体もある。
でも周囲の環境がおかしい。
見たことのない植物。
見たことのない空。
理人は最初に思った。
「……夢か?」
そして次に思った。
「いや、夢にしては観察できる情報量が多すぎる」
普通なら混乱する場面。
しかし理人は地面の土を触った。
「土質が違う……」
空気を吸う。
「酸素濃度も少し違う?」
そして呟く。
「ここ……地球じゃない?」




