# はじめに
本書は、ある一つの政治思想を厳密に分析した研究書でもなければ、特定の政党や団体を体系的に論じた評論集でもない。
日々のニュースや出来事に触れる中で、その都度思い浮かんだ疑問や違和感、あるいは思考実験を書き留めた政治エッセイである。
そのため、話題は安全保障から経済、歴史認識、教育、多文化共生、そして時には宇宙規模の平和論にまで及ぶかもしれない。前の章との連続性が薄いこともあれば、同じテーマを異なる角度から何度も取り上げることもある。
本書で述べる内容は、特定の「左翼」や「リベラル」、あるいは「右翼」や「保守」を正確に代表するものではない。本書では便宜上、「左派思想」という言葉を、一般に左翼・リベラルと呼ばれる思想傾向を広く指すものとして用いるが、それはあくまでも私自身が思考を整理するための便宜的な呼称である。
したがって、本書は「左派思想とは何か」を定義することを目的とするものではない。一人のナショナリストである私が、左派思想をどのように理解し、そこからどのような疑問や違和感を抱いてきたのかを記録したものである。
議論を分かりやすくするために、あえて単純化や還元法、誇張、風刺を用いる箇所もある。しかし、それらは相手を戯画化すること自体を目的とするものではなく、ある考え方を異なる立場から照らし出すための思考実験として用いている。
読者には、本書を結論の提示としてではなく、一つの思考実験として読んでいただければ幸いである。
もし途中で「それは違うだろう」と感じたなら、その違和感こそが本書の目的の一つである。異なる立場から同じ問題を眺めることで、新たな問いや論点が生まれるのであれば、本書はその役目を果たしたことになる。
最後に、私自身の立場について一言だけ述べておきたい。
本書では「ナショナリスト」という立場から左派思想を眺めるが、だからといって、私自身が一般にイメージされるような強硬なナショナリストというわけではない。
私は、基本的人権の尊重、法の支配、男女の平等、社会保障制度といった、現代の自由民主主義国家を支える基本的な価値を否定する立場ではない。むしろ、それらは社会の安定と国家の持続にとって重要な基盤であると考えている。
一方で、いかなる理念であっても絶対視され、現実との均衡や他の価値との調整を欠くならば、新たな問題が生じることもあるのではないか、と私は考えている。
私の立場を一言で表すなら、「左派思想そのものを否定する」のではなく、「行き過ぎた左派的な主張や、その前提となる世界観に疑問を抱く保守寄りの立場」である。
本書は、そのような立場から日々の出来事を考えた記録であり、読者に同じ結論を求めるものではない。むしろ、「どこまで賛成でき、どこから賛成できないのか」を考えながら読み進めていただければ幸いである。
では、思いつくままに書き始めることにしよう。




