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些細な言葉で崩れる友情

ライム君喋り倒します。

翌朝、食堂へ行けば、アルバは普通に「おはよう」と挨拶をしてきて、拍子抜けした。そして、郵便屋たちもアルバもワタルさんも仕事場へ向かい、一人になって退屈していると、それを見たスイトさんが言った。

「じゃあ、ライム君のところでお手伝いしておいでよ。まだ君はライム君とじっくりお話ししたことがないでしょ?でも、水が好きならきっと気が合うよ。僕が相談してみるから、ね」

スイトさんに薦められるまま尋ねたライムの牧場はこれまた風変わりだった。そばに川があり、よく日が当たり、周囲を木に囲まれている土地なのに、なぜか涼しい。こういう地形では湿度が高く蒸し暑いのが相場だと、熊本にいた頃散々知っていたのに。その常識を覆された気分だった。住んでいるらしい掘っ立て小屋にライムを尋ねれば、すぐに返事が返ってきて、俺は農作業の手伝いをすることになった。

「ああ、シュウイチだっけ。人手なら歓迎だよ」

「よ、よろしく」

しかし、日が射す時間帯になった頃、ライムは太陽から逃げるように木陰へと入っていく。

「はい休憩。シエスタタイム。僕真っ昼間の太陽の光は苦手でさ、この時間帯は日陰にいなきゃいけないんだよね」

そういえば以前すれ違ったときもサンコートと呼ぶ謎の上着を着ていた。あれはもしや、紫外線などをカットする機能がついていたのだろうか。

「あー……じゃあ、ここ手伝ってる間くらいは、日の出日の入りの荷物運び手伝うわ」

「ヘエ、案外いいやつじゃん、シュウイチ。じゃあ取り敢えず、明日もよろしく」

「ああ」

俺は、新たな友人が出来そうな予感に胸を踊らせていた。このあとに起こる悲劇を何も知らずに。


ライムとはその後、畑作業を通してかなり仲良くなった。それというのも、ライムはただローテンションなだけで、中身はけっこうなお喋りだったからだ。ダウナー系の見た目に騙されてはいけなかった。

「そういえばさあ、僕の身体は太陽が苦手だけど、僕自身は太陽が好きなんだよね。やっぱ手に入らないものほど憧れるってあるのかな」とか、「そういえばアルバって太陽って意味の古代語らしいね。僕、アルバって言葉が世界で一番好きだな」とか、「スイトさんは味覚がとても優れているんだ。甘いものなんか食べさせたら、砂糖やフルーツは何が入っているか品種まで当てられる。……まあその分、舌に合わなくて食べられないものも多いらしいけど」とか、「カケルのツクモ、あの子メルって言うんだっけ?昔はサッカーボールの形してたらしいよ」とか、「スイトさんは、この国に来て初めて会った人間なんだ。僕に向かって『バニラアイスみたい』って言ったのまだ覚えてる」とか、「ポストの喋り方って独特だよね。……遺伝かと思ったけど、スイトさんは普通だな……ふわふわしてるだけで。ま、僕は好きだけどね、両方」とか、「ワタルっていい医者だよね。そりゃ若いし、技術はまだまだかもしれないけど、きちんと心と身体の両方の面から患者を見るじゃないか。技術だけあっても患者を診ない医者よりよほどいいさ」とか、とにかく俺も共有できる話題を選んでは、ふっと話してくれるのだ。ライムは言葉こそぶっきらぼうだが、一緒にいて心地の良い存在ではあった。

そうしてしばらく過ぎた頃、ライムになら相談してみてもいいかと木陰で切り出した。

「あのさ……ちょっと、いいかな。前々から引っ掛かってることがあって……」

「なんだよ、なんでも言ってみなよ。これでも人間心理には詳しいよ、僕」

よく人を見ているライムなら、なにかいいアドバイスをくれるだろうか。藁にもすがる思いで切り出した。

「実は以前、アルバに怖いって言っちゃってさ。……あれからしばらく経つし、普通な態度してたから気にしてないとは思うんだけど、やっぱモヤモヤするからなにかお詫びしたいと思って……ライム?」

急に周囲の空気が冷え込む。今までにないほど怒った顔のライムがそこにいた。

「気にしてない?……なに、そのふざけた解釈。アルバは王だよ?そしてお前は王が招いた客だ。国民の前で、王が自らお前の立場が悪くなるような真似をするはずないじゃないか!王城内でアルバは慕われてる。そんなとこでアルバを不当に貶すようなことをお前が言ったと知れたら、職員はみなお前と今まで通りの関係でいるのは難しくなる。それが分かっているからアルバはお前に何も言わないんだ!普段通りだった、じゃない!気にしてないんじゃない!お前のことを仮にでも国民の一人と認めているからこそ、普段通りにしか振る舞えないんじゃないか!シュウイチ、なぜお前にはそれがわからない!?」

ライムの目は、今まで過ごした時間の穏やかさが嘘のように見えるほど怒りに燃えていた。

ライム君、本来はゲストキャラくらいの予定だったんですけど、予想外に暴れ出しました。

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