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異端と迫害の連鎖

ライム君、喋り続けます。

「怖いってなんでだよ!アルバがお前になにかしたのか!?言え!言ってみろ!」

そうだ、ライムはポストと同じくらい、いやそれ以上にアルバのファンだった。厄介なところに触れてしまったのかもしれない。いわゆる地雷ってやつか。俺はそのくらい軽く考えていたことを、ライムの言葉を聞いて後悔することになる。

「い、いや……。でも、なんか、人じゃないのに人の世界に混じってるって、なんか怖いじゃん。お前はそう思わないのかよ」

周囲の気温がさらに下がった。雪の結晶すら、ちらついている。……雪の結晶!?今は、季節で言うなら夏だぞ……!?

「……いいこと教えてやるよ。僕の母さんは雪女で、僕の父さんは人間だ。つまり僕は雪女と人間の混血だ。『人でなし』は怖いんだろ?怖がれ。怖がったまま、怖いもの見たさで話を聞いていけ。僕の母さんは、普通にひっそりと雪山で暮らしていた。そうしたらある日、父さんが訪ねてきたんだ。人の寄り付かない雪山に人間である父さんがわざわざ来たのはなんでだと思う?父さんはアルビノだったんだ。それで、人間たちの社会から迫害された。母さんは、西洋の文化が好きだったから、父さんを天使と勘違いして家に入れた。その誤解が解けた後でも母さんは父さんを愛し、僕が生まれた。僕は両親に愛されて育ったが、雪女の里ではしばしばいじめられた。父さんも母さんもいつも僕を守ってくれたが、父さんは人間だから、早くに死んでしまった。母さんは、僕のために雪女の里を出て、人間社会の片隅でひっそり暮らそうとしたけど、ダメだった。僕は人間の社会でも浮いてしまったんだ。その頃僕はいなくなった父さんを恨んでたよ。父さんさえ雪山に来なければ、僕は普通の雪んことして生まれられたのに――って。でも、人間社会で迫害された頃気づいたんだ。元々父さんもこんな風に追い出されてきたんだって。そう、元を辿れば人間たちが人間を追い出すから、僕らの世界に混じりあってしまったんだ。

そうやって、中途半端にずけずけと僕らの領域に我が物顔で入ってきて、いざそれを咎められたら『我々はなにもしていないのに何故』って怒るんだ。人間の、それも一部が決めたルールが僕ら人外に適用されるもんか。そんな当たり前のことさえ忘れてさ。

人間はいつも勝手だ。僕のことが何故怖いか聞いたことがある。するといつも『身体や心の作りが人間と違ってるなんて何するかわからなくて怖い』って答えが返ってきた。だから僕は努力した。心理学を学んで、人間の心が何故恐怖を感じるのか調べた。そうすると、人間は未知に恐怖を感じるとあったから、僕は怖がられないために僕のことを知ってもらおうと、人間に僕のことを伝えようとした。そうしたら人間どもは何て言ったと思う?「いいよ、興味ないし、怖いから聞きたくない。聞いたところで関係ないし」だと。その恐怖を取り除くために散々やってきた僕の努力は無駄だった。その上、愚かな人間たちは自分の犯した罪に気づいていなかったんだ!……僕は人間と共存するのを諦め、雪女の里に帰り、今度は人間について説いた。そうしたら今度は何て言ったと思う?「いいよ、人間とか興味ないし。聞いたところで関係ないし」だと。僕は絶望した。妖怪も人間も一緒だ。頭数が多くなればなるほど、馬鹿になるんだ。母さんは普通の雪女だったから、そのうち身体が弱って、療養のため里へ帰した。僕はとうとう死ぬだろうなと思ったとき、アルバに会ったんだ。


アルバに初めて会ったとき、僕は相当こにくたらしいヤツだった。また人間かって思ってたんだ。『人間も妖怪ももう嫌だ、帰ってくれ』って言ったら、アルバはこう言った。『僕は人間じゃない。妖怪でもない。……一応、精霊の類だけど、それも完全じゃない。ボクはアルバ。人と精霊の混血を持った王だ。ボクの国においで。キミの持つ時間や世界はとても、ボクと近しい。是非、ボクの友人になってほしいんだ。キミの望みを教えて。キミの望む環境を、きっと整えてみせるから』と。ボクはあのときこそ救われた。僕は今まで散々人間や妖怪のことを理解したが、向こうはこちらに耳など貸さなかった。アルバだけが、両親以外で初めて僕の方を向いて話してくれた。初めて僕と会話してくれたんだ!アルバはボクの初めての友達で、大事な親友なんだ!

……お前はどうなんだ、シュウイチ。お前はアルバに何をされた!?言ってみろ。僕やアルバは、お前の恐れる人外だ。だが僕らが恐れられるに至るほど、お前に何か害を成したっていうのか!?僕からすれば、お前たちのように、ただ人でないと恐れるだけで、自分達にとってそれが善か悪かの思考すら停止するお前たちの方が余程恐ろしい!」

俺は何も答えられなかった。今まで散々ライムが語ってきた思い出は、アルバが治め、俺を連れてきたから分かるようになった話だった。このところの穏やかな時間も、ライムの友好的な歩み寄りの態度によって築かれたものだった。黙ったままの俺にライムは頭を抱えた。

「もう嫌だ。どうしていつも僕たちだけこんな目に遭わされなくちゃならないんだ。やっぱり僕らは僕らはみ出しものだけで密かに生きるべきだった。アルバのところへ行かなきゃ。アルバをこれ以上お前のような人間のそばに置いておけるものか。何度も試みては止められたが、この国を照らす太陽を、今度こそ僕が連れ去ってやる。失って初めて、太陽の美しい輝きを思い知れ、愚かな人間共。当たり前にそれを享受するお前たちには、けしてその価値が分からない」

ライムを止めようと近づくと、物凄い冷気が手に触れた。冷たいどころか、痛い。指先すらも触れることはできない。本来はこんなにも冷たい空気を纏うのがライムにとっての正常なのだと痛感しながら、王宮へ駆ける背中を、必死になって追いかけた。

雪女の絵本を読んだとき、なぜ主人公の男が黒髪ばかりなのか気になっていました。本来、厳しい冬の雪山へ放り込まれるような存在とは?

やっぱ、見た目で迫害されやすかったアルビノの方とかもいたんじゃないかなと思いますよね。

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