第1話 幼女との出会い
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軽い酩酊感ののち光は収まった。
いきなりの光で、視界を奪われたが、数十秒ほどで視界はもとに戻った。
視線を周囲に巡らせると、そこは先ほどまでいた大広間ではなく、小部屋であった。小部屋といっても学校の教室くらいある。どうやら俺は気付かないうちに部屋に足を踏み入れていたようである。
そんなことを考えていると、ふと後ろに人の気配を感じた。
「誰だ!?」
じいちゃんでも、ケビンでもないその気配に俺は腰のホルスターから銃を抜き、振り向いた。そこにいたのは銀色の髪と真紅の瞳をした10歳くらいの幼女がいた。身長は135cmくらいだろうか。
「誰だとじゃと、妾の神殿に無断で侵入しておきながらずいぶんと勝手な物言いじゃの人間?」
「幼女?」
「誰が幼女じゃ!この戯け!!」
つい思ったことを口に出してしまったら、幼女に日本語で怒鳴られてしまった。
「ああ、すまない。少し混乱してしまって。お嬢ちゃんはパパかママと一緒に来たのかな?ダメだよ、遺跡の中は危ないから外で大人しくしてないと。」
きっとこの子は遺跡探索に来た誰かの子供であろうと思い、俺は幼女の目線の高さまで屈み、銃を持つのとは逆の手で頭を撫でた。
「子供扱いするでない!ふん、無礼なやつじゃの。」
少し日本語が変だが、外人であるから、アニメか漫画で覚えたのであろう。もしくは、じいちゃんが日本語を教えたのかもしれない。どことなく、じいちゃんの日本語に似ている。
「ごめん、ごめん。それじゃあ、お兄ちゃんと一緒に外にでようか。」
「外に出るじゃと?お主はここがどこだかわかっておるのか?」
「どこって、遺跡の中だろう?」
「確かに遺跡の中じゃ。しかし、お主の知る遺跡とは別物じゃがな。考えてもみろ、お主は先ほどまでどこにおったんじゃ?この部屋の中ではあるまい?」
そういえば、この幼女ここを神殿といっていた。ここの探索に来ていた人たちはここの呼称を遺跡に統一している。なぜなら、まだ詳しいことがいないので言葉からくる先入観を受けないために遺跡以外の呼称は使用しないようにしているのである。
それなのに、この幼女はここを神殿と、まるで確証があるかのように言った。しかも、ここが自分のものであるとも。
「その様子から察するに、どうやら気付いたようじゃな。異邦人いや、異世界人よ。」
瞬間、幼女の殺気が膨れ上がった。
「貴様、何者だ?ただの幼女じゃないな?」
この段階で俺はようやく目の前の幼女が、見た目通りのものでないことを認めた。本当はこいつを見た段階から違和感があったが、心のどこかでそんなことはありえないという固定観念がぬぐえないでいたのだ。
「ほう?妾の殺気を浴びても平気とは、お主中々やるではないか。気に入ったぞ!!」
殺気が収まる。しかし、こいつが危険であることに変わりはない。俺は神経を集中させ、いつでも動けるように臨戦態勢に移行する。
「そう気色ばむ出ない。お主をここで殺すようなことはせん。まあ、妾の神殿に無断で入り込んだ罰は受けてもらうがな。」
「罰だと?どういうことだ?」
「話を聞く気になったか?」
「ああ、今ここであんたと対立してもどうしようもないしな。」
「よい心がけじゃ。その心意気に免じ、説明してやろうではないか。まず、この場所じゃが……」
幼女の説明をまとめると、ここは俺たちが探索に来ていた遺跡とは別の場所にある神殿で、神殿は地球とは別の異世界にあるものであるそうだ。
そして俺は、遺跡と神殿がどういう理屈かはわからないが繋がってしまい、異世界へと飛ばされてしまったということらしい。
目の前の幼女はシルヴィアといい、本人曰く、この神殿を司る神様らしい。もちろん、こんな胡散臭い話を信じる気はない。いや、正確にはなかった。
しかし、この世界には地球には存在しなかった魔法が存在し、実際に魔法を目の前で見せられては信じざるを得なくなった。まるで、母さんの好きなラノベやゲームの中での話である。
「それで、俺は元の世界に帰れるのか?」
今のところの懸案はその1点である。
「さあ?どうかの?まあ、帰る方法を妾が知っていたとして、素直に教えると思うのかえ?」
「実力行使すれば教えるのか?」
腰のホルスターに挿してあったもう1丁の銃も抜く。セーフティも解除し、2丁の拳銃をシルヴィアに照準を合わせる。まずは手足を打ち抜いて動けなくするべきだろうか。
「はっ、そのようなおもちゃで妾を脅しているつもりか?片腹痛いの。」
「なら、その身に味あわせてやるよ。」
「よせよせ、お主をどうこうするつもりはないと言ったじゃろう。本当のところは妾にもお主を元の世界に帰す方法はわからんのじゃ。」
「わからない、だと…?」
「妾とて、お主がいきなり現れて驚いたのじゃ。あれじゃ、住居不法侵入というやつじゃ。不審者を警戒するのは普通のことであろう?」
確かに、自分の家にいきなり見知らぬ人がいたら驚くし、警戒感も抱く。
「妾も鬼ではない。お主がこの世界でも生きていけるように選別をやろう。そういえば、お主名は何と言ったか。」
「水月、春野水月だ。」
「水月か、東方の島国、大和天主国の人々と似た響きを持つ名前じゃな。水月よ近うよれ。」
どうやら、シルヴィアには俺を害する気はなさそうである。なので、その言葉に従い俺はシルヴィアの傍に近づく。
「それじゃ駄目じゃ。もう少し屈め。届かんじゃろうが、この戯け。」
いちいち口の悪い幼女だ。神様ってのはみんなこうなのか?釈然しないが言われた通りにしゃがむ。
「ん、ちゅ。」
「ん!!!!!」
いきなり、唇を奪われた。押しのけようとするが、体が上手く動かない。決して役得であるとか思っていない。俺はロリコンじゃない。
「ん、ぷはっ…どうじゃ?」
「どうじゃって、いきなり何しやがる!?」
「お主にこの世界の基本的な知識と、回復魔法それと言語理解の魔法を与えたのじゃ。」
そういう、シルヴィアの顔は真っ赤だ。
そして言葉に呼応するかのように俺の頭の中に、今まで無かった知識が流れ込んできた。この世界の基本的な情勢や地理、歴史そして回復魔法の使い方が。
「ヒールにキュア?それと、リザレクション?」
「むっ、リザレクションじゃと?」
頭の中に浮かんできた魔法を何気なく口に出したら、シルヴィアに怪訝な顔をされた。
「お主、リザレクションが使えるのか?」
「ああ、使えるかどうかはわからないが、使い方は頭の中に浮かんできた。それがどうかしたのか?」
「馬鹿な!リザレクションは高位の回復魔法で、人族で使えるものなどほとんどおらんのじゃぞ?」
「そんなこと言われても、使い方わかるぞ?」
「少し待つのじゃ……!!!なんじゃ、お主のこのステータスは!?」
ステータスか、まるでゲームのような響きだ。
「ステータスってそんなものが見えるのか?」
「仕方があるまい、水月もう一度しゃがめ。心配するな、今度は唇を奪うようなことはせん。ただし目は瞑れ。」
言われた通り目を瞑り、その場にしゃがむ。
「***********、***********。」
聞いたことのない言語でシルヴィアが何かを呟いている。与える?とか瞳?といったニュアンスであろうか。なるほど、これが言語理解ということか。
「もう良いぞ。左目魔力を集中して妾を見てみるのじゃ。」
特に何か変わった感じはしないが、言われた通りに…
「なあ、魔力ってどうやって集中させるんだ?」
思ってみれば、魔力の使い方なぞ、俺が知っているわけがない。
「そうじゃったな、妾の手を握れ。」
シルヴィアの手を握る。シルヴィアの手は暖かい光を放っており、理解した、これが魔力であると。
左目に魔力を集中する。すると頭の中にシルヴィアのステータスと思われる情報が浮かび上がってきた。
シルヴィア(Lv?)自称神 女 ?歳 神殿の守護者
HP:?
MP:?
攻撃力:?
防御力:?
STR:?
VIT:?
DEX:?
AGI:?
INT:?
LUK:?
スキル
?????
?????
?????
・
・
・
「これはなんだ?これがシルヴィアのステータスなのか?」
「そうじゃ。まあ、妾は隠匿のスキルでステータスを隠しておるから、見えぬであろうが。ほれ、今度は自分のステータスを見てみるのじゃ。」
シルヴィアに促され自分のステータスを見る。
春野水月(Lv124)人族 男 15歳 考古学者
HP:1220
MP:1800
攻撃力:1260+200
防御力:1420+50
STR:280
VIT:330
DEX:380
AGI:350
INT:520
LUK:400
スキル
回復魔法:ヒール・キュア・リザレクション
言語理解
剣術
柔術
射撃
魔眼:鑑定
隠蔽
「ほう、これが俺のステータスなのか。これの何かおかしいのか?」
「おかしい!おかしいわよ!なんなのよ、このステータス!こんなステータスの人族見たことないわよ!!本当にリザレクション使えるし!」
よほど俺のステータスはおかしいのだろう。シルヴィアの口調が変わっている。
「シルヴィア、口調。」
「あっ、ん、んんっ。はっきり言っておくのじゃ、人族のレベルは60に届けばいいほうであると言われておる。レベル124など見たことないのじゃ!」
あ、口調が戻った。多分、さっきの口調がシルヴィア本来の口調なのだろう。なぜ、口調を変えているのかは突っ込まないでおく。
「とにかく、水月のステータスは伝説の英雄クラスなのじゃ。それだけのステータスがあればこの世界でも生活することはできるであろう。じゃが、隠蔽でステータスを改ざんするのじゃぞ?そうでもしないとお主はいろいろ生きづらくなるはずじゃからな。」
なるほど、この世界では人族というか、人類は魔族と戦争中である。このステータスがばれると、きっとその戦争に連れ出されることになるのであろう。そんなことはごめんである。俺は平和主義者の日本人なのだから。
「というか、水月お主、これまでどのような生活を送ってきたのじゃ?異世界人であるとはいえ、このステータスは異常じゃ。」
「そうだな……」
俺はこれでの生活をかいつまんでシルヴィアに話した。
小さなころから祖父の遺跡の探索に付き合い、海外に行く機会が多くあった。そのため、日本語、英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語を話すことができる。また、祖父から護身術を幼少のころから教わっており、剣術や柔術にたけ、銃器も扱える。祖父曰く、海外でテロリストと戦闘になっても鎮圧できるように鍛えたとのこと。サバイバル技術にも長けており、祖父に一週間アマゾンに置き去りにされた経験あり。熊や猪ならナイフ1本あれば狩れる。ライオンや豹などは銃器がないと厳しい。
「お主の世界では、それが普通なのか?」
シルヴィアに憐れむような目で見られた。
「いや、普通の高校生はこんな体験したことないんじゃないか?」
「なるほどな、水月のステータスが高いのはお主の世界で、異常な体験をしていたからなのじゃな。その経験がこの世界に来て、経験値として反映されそのようなステータスになったのじゃな。」
なんか、勝手に納得された。そうだ、今のうちにステータス隠蔽しておくか。
春野水月(Lv12)人族 男 15歳 考古学者
HP: 122
MP:180
攻撃力:126+200
防御力:142+50
STR:28
VIT:33
DEX:38
AGI:35
INT:52
LUK:40
スキル
回復魔法:ヒール・キュア
剣術
射撃
「なあ、ステータス、こんな感じでいいのか?」
「うむ、少し高い気もするが、まあ、許容範囲じゃな。それじゃ、そろそろお別れじゃ。」
「そうなのか。まあ、世話になったなシルヴィア。キスされたのは驚いたが。」
「なっ!折角忘れてたのに!!」
顔が真っ赤である。そして、口調も戻った。意外と初心な奴だ。
「口調、口調。」
「あんたが余計なこと言うからいけないんでしょう!じゃなかった、お主が余計なこと言うからいけないのじゃ!」
別に言い直さなくてもいいのに。本当はシルヴィアは素直でいいやつなんじゃないだろうか。きっと、役作りのために偉そうな口調をしているのだろう。そう思えてくると、偉そうな口調が可愛く思えてくる。
「なんじゃ、その目は?妾に何か言いたいことでもあるのか?」
「ああ、ありがとうな。俺にここまで親切にしてくれて。助かったよ。」
「うむ、その感謝の心を忘れる出ないぞ。では、本当にお別れじゃ。お主をこの神殿の入り口まで転移させる。さらばだ水月よ、機会があればまた会えるであろう。それまで壮健であれ。」
「シルヴィアこそ元気でな。またな。」
ここに来た時と同じように体が光に包まれた。
「水月は行ったわね。」
「シルヴィア様があそこまで人間に肩入れするとは思いませんでした。いくら、シルヴィア様が異世界から呼び出したとはいえ。」
「フィー。いつからそこにいたのよ?」
「最初からです。私はシルヴィア様の護衛でもありますから。異世界人がシルヴィア様を害する恐れがありましたから。」
「全く、フィーは過保護なのだから。」
「ところで姫様、彼は姫様の目的を達成できる人材なのですか。」
「姫様は止めて。そうね、水月ならもしかしたらお父様を止めてくれるかもしれないわ。なにせ、私の呼び出した勇者様なのだし。」
「前代未聞ですよ、我々が勇者を召喚するなど。しかも、星の位置も揃っていない状態で行うなど自殺行為に等しいですよ。今後はやめてくださいね。」
「私を誰だと思っているのよ。必ず成功させる自信があったわ。それに、特に何も異常ないじゃない。」
「…姫様、もしかしてお気づきでないのですか?」
「だから、姫様は止めなさい。気付いていないって何よ?」
「こちらをご覧ください。」
「鏡?これがどうし…た…の……?って何よこれ!どうして私小さくなっているのよ!?」
「やはり気付いておられなかったのですね。あの少年を召喚した時には既にそのお姿でしたよ。きっと魔力を使いすぎたのでしょう。何日かすれば元に戻ると思われます。」
「あっ、だから水月は幼女幼女、私のこと言っていたのね。」
「そうですね、今のシルヴィア様は立派な幼女です。」
「あんたまで幼女言うんじゃないわよ、ふっとばすわよ!」
「シルヴィア様、今日は私と一緒にお風呂に入りましょう。隅々まで洗ってさしあげます。シルヴィア様だけでは心配ですので。」
「だから、子供扱いするんじゃない!!」




