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プロローグ

どうしてこうなった。

俺は祖父とともに遺跡の探索に来ていたはずであった。それなのに、遺跡から外に出てみると、そこには地球では見たことのない生き物が3匹、カマキリのような生き物が2匹とエビもしくはサソリのような生き物が1匹いた。大きさは2~3mくらいか。

その3匹と対峙しているのは、中世ヨーロッパの騎士のような集団である。数は全部で5人、いや、倒れている人を含めれば8人おり、1人以外は片手剣に盾という装備である。最も歳を取っていると思われる騎士だけは、身の丈ほどもある両手剣を2本、軽々と二刀流で振り回している。

遺跡の入り口にいる俺に気付いた不思議な生き物が1匹(大きなカマキリ)、こちらへと近づいてくる。どうやら俺も敵、もしくは捕食対象として認識されたらしい。

なぜ、こんな環境に身を置かれているのかというと、話は1週間前まで遡る。




この春から俺、春野水月は高校へと進学し、1学期を何事もなく過ごし、夏休みを迎えた。

終業式を終え帰途に着くと、玄関を開けるとじいちゃんがカバンを持ち待機していた。


「待ちわびたぞ水月、今から出かける。5分やるから準備してこい!」


「はい?じいちゃん、もしかして、」


「詳しい説明は後じゃ、いいから準備してこい。飛行機の時間に間に合わなくなるではないか。」


俺のセリフに被せてきたじいちゃんの言葉で、俺はいつものことかと理解した。

じいちゃんは、昨年定年を迎えるまで考古学者として大学で教鞭をとっていた。しかも、考古学者として考古遺跡の分野で世界的な権威であり、国内外問わず様々な場所に遺跡調査へと赴いていた。その際、俺も同行させられることが多く、今回も同じなのであろう。


「にぃ、頑張って。これ、にぃの荷物。」


 リビングから出てきた黒髪の女の子、俺の1つ下の妹である朔夜が黒いキャリーバックを渡してくる。

 キャリーバックの中身を確認すると、俺の着替えや食料などが入っており、すでに旅行のための準備がされていた。


「おう、ありがとう朔夜。いつもすまないな。」


「うん、これも奥さんの当然の務め。ちゅうしてくれればそれでいい。」


「あのな朔夜、いつも言っているが俺とお前は兄妹だ。日本じゃ兄妹では結婚できないし、キスもしちゃダメなんだ。」


「残念。でも、いつかはにぃを誑かして見せる。」


 朔夜は文武両道で、家事もこなしており、対外的には天が二物を与えたといえるほどの完璧超人といえる。しかし、やはり天は二物を与えず、昔から俺のお嫁さんになるといって聞かない。これが小さな頃の話であれば、微笑ましい話である。しかし、朔夜は中学生になっても言い続けており、時々既成事実を作ろうと画策するから困ったものである。


「おほん、2人してラブラブするのは結構じゃが、水月時間がない。はようせんか。」


 ちなみに、朔夜の行動について他の家族はあまりうるさく言わない。親父(大学教授)は俺と朔夜が結婚すれば朔夜を嫁に出すことがないと、喜んでおり、お袋(おたくで腐女子)はエロゲーやラノベみたいな展開で萌えるじゃないと、朔夜を応援する始末である。

じいちゃんもばあちゃんもあまり気にしていないため、たまに俺がおかしいんじゃないかと思う始末である。


「わかったよ、んじゃ、行ってくるな朔夜。」


「ん、行ってらっしゃい。帰ってくるまでににぃを落とす方法考えておく。」


朔夜の頭を撫でてから、じいちゃんが呼んだと思われるタクシーに乗り込み、空港へ向かった。

その後1日近い移動時間をかけ、目的地である遺跡に到着した。


遺跡は砂漠にポツンと建っており、周りは見渡す限り砂、砂、砂である。よく今まで見つからなかったものである。

遺跡はまるでパルテノン神殿のような建て方がされており、はっきり言って砂漠には似合わない。


「****、***************。」


「*********、******、************。」


「*****、***************、************。******、************。」


 じいちゃんは現地人と思われる男性と以前に他の遺跡探索の際にあったことのある白人男性と何やら話している。俺も言語はいくつか理解できるが、今の言葉が何語であるかはわからなかった。ちなみに、じいちゃんは30近い言語がわかるらしい。

 現地の男は遺跡のそばに併設されたテントを指しながら、何かを説明しているように思える。


「水月、どうやらあそこのテントを探索拠点として使っていいそうじゃ。」


「了解、探索はすぐにするのか?」


「いや、今日はこれまでわかったことをケビンに教えてもらう。本格的な探索は明日からじゃな。それと、いつもの装備も揃えさせた。それの確認の今日中にやっておけ。」


「久しぶりだね、水月ちゃんだったかな?いやー、君みたいなかわいい女の子がいるといろいろやる気が出るよ。」


 ケビンはかつてのじいちゃんの教え子で現在アラフィフになる、ロマンスグレーな男性である。しかも、出会った時から俺のことを女と勘違いしている。一応既婚、三児の父である。

 確かに俺の容姿は母に似て中性的だ。もう一度言う、中性的だ。決して女性的ではない。


「お久しぶりですケビンさん。それと、俺は男です。」


「ああ、それ知っているよ。こんな可愛い子が~ってやつだろう。最近はやっている奴だね。」


そういえば、ケビンはおたくでもあった。日本に留学に来た際に嵌ったらしい。


「違います、本当に男です。」


「そういえば、僕の息子が、水月ちゃんの写真を見せたらえらく気に入ってね、今度紹介してくれと言われたよ。どうかな、うちの息子と付き合い気はないかい?」


「はあ、もういいです。」


 このやり取りの間じいちゃんは爆笑していた。

 

その後は、ケビンから遺跡についての情報を聞き、ケビンから受け取った装備を確認する。

俺がケビンから受け取ったのは2丁の拳銃と1振りの日本刀である。もちろん、日本では銃刀法違反で捕まる代物だ。しかし海外、こと治安があまりよろしくない地域においては日本のように警察組織はあてにならないことが多い。そのため、自衛のために武器が必要になってくるのだ。

ちなみに、日本刀を持っているのは海外の人に受けがいいからである。彼らの中には日本に未だ、侍や忍者がいるものであると真剣に思っているため、ジャパニーズサムライとしてコミュニケーションが取りやすくなるのだ。

装備の点検を終えると、その日は疲れていたのかすぐに深い眠りについた。





 探索を始めて5日間はこれといって特筆すべきことはなかった。しかし、6日目に転機が訪れる。遺跡の地下が見つかったのである。


 遺跡の地下への道を見つけたのはじいちゃんで、俺はじいちゃんとケビンとともに地下の探索をすることとなった。

 地下に入り少し進むと、大きな広間に出た。その広間には扉と思われるものが3つあった。


「ふむ、ここは墓かもしれんな。」


「そうですね。ただ、奇妙な造りの遺跡ですよね。」


 そう、この遺跡は今まで見てきた遺跡に比べ、おかしさ満点である。見た目がギリシアであるのに、中に入るとまるでエジプト、そしてこの地下はインドの遺跡のようである。こんな遺跡は見たことがなかった。

 事前にケビンから炭素年代測定の結果を聞いていなければ、誰かが作った悪戯であると判断しただろう。


「とりあえず、扉が開くか試しているとしようかの。ケビンが右じゃ、水月は左を調べるのじゃ。」


 じいちゃんの指示に従って、左側の扉の前に来る。扉は石で出来たもので、そう簡単には開きそうにない。たぶん、中に何かしら封印してあるのだろう。

 試しに石扉を軽く押してみると、


ゴゴゴッ


「おっ、少し動いた?」


 力を入れ、さらに強く押す。


ゴゴゴゴゴゴッ、バタン


 石扉は部屋の中に向け開いた。


「じいちゃん、こっち開い……」


 次の瞬間、部屋から眩い光があふれだし、俺の全身を包み込んだ。


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