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異世界を信じる者たちへ 〜何故かエルフになった僕〜  作者: さつき けい


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第百一話・騎士令嬢の仕事とは

すみません、一部に大きな不備がありましたので直しました。


「ではまた夜にでも」


再会したばかりで重い話もアレだろう。


「せっかくの祭りですから、殿下もご令嬢も楽しんで来てくださいね」


僕は精一杯笑顔を見せる。


「そうだな。 お前たちも行きたいだろうし」


僕たちが立ち上がろうとしたところへ、近衞騎士に案内されたティモシーさんが入って来た。


「エンデリゲン殿下、何か御用と伺いましたが」


きちんと騎士礼を取り、顔を上げた途端、ティモシーさんが固まった。




「クロレンシア様?」


「はい。 レンシアよ、ティモシーさん」


三人は知り合いだったらしい。


ティモシーさんが少し嫌そうな顔をしたが、すぐにいつもの穏やかな顔に戻る。


「知り合いというより、騎士養成学校時代の先輩後輩ですが。 お久しぶりでございます」


一応、男女は別ではあったが、校舎は同じ敷地にあったそうだ。


王族の前なのでティモシーさんは言葉が固くなっている。


「実際にお会いしたことはございません。 ただ殿下の従兄妹様でいらっしゃいますので、お噂はかねがね伺っておりました」


学年は三つも違うため、校内で顔は見たことはある程度。


 ポカンとする僕に王子が説明を加える。


「この従兄妹は女のくせに本当に剣術が好きでな。 学校で剣術の優秀者だったティモシーに手合わせさせろと煩かったんだよ。


まあ、それは絶対に阻止したけどな」


勝っても負けてもティモシーさんに利益は無い。


ていうか、公爵令嬢に剣を向けた時点で周りから怒られる。


怒られるだけなら良いが、ティモシーさんは教会派なので……考えただけで面倒なことになるよな。


そう思うと色々ヤバイんじゃないか、この令嬢。




「殿下、もう私も大人です。 こうして、ちゃんと近衞騎士隊員として王族の護衛の仕事もしております!」


クロレンシア嬢はプンプンと怒っているという顔で王子を睨む。


同じ令嬢でもケイトリン嬢とはだいぶ違う。


さすが上位貴族といったところか。


 艶やかな栗色の髪とくっきりとした目鼻立ちに青い目、透き通るような白い肌。


辺境で王族を警護しているはずなのに、実戦に使われた様子の無い剣と柔らかそうな白い手。


どう見ても近衞騎士団に所属しているだけで仕事はしてないな。


名ばかりの騎士なのだろう。


これが王都の国軍か、呆れた。




「殿下、ティモシーさん。 お二人はこれから祭りの見学に行かれますか?」


と、訊ねてみる。


クロレンシア嬢を連れて行くなら、警護が大変だろうな。


「いえ、私はケイトリン嬢の護衛の任務がありますので」


「え、ティモシーさんが女性の護衛ですって!?」


クロレンシア嬢が声を上げてティモシーさんに詰め寄る。


「も、もしかして、高齢のご婦人とか、お子様とか?」


そんなことを気にするなんて、クロレンシア嬢はまさかティモシーさんのことを?。


「いや、ケイトリン嬢は辺境の町の領主令嬢だよ。 我の側室候補らしいが」


王子の情報は嘘っぽい。


「金色の髪の、優しい瞳をした女性だよ」


この嫌らしい笑みを浮かべる王子をヨシローに見せたら面白いかもな。


黙ってやり取りを見ていたら、外出するかしないかで揉め出した。


僕たちは気配を極力薄め、警護の騎士たちが王子たちの話にハラハラしている間にスルリと部屋を出る。


不敬?、知らん。 魔物には関係ない。




 僕たちは部屋に戻って休むことにする。


雨の中での作業は僕には結構大変だった。


建前上、モリヒトをエルフとし、僕はその眷属精霊だと誤解されるように魔法を使っていたからだ。


そのせいで何となく、まだ疲れが取れていない。


「土魔法は疲れる」


『ですが、見事に使いこなされていらっしゃいましたよ』


土魔法専門家のモリヒトに褒められると少し嬉しい。


しかし、なんだってそんなに僕に土魔法を使わせるんだろう。


『魔法を使える者が咄嗟に使う魔法は、自分の属性魔法が多いです』


まあ、そうだろ。


消費魔力が僅かだし、体にも負担が少ない。


「あー、そうか。 モリヒトは僕が一番得意な魔法を土魔法にしたいんだな」


つまり属性魔法を使わせない気だ。


だけど僕の属性は、まだ自分でも分かってないから使えないってのに。


何も答えないのは肯定だよな。




 部屋でのんびり過ごしていたら日が暮れた。


相変わらず屋敷の外は騒がしいようだが、僕たちが居る場所は静かなので、ダラダラと過ごしている。


あれから辺境伯も忙しいらしく、昼食も夕食も何も指定が無かったから、部屋に運んでもらった。


夕食後、辺境伯邸の執事が「殿下からの呼び出し」を告げる。


後でこっそり行こうと思ってたのに。


「分かりました、すぐに伺います」


執事さんはホッとした顔になる。


王族に公爵令嬢に、得体の知れないエルフだもんな。


いくら祭り期間中だけといっても気が張るね。


お疲れ様。




 貴賓客用の離れ、王子の部屋に向かう。


「失礼します」


「クロレンシアもティモシーも帰ったぞ」


帰ったといっても公爵令嬢は離れ内にある女性用の部屋だし、ティモシーさんはケイトリン嬢の護衛を交代して辺境伯邸に詰めているそうだ。


「わざわざお呼び頂きまして」


前回は色々聞いてしまったが、あれからまた何か変化はあったのだろうか。


 モリヒトが王子の従者に土産の薬草茶を渡す。


土産を渡し忘れたのは、ここに王子が来ているとは思っていなかったせいだ。


お疲れ様の護衛や従者諸君、薬草茶で体を癒してくれ。




 お茶が出て来るのを待たずに王子は話し出した。


予想通り、ティモシーさんの姉の件である。


「教会には『異世界人の記憶』があるかどうかを判定出来る魔道具が存在するらしくてな。


それを使って鑑定しろと騒いでいる奴らがいるそうだ」


うわー、嫌な奴。


「だからと言って、殿下が辺境地に来る理由は?」


クロレンシア嬢をダシに使ってまで急いで戻って来た理由は何だろ。


またティモシーさんを迎えに来たのかな。


前回、断られたはずだが。


「奴らは、その魔道具を使えるかどうかを調べるために、現在、判明している『異世界の記憶を持つ者』を王都に呼ぶつもりだ」


なんてこった。


次の標的はヨシローだったのである。



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