42
今日は闇の日。つまりは一般の人はお休みの日。でも大和さん達騎士の人達には関係がない。騎士団の人達の休みはシフトで決まってるから、闇の日でも出勤がある。
大和さんの朝は基本的に変わらない。私より早く起きて1時間くらいのランニング。その後瞑想をして、剣舞の修練。そして出勤。
今朝には私の魔力は全回復していた。
1度くらい大和さんより早く起きていたいんだけどな。そんなことを思いながらラフな服に着替える。
今日は朝の内にテーブルランナーを作って、お昼から神殿に行く予定。その前に大和さんの朝御飯。食料庫で食材を見る。
ハムに卵にパンに野菜。昨日のラタトゥイユ風鳥肉の煮込みのスープを少し薄めてなんちゃってスープにする。この中に野菜の荒みじん切りにした物を入れる。
今日はお昼は要らないってことだから、朝の用意だけ。準備をしておいて庭に出る。
「あれ?咲楽ちゃん、早いね」
「え?今からですか?」
「そう。今から瞑想だよ。今日もあれやってくれるの?」
「あれ?」
「剣舞が終わった後のぎゅってヤツ」
「えぇっと……した方がいいですか?」
「して欲しいかな」
「わかりました」
「今日はちょっと長くしてね」
ちょっと笑いながら大和さんが言う。あ、楽しんでる。
「楽しんでますね?」
「咲楽ちゃんが自分から抱きついてくれたのが嬉しくてね。じゃあ瞑想するから待ってて」
大和さんが瞑想にはいる。ナイオンは側にいてくれた。
瞑想したとたんに大和さんを覆う炎のような赤い靄と、大和さんに巻き付く緋龍。
「あの靄って何なのかな?ナイオンも見えてる?」
ナイオンはお座りをしながら大和さんを見ている。大和さんって瞑想をしている時はどんなことを思っているんだろう。どんな景色が見えてるんだろう。
瞑想をしている大和さんはすごく綺麗で、私はずっと見ていたいと思う。けど、マイクさんのように近寄りがたいって言う人もいる。
そういえばレベッカさんが『よっぽど惚れてるんだね』って言ってたなぁ。大和さんを嫌いな人っているのかな?少し厳しいけど優しい大和さんしか私は知らない。
やがて瞑想を終えた大和さんは舞台に移動する。いつもならサーベルを手にとってすぐに舞い始めるけど、今朝は違った。
鞘のままのサーベルを両手で捧げるように持って、瞑想の時のように座って深く一礼。そのまま口上を述べる。
『只今より、常磐流第28代が2子、常磐大和、神々に舞を奉る。どうぞ御照覧あれ』
本番と同じ様にって事なのかな。もう一度深く一礼して立ち上がった大和さんはサーベルの鞘を元の台に置くと、舞い始めた。
大きな枝垂桜の前で舞う大和さんは凛々しくて格好よくて綺麗だ。
今のところ、あの光景は、枝垂桜の前の大和さんは私にしか見えないらしい。もっとたくさんの人にも見えたら良いのに。
大和さんの舞が終わる。私はゆっくりと舞台の側に行った。
「凄く綺麗でした」
そう言って大和さんに抱きつく。
大和さんからの答えがない。
「大和さん?」
顔をあげると至近距離に大和さんの顔があった。
「失敗したか」
大和さんが笑って言う。
「失敗?」
「何でもないよ。家に入ろうか。覗いてる奴がいる」
え?誰?
「ゴットハルト、こんな時間に何をしてるんだ?」
大和さんが声をかけるとゴットハルトさんが庭の入り口に姿を見せた。でも入ってこない。
「あぁ、結界具の設定か」
一旦家に入った大和さんがゴットハルトさんも庭に入れるようにする。
それでもゴットハルトさんは動かない。
「プロクスの時と同じだな」
大和さんがそう言って、ゴットハルトさんの背中を押しながら庭に連れてくる。そのまま四阿に座らせた。
ナイオンが側に来た。
「ゴットハルトさん、大丈夫なんですか?」
「大丈夫。少し呆けてるだけみたいだから。今日は本番同様にやったからね」
「あの座って口上を述べた動きですか?」
「座って……瞑想の時は結跏趺坐ね。口上の時は胡座だよ」
「違うんですか?」
「やってみるとわかるんだけど、全然違う」
「私には分かりません」
「結跏趺坐なんてしてる人は、そう居ないよ。俺も瞑想の時くらいだ。分からなくて当然だね」
「あれは、あれはなんだ?この季節にフラーの花畑?」
あ、ゴットハルトさんが復活した。
「あれ?オレはいつの間にこんな所に?」
「お帰りゴットハルト。そしておはよう」
大和さんが笑いながら言う。
「トキワ殿!?」
「ここは俺達の家の庭。こんな早くから何してたんだ?」
「朝早く目が覚めたから散歩をしていた。そうしたらシロヤマ嬢が見えて、近付いたら舞っているトキワ殿と、フラーの一面の花畑とその中で立っているシロヤマ嬢が見えた。あれは何だ?」
「まぁ、家に入れ。咲楽ちゃん、温かい紅茶を出してあげてくれる?」
「はい」
ゴットハルトさんを連れて家に入る。
「お願いしても良い?シャワーだけ行ってくる」
ソファーにゴットハルトさんを座らせて、大和さんはシャワーに行った。私は紅茶の準備。
「シロヤマ嬢、貴女はあの景色が見えているのか?」
ゴットハルトさんの声が聞こえる。
「私の見えている景色とゴットハルトさんの見えていた景色は違うと思います。あの景色はその人が思い浮かべる『最もフラーらしい景色』だそうです」
「そうか。あの花畑の中にその虎と立っていた貴女は、フラーの妖精のようだった。思わず見とれてしまった。悪かった。迷惑をかけたんじゃないだろうか」
紅茶をサーブするとゴットハルトさんは軽く礼をしてから一口飲んだ。
「上手いですね。貴女は何でもできるんですね」
「私はこんな事しか出来ませんよ」
「上手い紅茶を淹れられる人はそういません。もちろん訓練を受けたメイドなんかは別ですが。美味しく飲んで欲しいと言う人を思う気持ちがないと上手く淹れられないと家の執事が言ってました」
あぁ、そうか。ゴットハルトさんも貴族様だから、執事さんとか居るお家だよね。
「いつか貴女を私の領にお招きしたいですね。貧乏領地ですが綺麗な自然はたくさんあるのですよ」
「ゴットハルト、咲楽ちゃんを口説くのは、その辺にしておいてもらおうか」
笑いを含んだ、違った、はっきり笑ってる大和さんの声が聞こえた。大和さんはリビングの入り口で、腕を組んでこっちを見て立っていた。
「口説くだなんてそんなことはしていない」
「『いつか貴女を私の領にお招きしたい』とか言ってたが?」
「いつから見ていた?」
「紅茶を誉めている辺りかな」
「早く声をかけてくれ」
項垂れるゴットハルトさん。あ、そうだ。
「大和さんは飲み物は?」
「後で自分でやるよ。あ、お水くれる?」
「お水ですか?」
「そう。咲楽ちゃんが出した水」
『ウォーター』の事?コップにウォーターでお水を出す。疲れがとれますようにと願いながら。
「どうぞ」
「ありがとう」
一気にその水を呷る大和さん。
「何を見た?」
「何をって、さっきも言ったが。この季節にフラーの花畑とそこに立つシロヤマ嬢、その前で舞っているトキワ殿だ。あれは何だ?」
「なぜそこまで強く作用する?あっちではそこまでのは居なかったはずだ。何が違う?まだ修練中だ。本番同様とは言っても……」
「トキワ殿?」
「大和さん?」
大和さんが何かを考え込んじゃった。
「シロヤマ嬢、トキワ殿はどうしたんですか?」
「分かりません。けどゴットハルトさんにもフラーの景色が見えた。その事について考えてるんだと思います。プロクスさんも同じ様になっちゃったので」
「ゴットハルト、明後日の予定は?」
不意に大和さんが聞いた。
「この月一杯は王都での住居探しと、ダニエル達に付き合うくらいだが」
「明後日、ちょっと付き合ってくれ。確かめたい」
「確かめる?何を?」
「もう一人戻す役割を……ナイオンか?」
答えずに何かを考える大和さん。
「こういうことは良くあるのですか?」
「私は見たことがありません。大和さんが一人の時は分かりませんけど」
ナイオンが大和さんをソファーに押し倒して顔を舐め出した。
「分かった。分かったから、止めろ。悪い。顔を洗ってくる」
ナイオンは何事も無かったかの様にリビングの隅で寝そべった。
「あの虎は何をしたのですか?」
「大和さんを現実に引き戻したんだと思います」
「悪かった。つい考え込んだ」
そう言って大和さんが戻ってくる。
「確かめたい事があるんだが、時間がかかるかもしれない。俺も今から出勤だし、休みの日でないと確かめられないからな」
「あぁ、悪かった。朝早くにお邪魔してしまって」
「いや、招いたのはこっちだし、ちょっと面白いものも見せてもらった。ゴットハルトが咲楽ちゃんを口説いてるところとか」
「口説いてない!!お暇するよ。明後日のいつ頃だ?」
「別に今くらいでも良いぞ。その場合は咲楽ちゃんを施療院まで送っていくのも一緒だが」
「まぁ、その辺は考える。ではまた明後日にお邪魔するよ」
ゴットハルトさんは帰っていった。
「大和さん、時間、良いんですか?」
「ちょっと急がなきゃだね」
急いでスープを温め直して、ハムと卵を炒めて、パンを少し焼く。
「お水で良いですか?」
「うん。ありがとう」
本当に慌ただしく朝食を食べると、出勤の準備に2階に上がっていった。
お皿を下げて洗う。
「咲楽ちゃん、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
私のおでこにキスを落として出勤する大和さんを、ナイオンと見送る。
お見送りが出来るのも、闇の日だけになるのかぁ。ちょっと寂しい。そんなことを考えながら結界具を作動させる。
「ナイオン、ちょっと部屋に行ってくるね」
テーブルランナーの布を選ぶ為に自室に戻る。えっと、ホアの青系の布とアウトゥの赤系の布とコルドの白い布。
私の夏の青色と言ったらテレビで見た青の洞窟の色だ。光を受けて輝く、吸い込まれそうな青。実際に見たかったな。あの家族では無理だっただろうけど。旅行なんて修学旅行しか無かった。帰ってきたら兄に一晩閉じ込められていたし。旅行なんて生意気だってよく分からない事を言われたっけ。この世界だったら大和さんと見ることができるかな。
ちょっと感傷に浸ってしまった。階下から物音がする。結界具は作動させたし、ナイオン?
部屋を出ると階段の2段目に足をかけたナイオンが居た。
「ナイオン、どうしたの?2階は駄目って大和さんが言い聞かせてから、絶対に登ろうとしなかったのに」
ナイオンの近くまで行くと、身体を擦り付けてくる。
「心配してくれたの?ありがとう。大丈夫だよ。ごめん、布だけ取ってくるね」
そう言って自室に戻る。ナイオンは階段の下で大人しく待っていた。
アウトゥの赤は朱色っぽいこの布に紅葉とか銀杏とか刺繍してみよう。後はコルドの白。雪だるまとか、雪の結晶とかも刺繍して、ランタンフェスティバルっぽくしようかな。
布と裁ち鋏、刺繍の道具を魔空間に入れて階下に戻る。
前と同じようにダイニングのテーブルで作業する事にする。
まずはどの季節にしよう?今はアウトゥだから朱色っぽい秋からかな。
布を裁って端の始末。三つ折にして細かく縫う。後は刺繍。紅葉と銀杏とこっちの葉っぱとか?庭に木があったから葉っぱを見てこようかな。
「ナイオン、ちょっと庭に出るよ」
そう声をかけるとナイオンは付いてきてくれた。
庭の木の葉っぱは面白い形をしていた。紅葉を三股にしたような形。楓みたい。でも先端が丸い。たまに二股になってるのはハートみたいになってる。
夢中になって見ていたら庭の木立の外から声が聞こえた。
「あら?貴女がプロクスが言ってたお嬢さんかしら?」
そこに居たのは40歳位の優しそうな女の人と、プロクスさんに似た顔立ちの50歳位の男の人。
「プロクスさんにはお世話になっています。あの……」
「あぁ、ごめんなさいね。私はプロクスの母でアウローラ・リシアよ」
「サクラ・シロヤマです。中にどうぞ」
「あらあら、ダメよ。よく知らない相手を簡単に家に上げては」
「そうだな、用心は必要だ。今は黒き狼殿は留守なのだろう?私はプロクスの父、ウィフレット・リシアだ」
「プロクスさんのご両親なんですよね。どうぞお入りください」
「もし我々が嘘を吐いていたらどうする?本当にプロクスの父とは貴女には分からないだろう」
「それは……はい。すみません」
「何というか、守ってやりたくなるお嬢さんね」
「そうだな。プロクスが世話を焼きたがるのも分かる。黒き狼殿がいるから安心だとは言っていたが」
「あの、ご挨拶にも伺わずにすみません」
「良いのよ、挨拶なんて。気にしないで。リリアちゃんとも仲良しなんでしょ?リリアちゃんが嬉しそうに話すものだから、カトリーヌが貴女に会いたがってね。あのときは大変だったわ」
「カトリーヌさん?」
「プロクスの妹よ」
「アウローラ、そろそろ時間だ」
「そうね。じゃあシロヤマさん、またお話ししましょうね。家にも遊びにいらっしゃい」
「はい。ありがとうございます」
お2人は神殿の方に歩いて行ってしまった。
「ナイオン、戻ろうか」
綺麗な葉っぱを何枚か持って、家に入る。
「私は用心が足りないのかな?用心してるつもりなんだけど。ゴットハルトさんにも言われるし、プロクスさんのご両親にも言われるし」
ナイオンが身体を擦り付けてくれる。
テーブルランナーを作ろうと思ったけど、何だか落ち込んじゃった。
駄目だなぁ、こんな事じゃ。大和さんはそのままで良いって言ってくれるけど、甘えてちゃ駄目だよね。
多分こういう状態で刺繍しても、また気に入らなくてやり直しってことになると思うから、刺繍しない状態の端の始末まで進めてしまおう。えっと、次はコルドかな?
この白い布に雪の結晶とか刺繍しようと思ってたんだよね。
こっちの世界にはクリスマスとか無いんだろうな。サンタクロースも知らなかったし。当たり前だけど。
そんなことを考えながら端の始末を進める。もう、全部端の始末をしちゃえ。
次はホアの青の布。端の始末をしているとだんだん無心になっていく。無心になっていくこの時間って結構好きなんだけど、無心過ぎてあっという間に時間が過ぎちゃう。
お昼御飯、どうしよう。食べなくていい気もするんだけど。そういえば日本でもこういうことが良くあって、葵ちゃんに怒られたっけ。葵ちゃんに会いたいな。大和さんはこんな思いをすること無いのかな?お兄さんとか側仕えの諒平さん?とか、会いたくならないのかな。
大和さんに会いたい。でも、お仕事中だし、迷惑だよね。
昼から何をしようと思ってたんだっけ。あぁ、そうだ。神殿に行って食堂のおばちゃん達にお礼を言おうと思ってたんだった。
独りで居ると変なことまで考えちゃう。
私は大和さんみたいに身体を動かすことはない。だから家事とかお裁縫とかで、頑張るしかない。んだけど……。
ナイオンが側に来ていた。ナイオンは私が落ち込んだりすると寄ってきてくれる。
ピガールさんが『癒そうとしている』って言っていたけど、本当に私が暗い考えに囚われると察知して来てくれる。大和さんが居るときは来ないんだけど。
「ナイオン、新しく引き取られた子って落ち着いてきたって言ってたけど、大丈夫なのかな?どんな子なんだろうね」
この部屋はお日様が入ってポカポカと暖かい。だからナイオンもよくこの部屋で寝そべってる。一応布は敷いたけど、寒くないかな?この前大和さんが暖炉に火を入れてくれたけど、あの時の炎って綺麗だったなぁ。
魔力量も戻ったし、異空間の練習でもしてみようかな。でも、どうしたらいいんだろう。確か複合魔法も属性とちゃんとしたイメージだったよね。
ただ、どうしても魔空間が開いちゃって異空間が開かない。
仕方がない。今は一旦諦めよう。
私には火の属性がないから簡単な『ファイア』位しか使えない。属性をいっぱい持っていても使いこなせないと意味がないよね。魔術師筆頭様も属性が多いけど、どうやって使っているんだろう?
複合魔法の事も分からないことの方が多い。『イメージ次第でどんなことでも出来る』って言われたけど、私は人を癒したい。それさえできたらいいと思う。本当は病気の人も治してあげたいけど、そういうのは薬師さんがやってるってライルさんが言ってたし、病気の原因って多岐にわたるから、私では多分分からない。薬は材料が見た目とかキツいのが多いって言ってたし。栄養ドリンクみたいなのは作れるって言ってたっけ。いつか作り方を教わりたいな。
3の鐘が鳴った。もうそんな時間?お昼ご飯、ほんとにどうしよう。食料庫の野菜をいくつか出して野菜スープを作る。これにバタールを浮かべてチーズをのせて、オーブンへ。チーズが溶けて焦げ目がついたら野菜グラタンスープの完成。こんな料理名があるのかは知らないけど、美味しいからいいの。玉ねぎで作るオニオングラタンスープだけど、野菜を食べたいって色々入れてたらこうなった。日本でよく作ってたスープの1つ。あの兄もこれは美味しいって食べてくれてた。肉を入れろとかニンジンは入れるなとか五月蝿かったけど。
温かいスープを飲んだら気持ちが落ち着いた。昼からは神殿に行こうと思ってたんだっけ。もう少ししたら出掛けようかな。
お皿を片付けて自室でお出掛け用の服に着替える。神殿に行くならちょっとしたクッキーとか作ればよかった。今思い付いても遅いけど。この前のクッキーの抜型も色々欲しいな。刺繍糸も欲しい。ジェイド商会に行ってみようかな。神殿の後、時間があったら行ってみよう。ローズさんにも会いたいし。アレクサンドラさんにも会えるかな。
そんなことを考えてたらちょっとウキウキしてきた。
「ナイオン、お待たせ。神殿に行こうか。その後で時間があったら、ジェイド商会に行ってみよう」
結界具の設定は、私と大和さんとナイオンは出入り自由。これ、登録しておきたい。すっかり忘れてた。確か出来たはずだよね。
ナイオンを連れて歩いているとやっぱり目立つみたいで、何人かが見てるし、何人かは神殿の方に走っていった。もしかして、通報とかされちゃったって感じ?
神殿の見えるところまで来た時、誰か走ってくるのが見えた。あれは団長さん?
「シロヤマ嬢だったか。虎が後を付けていると言う通報があってな」
「後を付けてるんじゃありません。一緒に来て貰ったんです。この前も連れていったのに」
「そう言えば見たな、その虎。白い虎なんて珍しい」
神殿の方に歩きながら話をする。
「白い虎はって他の色もいるんですか?」
「シロヤマ嬢達の世界の虎は何色だ?」
「団長さんはご存じだったんですね?」
「一応神殿の警備責任者だしな。それで?」
「基本は黄色に黒の縞模様です。後、実際には見たこと無いけどナイオンみたいな白に黒の縞模様の子と、黒に黒の縞模様の子もいたはず?」
「こっちには赤と黄と黒と白がいるな。白は珍しい」
「属性の色ですか?」
「そうだな。そう言われている。一応虎も魔物の括りだ。属性があるといわれてはいる」
神殿についた。ナイオンを預けにいく。
「あ、この間の虎ですね」
係りの人が覚えてくれてた。
「ナイオン、少し待っててね」
ナイオンは日当たりのいいところで寝そべった。
「ああやって見ると、綺麗なものだな」
団長さんがそう言って笑う。
「シロヤマ嬢、今日はどこに用なんだ?案内するぞ?」
「着いてきてくださるんですか?悪いです」
「虫除けだと思えばいい」
「虫って?」
「男性が近寄ってくると不味いしな。俺がいれば、声をかける度胸のあるやつもいないだろうし」
?よく分かんないけど着いてきてくれるんだよね。
「ありがとうございます。食堂に行きたいんです。おばちゃん達にお礼が言いたくて」
「お礼?」
「たくさん差し入れをいただいたので」
「あれはほとんど趣味だと思うぞ。多分帰りにも渡されるな」
「えぇ?」
食堂に着くと、団長さんがおばちゃん達を呼んでくれた。おばちゃん達は出てくると、口々に「元気になった」と喜んでくれた。
「おかげさまで、元気になりました。たくさん差し入れをいただいてありがとうございました」
そう言って頭を下げる。
「良いのよぉ。お礼なんて。そうだ。また持っていってね」
そう言ってお肉とか、ドライフルーツを渡されたけど……
「あの、これって神殿のじゃないんですか?」
「料理の研究用に持ってきたものだから、気にしない!!持っていきなさい」
困って団長さんを見ると、頭を抱えてた。
「そんなことをしていたのか……」
「みんなに美味しいものを食べてほしいからね。この位当たり前だよ」
少しお話しして食堂をお暇する。
「次は衣装部か?」
「予定は食堂だけだったんですけど」
「そうか。あぁ、コリン嬢が来た」




