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そう言ってキッチンで野菜を出すコリンさん。その中に見慣れない種類の野菜が幾つかあった。黄色い皮に包まれたソフトボール位の大きさの……。


「これ、何ですか?」


「あら、珍しい。ライの実ね。切ったら小さい白い粒が出てくるの。茹でたり蒸したりしてサラダなんかに使うわね」


「切ってみて良いですか?」


ある予感がしてナイフを入れる。芯に当たる部分を取り外して中から出てきたのは……これって……


「お米だ。コリンさん。これってどこに売ってますか?」


「多分東の方の地方のだったと思うわよ。なぁに?知ってるの?」


「私達の居た国の主食です。米って言うんです。茹でても良いんですが、炊いて食べます。これってジャポニカ米?。形は似てるけど粒が少し大きい気がする。パエリアとか出来るかな」


「シロヤマさん、大丈夫?ずいぶん興奮してるわ」


「大丈夫です。最初は白ご飯?でも炊き込みご飯も……あ、お醤油がないし、出汁もない。ピラフとかなら出来るよね。後は……」


「シロヤマさん、落ち着いて。そんなにこれでお料理が出来るの?」


「出来ます。炊いてみないと味が分からないな。最初はそのまま炊いてみて、そこから考えていけば良いか。コリンさん!!」


「な、何?」


「ありがとうございます」


「喜んでもらえておばちゃん達も嬉しいと思うわよ」


そのあと、少し落ち着いた私はその他の野菜やチーズを食料庫に仕舞っていく。今日のお夕飯は何にしよう。鳥肉もあるから煮込みも出来るけど。


チーズを貰ったからパスタかなぁ。何か他のお料理は無いかな。ラタトゥイユとかも良いなあ。


「シロヤマさん、リリアとミュゲが言ってたけど、何か作ってるんでしょ?」


「テーブルランナーを作ってます」


「あら、他には?」


「今は特に何も」


「編み物なんかはしないの?」


「編み物はしたいです。でもパッチワークもしたいんです」


「パッチワーク?何にするの?」


「ベッドカバーとかにしようかなって思ってます」


「良いわね。模様のモチーフって違いはあるの?」


「こっちのが分からないです」


「そうか、そうよね。じゃあどんなモチーフがあったの?」


「リングをいくつも繋げたのとか四角や三角を繋げて模様を作ったりとか、そんなのしか分からないです。でも1つ作りたいのがあって」


「あまり変わらないのかしら。こっちもそんな感じよ。それで作りたいのって?」


「エタニティって言うんです。リング状のモチーフを幾つも重ねて繋げた物です」


「素敵ね。それをベッドカバーに?」


「はい。今まで作る気になれなかったんですけど、作ってみたい気になりました」


「エタニティってどういう意味なの?」


「永遠のって言う意味です」


「永遠?結婚式なんかに良いわね。後は家族とか」


「家族……」


「シロヤマさん?どうしたの?元の世界の家族でも思い出した?」


違う。あんな家族は懐かしくない。嫌いにはなれないけど好きにもなれない。


「どうしたの?変なこと言っちゃった?」


黙って首を振る。


「トキワ様に会いたくなった?」


「お邪魔しちゃいけないから……」


「お邪魔じゃないわよ。会いに行ったら嬉しいと思うわよ」


「怖いんです。王宮の練兵場でちょっとあって」


「それは……そうなの。貴族の方の知り合いでも居れば良いんだけど」


4の鐘が鳴った。ナイオンが寄ってくる。


「ナイオン、大丈夫よ」


「その、ナイオン?って貴女を守ってるみたいね」


「大和さんが頼んでいたので」


「トキワ様が?ナイオンに頼んでたの?どうやって?」


「普通に話して」


「想像すると可愛いわね」


フフッと笑う。


「お夕飯の準備をしようと思うんですけど、何にしようか迷ってるんです」


「そうねぇ。私はお料理は得意じゃないのよ。だからアドバイスは出来ないわね」


「鳥肉を頂いたからトマト煮込みとか、野菜をたくさん入れてラタトゥイユ風にしようかな」


「ごめん。何を言ってるか分かんないわ」


「鳥肉と野菜のトマト煮込みって言えば良いでしょうか。野菜がたくさん摂れるから、好きなんです」


「見てて良い?」


「はい。構いません」


エプロンを着けて、食料庫から野菜と鳥肉を取り出す。野菜は少し大きめの一口大に切る。鳥肉は胸肉っぽいけど、何の肉なんだろう?


「コリンさん、この肉って何の肉なんですか?」


「鳥肉よ。正確にはダッケイの肉」


「ダッケイ?」


「大きくてね。飛べないし五月蝿いのよ。だけど肉が美味しいから飼育されてるの」


「大きいってピヨーリ位ですか?」


「そうね。その位の大きさね。ピヨーリは知ってるの?」


「騎獣屋さんで見ました。ヒナが可愛かったです」


「ヒナは可愛いわね。成獣のピヨーリはちょっと苦手なのよ」


「そうなんですか?」


話をしながら鳥肉を皮目から焼いていく。表面が焼けたら肉は取り出して、その油で野菜を炒める。炒めた野菜の上に鳥肉を戻して水を入れて少し煮込む。灰汁を取りながら野菜に火が通ったらトマトを入れて煮込んでいく。塩胡椒で味を整えて出来上がり。


コリンさんの目が怖い。


「少し味を見ます?」


「良いの?」


だってずっと食べたそうに見てたし。


「まだ味が馴染んでいませんが」


そう言ってお皿に盛ってパンを添えて出す。


「美味しいわね。このソースもパンにつけると良い感じ。トキワ様が羨ましいわ」


「それ、昨日ミュゲさんにも言われました」


「ねぇ、奉納舞の時、トキワ様が神殿の練兵場で泊まるって聞いたんだけど、貴女はどうするの?」


「どうしようか迷ってます。独りでここにいるのも心細いし」


「なら神殿に泊まりなさいよ。私たちもそうしようって言ってたのよ。神殿には以前貴女達が泊まってた様な客室もあるんだけど、職員用の宿泊室もあるの。一緒にどう?」


「もう少し考えて良いですか?」


「もちろんよ。ゆっくり考えて」


5の鐘が鳴った。同時にナイオンが玄関の方を見る。


「あら?5の鐘ね。ガイ様が来てくださったのかしら」


「お迎えですか?」


「あの方ね、身体が大きくて力も強いのに、女性に対して紳士的のよ。だから帰りもって、頼んだの」


「天使様、ガイです。コリン嬢はいらっしゃいますか?」


「ガイ様ったら、シロヤマさんの事を天使様って呼ばないようにって言われてたのに、忘れてるのかしら」


玄関のドアを開けるとガイさんとゴットハルトさんとダニエルさんが居た。少し離れてあの弓を使ってた女の人も居る。他にもあの時の人たちが全員居た。


ゴットハルトさんはガイさんに何か言ってる。


「ガイ様、お迎えありがとう。こちらの方は?」


「ゴットハルト・ヘリオドールです。こいつがダニエル・アジュール」


「天……サクラ様」


「ダニエル、家名が付いている女性には家名に『嬢』を付けるんだ」


「シロヤマ嬢……ですか?」


「あの、名前の呼び方は天使様って呼ばなければ、なんでも構いません。それより家の中へって言うのは、やっぱり駄目ですか?」


「ですからもう少し危機感を持ってください。何かあったらどうするんです」


「でも全員知っている方ですよ?」


「それでもです!!もう少し自分の容姿に自覚を持った方がいい」


「容姿に自覚?」


「ヘリオドール様?それ、難しいと思いますよ」


「貴女は?」


「神殿衣装部のコリンです。1度お会いしてますよね」


「難しいとは?」


そこに声が響いた。


「そこまで。一旦中に入れ」


「大和さん、おかえりなさい」


「ただいま、咲楽ちゃん。ガイはコリン嬢の迎えか?」


「あぁ。そうだ」


「とにかく入ってくれ。玄関先で騒ぐな。お前らも入ってこい」


「良いんでしょうか?自分達みたいなのが入って……」


「入らないと咲楽ちゃんが気にする。ガイも入ってくれ」


「私達はお暇するわ。シロヤマさん、今日はありがとう」


「こちらこそありがとうございました」


コリンさんとガイさんは帰っていった。ゴットハルトさんとダニエルさん、あのときの人達が家に入った。


ソファーに座りきらないのでダイニングの椅子を持ってくる。ナイオンはリビングの隅で寝そべった。


「で?今日はどうしたんだ?謝罪なら受け取ったぞ」


「それはそうなんだが、コイツらが直接言いたいと」


「もういいんだが……」


困ったように大和さんが言う。私も困ってしまう。


「あのな、お前らのリーダーは誰だ?」


「ダニーの兄貴です」


「お前、ダニーって名乗ったのか?」


「ゴットハルト、ちょっと黙っていようか」


あ、笑顔の大和さん。怖い……のかなぁ。でもゴットハルトさんが黙っちゃった。


「ダニー、な。こいつからの謝罪は一昨日受け取ったんだ。リーダーって言うのはメンバー全ての責任を負う者だ。そのリーダーが謝った。その時点で謝罪は済んでる。それにみんなあの時に咲楽ちゃんに謝ってただろ?咲楽ちゃんはその時に許してたはずだ」


「はい」


「勘違いするなよ。謝りたいと言う気持ちは間違っていない。間違ったことをしたからその人に謝りたい。その気持ちは大切だ。謝らない人間って言うのはどこにでも居る。謝ることの出来る人間は成長することが出来るんだ。お前らは成長できる人間って事だ。良いな」


「はい!!」


みんなが笑顔になった。


「そろそろしゃべっていいか?」


「ゴットハルト、どうした?」


「トキワ殿が黙ってろって言った……いや、何でもない。それよりだ。シロヤマ嬢は自分の容姿に自覚を持った方が良い」


「容姿に自覚って、え?普通ですよね?」


はぁぁ、と言うため息が聞こえた。


「咲楽ちゃん、紅茶、淹れてくれる?」


「はい。皆さんもいかがですか?」


「淹れてやって」


「お手伝いします」


弓を使ってた女の人が立ってきてくれた。


手を洗ってもらって聞いてみる。


「お名前を伺っても良いですか?」


「ブランです」


「ブランさん?よろしくお願いしますね」


お湯を沸かす。茶葉は9人分?2回に分けよう。このポット5人用だよね。


「天使様はなんとお呼びすれば?」


「サクラ・シロヤマです。どちらでもお好きな方で呼んでください」


「家名がついてる。やっぱりお貴族様?」


「いいえ。私は貴族じゃありませんよ。大和さんも貴族じゃないです」


「サクラ様って呼んで良いですか?」


「様って付けなくても良いんですけど」


「いいえ。サクラ様でお願いします」


サクラ様って呼ばれることになっちゃった。


「咲楽ちゃん」


大和さんが来たら固まるブランさん。


「ブランさん、この紅茶、持っていってもらって良いですか?」


ブランさんに1回目の紅茶を出してもらう。


「手伝うよ」


「ありがとうございます」


2回目の紅茶をサーブして気になってたことを聞く。


「ゴットハルトさん、自分の容姿に自覚をって何か私は変なんでしょうか?」


ゴットハルトさんが紅茶を一口飲んで慌てて言った。


「変ではありません。私から言うのもなんですが、貴女は大変お可愛らしい。知り合いだからって、いつ血迷った奴が出てくるか分からないんです。ですから危機感を持ってください、と言ったんです」


「可愛いってそんなことないです」


「咲楽ちゃんはこういう子なんだ。ゆっくり教えていくよ」


大和さんに頭をポンポンされる。


「それより」


大和さんがニヤッと笑う。


「お前ら、俺が怖いだろう?」


「はい、あ、いえ、あの……」


「怖がらせた自覚はある。あの時は怒りを隠さなかったしな。でもな、必要以上に怖がらなくて良いぞ。俺だって普通の人間だ」


「普通の人間?」


「そう。普通の人間。2つ名が付いていようと、怒りもすれば笑いもする普通の人間だよ。2つ名ってものはダニエルの事を兄貴って呼ぶようなもんだ。敵意を向けられなければ必要以上に怒ることはない」


「トキワ殿、それは無理だ。トキワ殿を普通の人間と思えってのは、その虎を(クルーラパン)と思えって言うのと同じだ」


「ナイオンと俺が一緒ねぇ……」


大和さんが憮然とした顔をする。


「大和さんは優しくて格好よくて綺麗なんです」


「咲楽ちゃん、それはフォローになってないよ」


「え?だって優しくて格好良いのは見てわかりますよね」


「照れ臭いフォローをありがとう」


「本当の事です」


「はいはい、もう良いから」


「マジで天使様ですね」


「あんな純粋な気持ち、良いなぁ」


「シロヤマ嬢、惚気にしか聞こえませんよ」


「何か間違ったことを言っちゃったでしょうか……」


「間違ってはないですよ。シロヤマ嬢にトキワ殿はそう見えているって事なんでしょう。ただね、世俗にまみれた我々からしたら純粋すぎて眩しいだけです」


ゴットハルトさんが一生懸命言ってくれている。


「ゴットハルト、悪いな」


「こういうところも『天使様』と呼ばれる由縁なんでしょうけどね」


「ちょっと違うな。咲楽ちゃん、言って良い?最初に呼ばれ出した訳」


「ブランさん達は見てます」


「そうだったね。咲楽ちゃんが大きな怪我を治療すると、何故か全身が光るんだ。神殿での練習中に怪我人の治療でそうなって、神殿騎士団の連中が言い出したのを吟遊詩人が広めた、と聞いた」


「見てみたいけどそんな事態は起こらない方が良いな」


ダニエルさんがショックを受けた顔をしている。


「僕だけ見てない?」


「ダニエルはその時、寝てしまってたんだろ?」


「はい。全身暖かくて、幸せでした。今まであった痛みも全く無くて、優しい何かに包まれているような感じで」


「へぇ、そんな感じになるのか」


「トキワ殿も怪我を治して貰ったんじゃないのか?」


「任務中だったから眠気には抵抗した」


「そ、そうか。そろそろお暇しよう。みんなも気が済んだだろう。トキワ殿、また来ても良いだろうか」


「あぁ、歓迎する。ゴットハルトはその前に咲楽ちゃんの壁を乗り越えなきゃだけどな」


笑いを含ませて大和さんが言う。


「私の壁?」


みんなを見送りながら大和さんに聞くと私の肩を抱きながら答えてくれた。


「ゴットハルトは女性を大切にするタイプの様だから、咲楽ちゃんが危なっかしく見えるんだと思うよ。だから必要以上に『警戒をしろ』って言ってるんだと思う。独りで来て、咲楽ちゃんと2人きりになったら理性を総動員すると思うよ。そんなゴットハルトも見てみたいけどね」


「大和さん、楽しそうですね」


「そうかな?今日の夕食は何?」


「ラタトゥイユ風鳥肉の煮込みです」


答えながら家に入る。


キッチンで鳥肉の煮込みを温め直す。パンは何にしよう。フィセルみたいなこのパンで良いかな。パンも少し温めて一緒に出す。


「旨いね。買い物に行ったの?」


「神殿の食堂のおばちゃん達からまたたくさん頂きました」


「そうか。またお礼に行かなきゃね。でもしばらく咲楽ちゃんと休みが合う日が無いんだよな」


シフトを見ながら言う大和さん。


「そうなんですか?私一人で行っても良いですけど」


「そうだね。俺が付いて行きたいだけなんだけどね」


「えっと、明日行ってきます。ナイオンも連れて」


「そう?ナイオンが一緒なら良いかな。夕方ナイオンを連れて騎獣屋に行こうか。帰すにしても、様子を見ないとね」


ナイオンは騎獣屋に帰る話になると元気がなくなって、リビングの隅に行って横になった。


「言い聞かせるしかないな」


大和さんがため息を吐きながら言う。


夕食の後片付けをして、ソファーに座る。


「咲楽ちゃん、明日と明後日は市場(バザール)の巡回だから、お弁当は良いからね。そうそう卵焼きって言うかオムレツを挟んであったサンド、旨かった。タマゴサンドってああいうのもあるんだね」


「以前知って、茹で卵より簡単に出来るから時々作ってたんです。あれはオムレツでしたけど、厚焼き玉子を挟むところもあるって書いてありました。それでですね、今日頂いた野菜の中に良い物があったんです。取ってきますね」


キッチンに行ってライの実を持ってくる。芯を取ったのと取ってないの2個。


「これです」


「なんだこれ?」


「ライの実っていうらしいんです。ここの芯を取ると中にこんなのが入ってるんです」


大和さんの手に少しお米を出す。


「米?ジャポニカ米みたいだけど馴染みの米とは少し違うな」


「やっぱり違いますか?」


「日本の米と同じようにはいかないだろうね。でも米があったのか」


「嬉しくないですか?」


「嬉しいよ。しかし何だってこんな形状なんだ?」


「日本食は無理ですけど、お米があったらパエリヤとか作れます」


「やっぱり日本食は無理?」


「調味料がないですもん。お醤油とか味醂とか」


「そういえばそうか」


「大和さん……」


「料理しない人間に思い付かないって。咲楽ちゃんも時々意地悪だよね」


そう言って大和さんは笑うけど、意地悪?


「そんな膨れっ面をしても可愛いだけだよ」


ほっぺをツンツンされました。


「ナイオン、明日の夕方には騎獣屋に行くぞ。様子は見てこないといけないし、お前だけを残して家を空けるのも心配だ」


ナイオンはやっぱり元気がない。


「俺は毎朝行くから。その後付いてきても良い。ただ、以前のように舞が終わったら帰れよ」


そう大和さんが言うと、やっとナイオンが少し元気になった。


「ナイオンが納得したところで風呂に行ってくるね」


大和さんがそう言って立っていく。


「ナイオン、明日は神殿に付き合ってね」


尻尾を揺らして返事をしてくれるナイオン。


「ねぇ、ナイオン。私って変かな?」


ナイオンは答えてくれない。


「ゴットハルトさんも用心しろって何度も言ってくるし、そんなにおかしいかな。最近は外も寒くなってきてるし、入って待っていて欲しいって言うのが変なのかな」


ナイオンは答えてくれないけど、こっちに来て体を擦り付けてきた。


「慰めてくれてるの?ありがとう」


ナイオンをもふもふしてたら大和さんがリビングに来た。


「ナイオンを慰めてるの?ナイオンに慰められてるの?どっち?」


「どっちもです」


「どっちもか」


「大和さんも混ざります?」


「混ざります?って咲楽ちゃん、先にお風呂ね」


「えぇぇ?!」


「えぇ?!じゃなくて。行ってらっしゃい」


「はい」


「あ、髪の毛、乾かさせてね」


「え?」


「行ってらっしゃい」


髪の毛を乾かさせてって……大和さんにやってもらうのは気持ちいい。温かくて、ずっと触っていて欲しいと思う。でも、急に?


あ、でも以前に『時々させてね』って言われたような気がする。でも私も最近、大和さんのを乾かしてないよね。考えながら、髪の毛を軽く乾かして寝室に行く。


「大和さん、上がりました」


「じゃあ、ここに座って」


示されたのはベッドの上の大和さんの足の間。


「そこですか?」


「乾かしやすいからね」


そうかもしれないけど。考えていてもなにも言えなくて、結局大和さんの足の間に座る。


大和さんの手が、私の頭に触れて、髪の毛を乾かし始めた。


「大和さん」


「ん?」


「大和さんもそういうこと、したいですか?」


「えっと、ちょっと待ってくれるかな。そういうことって何の事?いきなり何を言い出すの?」


「今日、コリンさんと話してて、その、新婚生活みたい、って言われて。大和さんもそういうことしたいのかな?って言ったら『私が自然に委ねられるまで待ってくれてる』って言われて。大和さんもそういうことしたいのかな?って思ったんです」


「そういうことってそういう……それはコリン嬢が正解。咲楽ちゃんが自然にそう思うまで待つよ」


「でも、私も一応勉強したから。男の人ってそういう欲求ってあるんじゃないですか?我慢してるとか」


「そういうことは気にしなくて良い。気持ちの伴わない行為は虚しいだけだから」


「でも……」


「全く、この()は何を気にしだしたのかと思ったら。はい、出来上がり。咲楽ちゃんの髪の毛はさらさらだね。触ってて気持ち良い」


大和さんはそう言うと、私を自分の方に向かせた。


「あのね、確かに好きだからそういうことをしたいって思う男性は多い、というかほとんどかな。中には好きって思わなくても自分の欲求に正直に行動する男性もいる。咲楽ちゃんも知ってるでしょ?ソイツ等に怖い思いをさせられたんでしょ?」


「はい」


「俺は咲楽ちゃんに2度とそういう思いをして欲しくない」


「大和さん」


「この話は終わり。それで良いね?」


「は……い……」


「まだ気にしてるのかな?この()は?」


そう言って頭を撫でられる。


「大和さんに頭を撫でられると気持ち良いです」


「そう?」


頭を撫でられてると眠くなってきた。


「咲楽ちゃん、眠いの?寝て良いよ」


大和さんの優しい声を聞いていたらそのまま寝てしまった。



ーーー異世界転移27日目終了ーーー

ダッケイのイメージは大きな鶏です。ダチョウ位の大きさの。

コカトリスではありません。

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