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夢、淡雪の如く


「やれやれ、さて、どうやら時間のようだな」

「逝くのか」

「ああ」  


 まるでそれが当たり前のように、バスの定刻になったように、エドウインさんと桂ちゃんは拳同士をぶつける。

 そこには一切の動揺とか未練の表情はなかった。


「結局、全て貴女の計画通りに事が運んだね?」

「ふふ、さてね」


 イタズラっぽく頬笑む姿は可愛かった。


「それより勇者王様よ、さっき一条を俺と引き合わしたのを後悔しているって言ってたけど、それは本心か?」

「そうだな。未来を次に託すために私は魔王の片腕として一条君が必要だった。だが心の何処かにガンナム・レイドラームを独占したい気持ちがあったかもしれない」


 そこ間にもエドウインさんの体が無情にも粒子へ還元されて行く。

 

「一条君、君が書いている『ぐりもわーる』なるノートに魔法を施した。今後、自動更新される書かれた予言が、そのまま現実となる。それを阻止して欲しい」

「僕はもう桂ちゃんと対峙する未来はやってこないのかな?」

「テセウスの船のお話はご存じかな? 朽ちた船を保存する為に新たな木材で徐々に置き換えていった。だが、それは同じものと言えるのか? 長い間物議を投げ掛けた疑問だよ」


 百年物秘伝のウナギのタレも毎日足しているからありがたみが無いみたいな事か。


「それがどうかしたのか?」

「一条君にも言える事だ。魔王のパートナーに相応しくなるよう、馴染ませる為に組み替えていった。だから、もう君は君であって君じゃないとも言える。だがら心配ない。魔王と深く関わったお陰で君の運命は変動した」

「そうか、よかった」


 胸を撫で下ろすも、伝説の英雄になるチャンスを逃し意気消沈する自分もいた。


 エドウインさんは僕に手招きする。

 近寄ると、エドウインさんの瞳に僕が映し出されていた。


「まだ、何か訊きたそうだね?」

「エドウインさん、結局何のために光を消していたのだ? 僕の成長と勇者王誕生を阻止する為だったのは理解している。でも、あんなイタズラしなくても光を消す方法があるのでは?」

「強くなっている光を消さなければユニークスキルの消失が早まって魔王が危なかった。それと魔王への嫌がらせも兼ねていたんだよ」

「魔王の事が大好きなのだな」

「ああ、世界で一番大好きだよ」


 僕と彼女とは思い続けている次元が違うんだ。

 だから嫉妬はしなかった。


「ああそうそう、私も向こうに転生しているから出会った時は仲良くしてほしい」

「名前は?」 

「それは……ル……………ラ………」


 全て聞き取る前に勇者王エドウインは淡雪になって消えていった。



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