和解
「分かったよ。まだ、どうすればいいのか皆目検討もつかないけど、僕に出来る事を全力でやるよ」
「それで構わない。ありがとう」
「お礼はまだ早いよ」
本来、一般人の僕には何の関係もない事なのだが、命を削ってここまでしたのに断る事なんてシナリオ的にアウトだろう。
破綻したストーリーは速攻ワゴンセール行きは目に見えているので、ここは大人しく場の空気を読んだ。
――というのは建前で、エドウインさんの気持ちを踏み躙る事なんで僕には無理だ。
「これから少しずつリアルがファンタジーに侵食されて行く。完全にファンタジーへ移行する前に次世代勇者王の誕生を止めてくれ」
エドウインさんが差し出した手を握り、「ファンタジー好きの僕としては願ってもいないことなんだけど、世界が消滅はいただけないよね」緊張がほぐれお互い笑顔が溢れた。
だが、空気の読めないのが一人というか魔王が……、
「冗談じゃない。折角平凡な陰キャラスローライフを満喫していたのに、また勇者のせいで台無しにされたくはないぞ」
などと悪態をつく。
「桂ちゃん台無し」
「知らぬ存ぜぬカトリーヌ………………それはそれとして勇者王さん、何ゆえ俺には頼まないんだ? 当事者でも選ぶ権利はあるんだぞ」
カトリーヌって、ギャグがおっさん化しているよ……。
「君のひねくれた性格を腐るほど思い知っているからさ。いちいち問答やっていては私の寿命が持たないよ。毎回毎回ラスボスとして対峙する度に対決前の君の長口上が懐かしい。余程寂しかっ――」
「あーあー! 余計なこと言うな!」
エドウインさんのか細い声を、桂ちゃんの余りある声量で掻き消した。
「向こうが一枚上手だね。折れたら?」
「ふん、勝手にやれば良い」
そう言うと興味を失せたのか、そっぽを向けて瓦礫の小石を蹴る。
ああ、成る程成る程。
ボッチは好きだか、ずっとは寂しいという友達いない人特有のジレンマというかアンチテーゼだねぇ。
暴力こそ正義とか、絶対の支配者は必要だとか、この世界は汚れているとか、世界の半分をやろうとか、大層なごたく並べて時間を引き伸ばしていたのが真相か。
確かに呉の陸抗と晋の羊祜みたいに戦争中に酒を酌み交わすとまではいかなくても、戦いの前にコーヒーでもどう? とかはシャープなジェントルマンとは程遠い無骨な魔王的に言えないか。
「ふふふっ、これで後顧の憂いは無くなった――くっ……」
エドウインさんの様子がおかしい、「あ!?」体が透けている……。




