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罠に嵌められた子鹿


「何が言いたい?」 

「君が歩んできた事も結局遊戯だったと言うことだ」

「それはお前の指示だろ?」

「すまんすまん、そうではない。私が言っているのは勘太郎としての十六年の無駄な人生だ」

「何処がだ?」


 俺は相手にするつもりはなかった。

 だが、その幼稚な挑発に何故かむかっ腹がたった。


「何の為に生きているんだ。君の人生の歩み方は、ただ、時間を無駄に使い捨てカイロの如く消費しているに過ぎない。もっとエネルギッシュに謳歌してもバチは当たらないと思うが」

「俺の生き方は俺が決める。例えば神だろうと親だろうと何人たりとも否定する権利はねぇ!」


 俺は言い放つ。

 今までの繋がりを上から目線で全否定されれば、陰キャラな俺でも声を荒らげる。

 だが、当然であろう。

 馬鹿な俺なりに手探りで刻んできた貴重な一分一分だから。


「そんなことより予言者、さっきから何をやっているんだ?」

「何とは?」

「その移動、五芒星だろ?」

「よく気づいたな。私の条件は整った」


 予言者の動きが気になっていた。

 気付かない程度に移動してはいるがおよそ俺の周りを回り続けている。

 そして、ある答えに行き着いた。


「お前まさか? このふざけた座興は!?」

「ふふふっ、お察しの通り言霊を流用したお遊びさ。今までのはトークに疑問を持たなかったのか? さて、条件は揃ったこれで終わりにしよう」


 予言者はワルツを踊る様にユラユラと後退していった。

 ロマンチックな二人だけの舞踏会。

 これが想い人とならどれだけ気持ちが高揚する事か。

 だが、少女漫画見たいに夢見ても、この展開では行き着くところは拳と拳の武道会。

 ならば正義のヒロイン目指して魔法少女を目指すのも一興だ。


「今宵の月は綺麗だ。床に映る様は美術と表現しても良い」

「やめろ!」


 俺の鼓動はウサギみたいに跳ね上がる。

 

「時を支配する神クロノス、彼の者の時を止めよ。願わくは悠久の眠りを与えん事を」

「か、体が動かない」


 まるで金縛りにかかった様に体が言うことを効かない。

 辛うじて発する事が可能な声を絞りこの状況を打破する方法を模索する。


 もしかして、今までの全てこの為の演技だったのか?

 自身の失態に、崖へと追い込まれた子鹿の気持ちを追体験している心持ちになった。

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