駆け引き
予言者は月明かりの下、数歩ゆっくりと足を進める。
それに対して無意識に警戒、後ろへ下がった。
後ろめたい人生は送ってないつもりだがムーンウォークはお手のもの。
「では1回目、私は魔法を使える」
これはローグエンドバーグ側の奴って事だ。
いや、でも、いきなりこれはフェイクで実は現実世界の人物という線もある。
いやいや、予言者は過去の存在だ。
ならばこちらにいる事が意味不明だ。
しかし、それ自体が嘘なのかもしれない……。
まだはっきり言って皆無だ。
しかし、たったの20回だが、神経衰弱の様な当てずっぽうでも当たる可能性は十分にある。
ならば答えは言った方がいいだろう。
「ローグエンドバーグ魔導協会」
特定の人物または組織が駄目だとはいってない。
これなら一気に範囲を縮める事が可能だ。
「ははははっ、開口一番でグレーゾーンを攻めてくるとは魔王の名は伊達じゃないということか。実に良い突き方だ。だが、残念ながら違う」
「ジャブだジャブ。まだ実力の10%だ。俺の本気はこんなもんじゃない」
野郎にクリンチばっかりやってると、あっちの気があるのかと疑われてしまうから要注意。
「二回目だ。言語はローグエンドバーグ語」
「そうだったな。俺と話しているのは魔法の効果だったっけ」
「ああ、この言葉は世界共通で、人間、亜人、魔族みな使える」
異世界小説共通の御都合設定がこんな処まで浸透しているとは……。
然らば是非ともやり直しスキルの取得とステータスマックスにして欲しい。
しかし残念ながら起きた超常現象が女神様ではなくて、如何にも見窄らしいミスタークエスチョンでは、トラックでひかれても後悔が残るだろう。
「邪神教会はどうだ?」
我が魔王国の国教である邪神教。
邪悪の権化『大邪神パルーム』を崇めている。
別名権化様と呼び恐れ敬っていた。
大邪堂本殿には当時の権力者を一網打尽にするために、釣り天井を秘密裏に製作されたとかされてないとか。
見イエティー、言わハヌマーン、聞かグシオンの像が有名だとか。
ちなみにこれらはどうでもいい情報なので聞き流してくれ。
「これも良い上手い。だがこれも外れだ。残念ながら邪神は嫌いなのだよ。光の神を信仰したい程さ」
「そうかよ。神に憧れるなんてお前はサタンの逆パターンか?」
「いや、私的にはグシオンかベリアルがお似合いだと思うが……」
「全てを知る者と詐欺師か。怖いぐらいに言い得て妙だ」
こいつの底が見えない。
フードの中身が無と錯覚する程、何をやっても無駄の様な気がした。
まだ、二回目なのにどうしたというんだ、この全身を這う凍りつく寒気は……。




